気分(感情)の異常が一定期間持続し、生活機能が損なわれる疾患群。うつ病(単極性)と双極性障害に大別される。両者を分けるのはうつ病相の有無ではなく、躁・軽躁病相の既往があるかである。
| 病型 | 病相の構成 |
|---|---|
| うつ病(大うつ病性障害) | うつ病相のみ。躁・軽躁の既往がない |
| 双極Ⅰ型 | 重度の躁病相(社会生活が破綻し入院を要する水準)+うつ病相 |
| 双極Ⅱ型 | 軽躁+うつ病相。重度の躁は起こらない |
| 気分循環症 | 軽躁とごく軽度の抑うつを2年以上反復 |
| 持続性抑うつ障害(気分変調症) | 軽度の抑うつが2年以上慢性に続く |
「Ⅱ型では重度の躁状態がみられる」は誤り → 正しくはⅡ型=軽躁+うつ病相。重度の躁がみられるのはⅠ型。
うつの妄想は微小(マイナス方向)、躁の妄想は誇大(プラス方向)。この対比だけで妄想の帰属問題はほぼ解ける。「自分は死んでいる」「内臓が腐っている」といった虚無妄想(Cotard症候群)も重症うつ病でみられる。
体温の日内リズム(生理学の基礎):調節中枢は視床下部であり小脳ではない。体温は早朝に最低、午後から夕方に最高となる。測定部位は直腸温>口腔温>腋窩温の順に高く、直腸温がもっとも核心温を反映する。基礎体温=早朝覚醒直後の安静時体温で、排卵後はプロゲステロンの作用で高温相となる。体温は高齢者のほうが小児より低い。
| 症状 | 帰属 | 内容 |
|---|---|---|
| 無価値感・自責感 | うつ病 | 自己の価値を否定する。自殺念慮の温床 |
| 微小妄想(貧困・罪業・心気) | うつ病 | マイナス方向の妄想 |
| 制止(思考制止・行動抑制) | うつ病 | 思考も行動も遅くなる |
| 観念奔逸 | 躁状態 | 考えが次々わき、話題が飛躍する |
| 誇大妄想 | 躁状態 | 自分を過大評価する妄想 |
| 気分高揚・多弁・行為心迫 | 躁状態 | 活動性亢進。易怒的にもなる |
| 思考奪取 | 統合失調症 | 考えを抜き取られる=自我障害(させられ体験) |
| 思考途絶 | 統合失調症 | 思考が突然中断する |
| 連合弛緩・幻聴 | 統合失調症 | 話のまとまりを欠く、対話性・命令性の幻聴 |
「うつ病の症状はどれか」で観念奔逸・誇大妄想を選ぶと躁状態、思考奪取・思考途絶を選ぶと統合失調症の症状になる。うつ病側の答えは無価値感。
| 躁病相(Ⅰ型) | 軽躁病相(Ⅱ型) | |
|---|---|---|
| 社会機能 | 著明に障害される | 障害は軽度。仕事はむしろはかどることもある |
| 入院 | 必要になることが多い | 通常は不要 |
| 精神病症状 | 妄想・幻覚を伴いうる | 伴わない |
| 本人の自覚 | 病識なし | 「調子がよい」と感じ受診が遅れる |
躁状態への関わりは刺激を減らし、議論・直面化を避ける。制止や説得は易怒性を高める。消耗・脱水・外傷、金銭や対人トラブルの予防が優先で、活動を促す訓練は行わない。
| 項目 | うつ病(単極性) | 双極性障害 |
|---|---|---|
| 生涯有病率 | 高い(5〜10%) | 低い(1〜2%) |
| 男女比 | 女性が約2倍=男女差が大きい | ほぼ1:1=男女差が小さい |
| 平均発症年齢 | 中高年に多い(40歳前後) | 若年(15〜25歳)=低い |
| 遺伝的素因 | 相対的に小さい。一卵性双生児の罹患一致率は低い | 強い。一卵性双生児一致率60〜80% |
| 自殺リスク | 高い | さらに高い(10〜20%) |
| 誘因 | 状況要因(ライフイベント・心理社会的ストレス)が誘因になりやすい | 内因性の色彩が強い |
| 病相の回数 | うつ病相のみ | うつ病相のほうが頻度・期間とも長いことが多い |
比較問題の定番の誤り。
設問の主語がどちら向きかを最初に確認する。「うつ病と比較した双極性障害の特徴」なら発症年齢が低い・遺伝素因が強い・自殺率が高い。「双極性障害と比較したうつ病の特徴」なら一卵性双生児の一致率が低い・有病率が高い・女性に多い・状況要因が誘因。
「双極性障害について正しいのはどれか」で最後まで残る正解は気分安定薬が用いられる。
抗うつ薬の副作用は患者に説明するのが正しい対応。伏せて服薬させない。
| 場面 | 適切な対応 |
|---|---|
| 急性期 | 休息・休養を保証する。刺激を減らし、義務や役割をいったん免除する |
| 励まし | 「頑張れ」と励まさない。叱咤・激励は自責感を強める |
| 重要な決断 | 退職・離婚・財産処分などは回復まで先延ばしさせる。病的に判断力が落ちているため |
| 自殺予防 | 希死念慮は率直に尋ねてよい。「自殺しない」と約束を取り付けるのは標準的な対応 |
| 服薬 | 効果が出るまでの期間と副作用を説明し、自己中断を防ぐ |
| 病名 | うつ病であることを伏せずに説明する。治る病気であること・休養が治療であることを伝える |
| 病態 | 要点 |
|---|---|
| 仮性認知症 | 高齢者のうつ病が認知症様にみえる。発症は比較的急、「わからない」と答え、本人の苦悩の訴えが強い。認知症は緩徐発症で取り繕いが多い |
| 産後うつ病 | 出産後数週〜数か月で発症。産後数日で軽快する一過性のマタニティブルーズと区別する |
| 季節性感情障害 | 秋冬に抑うつ・過眠・過食。高照度光療法が有効 |
| 混合状態 | 躁とうつの症状が同時に存在する。自殺リスクがとくに高い |
| 症状性・器質性の抑うつ | 甲状腺機能低下症、脳卒中後うつ病、Parkinson病、ステロイドやインターフェロンによる薬剤性。身体疾患の除外が先 |
理学療法の場面では、意欲低下を「怠け」「非協力」と評価しない。訓練拒否・易疲労・朝の不調はうつ病の症状そのものであり、負荷設定と実施時間帯(午後のほうが動ける)を調整する根拠になる。