| 大分類 | 病型 | 機序・特徴 |
|---|---|---|
| 脳梗塞(虚血) | アテローム血栓性 | 頸部・頭蓋内主幹動脈の動脈硬化(プラーク) |
| 脳梗塞 | 心原性脳塞栓症 | 心房細動→左房内血栓が飛ぶ。突然発症・大梗塞 |
| 脳梗塞 | ラクナ梗塞 | 穿通枝(細小血管)の小梗塞。高血圧が背景 |
| 脳出血 | 高血圧性脳出血 | 活動中・入浴中の突然発症。被殻が最多 |
| くも膜下出血 | 脳動脈瘤破裂 | 突然の激しい頭痛+項部硬直(髄膜刺激徴候) |
| 危険因子 | 主に起こす病態 |
|---|---|
| 高血圧 | 脳出血の最大の危険因子。ラクナ梗塞の背景でもある |
| 心房細動(発作性を含む) | 心内血栓→心原性脳塞栓症 |
| 癌に伴う凝固異常 | Trousseau症候群として脳塞栓を起こす |
| 慢性腎臓病〈CKD〉 | 脳卒中・心血管疾患の独立した危険因子 |
| 糖尿病・脂質異常症・喫煙 | 動脈硬化を介して全病型に共通 |
「くも膜下出血は女性より男性に多い」は誤り → くも膜下出血は女性にやや多い。
関連の周辺知識
脳循環は 前方循環=内頸動脈系 と 後方循環=椎骨脳底動脈系 の2系統。どちらの系統かを決めてから症候を考えるのが定石。
| 血管 | 枝 |
|---|---|
| 内頸動脈(直接分枝) | 眼動脈(頭蓋内で最初に出す枝)・後交通動脈・前脈絡叢動脈、終枝として前大脳動脈・中大脳動脈 |
| 外頸動脈 | 上甲状腺動脈・舌動脈・顔面動脈・後頭動脈・顎動脈(顔面・頭皮など浅部へ) |
| 脳底動脈(直接分枝) | 上小脳動脈・前下小脳動脈〈AICA〉・橋枝・内耳動脈。上端で後大脳動脈へ移行 |
| 椎骨動脈 | 後下小脳動脈〈PICA〉・前脊髄動脈(延髄・小脳下部を灌流) |
「前交通動脈は内頸動脈から分岐する」は誤り → 前交通動脈は左右の前大脳動脈どうしを連絡する枝で、内頸動脈から直接は出ない。前大脳・中大脳・後交通動脈は内頸動脈から直接出る。
「AICAは椎骨動脈の枝」は誤り → AICAと上小脳動脈は脳底動脈から、PICAは椎骨動脈から出る。
| 左右一対 | 単一(正中に1本) | 片側のみ |
|---|---|---|
| 総頸動脈・内頸動脈・椎骨動脈・前大脳動脈・中大脳動脈・後大脳動脈・後交通動脈 | 脳底動脈(左右椎骨動脈の合流)・前交通動脈 | 腕頭動脈(右のみ) |
| 動脈 | 皮質・主な灌流域 | 穿通枝が養う深部 |
|---|---|---|
| 前大脳動脈〈ACA〉 | 前頭葉内側面・中心傍小葉(下肢の運動感覚野) | 尾状核頭など |
| 中大脳動脈〈MCA〉 | 大脳半球外側面(中心前回外側・Broca野・Wernicke野・頭頂葉外側) | レンズ核線条体動脈→被殻・淡蒼球・内包・尾状核 |
| 後大脳動脈〈PCA〉 | 後頭葉(視覚野)・側頭葉内側(海馬)・中脳(黒質) | 視床穿通動脈・視床膝状体動脈→視床 |
| 脳底動脈 | 橋・小脳 | 橋枝 |
| 椎骨動脈 | 延髄・小脳下部 | — |
「被殻・淡蒼球・尾状核は後大脳動脈が養う」は誤り → 大脳基底核は中大脳動脈系。後大脳動脈の代表的支配域は視床。
「Broca野は脳底動脈、中心前回は椎骨動脈」は誤り → どちらも中大脳動脈支配。「海馬は中大脳動脈」も誤りで、海馬は後大脳動脈。
| 閉塞血管 | 特徴的症候 |
|---|---|
| 前大脳動脈 | 対側の下肢優位の片麻痺・感覚障害、強制把握現象(本能性把握反応)、尿失禁、意欲低下・無動無言 |
| 中大脳動脈 | 対側の上肢・顔面優位の片麻痺・感覚障害、優位半球で失語・観念運動失行、劣位半球で半側空間無視・着衣失行 |
| 後大脳動脈 | 対側同名半盲、物体失認などの視覚失認、地誌的失見当、視床症状(感覚障害・視床痛) |
| 内頸動脈本幹 | 前・中大脳動脈領域にまたがる広範な梗塞。分枝の眼動脈領域の虚血で一過性黒内障(一過性の片眼視力障害) |
| 椎骨脳底動脈 | 複視・回転性めまい・構音障害・嚥下障害・運動失調・同名半盲・交代性片麻痺 |
「Broca失語・半側空間無視・一過性黒内障は椎骨脳底動脈系でみられやすい」は誤り → いずれも内頸動脈系の症候。後方循環で出やすいのは複視と運動失調。
画像から閉塞血管を決める手順
責任血管は後下小脳動脈〈PICA〉または椎骨動脈。四肢の運動麻痺は生じないのが特徴。
| 側 | 症状 |
|---|---|
| 病側 | 顔面の温痛覚障害、Horner症候群、小脳失調、側方突進(lateropulsion)、嚥下障害・嗄声(疑核) |
| 対側 | 体幹・四肢の温痛覚障害(=解離性感覚障害) |
| 病態 | 治療 |
|---|---|
| アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞・一過性脳虚血発作〈TIA〉 | 抗血小板薬(内服による再発予防が中心) |
| 心原性脳塞栓症(心房細動) | 抗凝固薬(ワルファリン・DOAC) |
| 頸動脈狭窄 | 頸動脈血栓内膜剥離術〈CEA〉・頸動脈ステント留置術〈CAS〉 |
| 脳動脈瘤(くも膜下出血) | クリッピング手術・コイル塞栓術 |
| 心房細動そのもの | アブレーション手術(不整脈治療) |
| 超急性期の脳梗塞 | t-PA静注療法(発症4.5時間以内)・血栓回収療法 |
「ラクナ梗塞-頸動脈内膜剥離術」「心原性脳塞栓症-頸動脈ステント」「TIA-コイル塞栓術」「アテローム血栓性-アブレーション」はすべて誤りの組合せ。治療は"病変のある場所"に対応させる(細い穿通枝には手術しない、心臓の血栓には抗凝固)。
「脳梗塞は原因に関わらず抗血小板薬」は誤り → 心原性は抗凝固薬。「脳梗塞は脳動脈瘤の合併が多い」も誤りで、動脈瘤はくも膜下出血の原因。
| 部位(頻度) | 症候 | CT上の位置 |
|---|---|---|
| 被殻(約40%・最多) | 対側の片麻痺・感覚障害、病巣側への共同偏視 | レンズ核=基底核レベルの外側(外包の内側) |
| 視床(約15%) | 感覚障害が運動障害より目立つ、内下方への共同偏視(鼻先を見る眼位)、脳室穿破しやすい | 第三脳室の側方、脳深部の正中寄り |
| 皮質下 | 部位に応じた巣症状(対側感覚障害・失語など) | 脳表近くの皮質直下 |
| 小脳(約10%) | 運動麻痺なし・体幹失調・起立歩行不能・嘔吐・後頭部痛・回転性めまい | 後頭蓋窩(画像下方の正中後方) |
| 橋(約10%) | 意識障害・四肢麻痺・縮瞳・除脳硬直 | 脳幹レベルの断面 |
「高血圧性脳出血で最も多いのは小脳・視床」は誤り → 被殻が最多、次いで視床。
| 病態 | CT像の形 | 成因・経過 |
|---|---|---|
| 硬膜外血腫 | 凸レンズ型(両凸)・頭蓋骨内板に密着・縫合線を越えない | 中硬膜動脈損傷。受傷後に意識清明期がある |
| 急性硬膜下血腫 | 三日月型(凹レンズ)・高吸収 | 架橋静脈損傷 |
| 慢性硬膜下血腫 | 三日月型・低〜等吸収 | 高齢者の軽微な頭部外傷後、数週間以上かけて緩徐に進行 |
| くも膜下出血 | 脳溝・脳槽に沿って線状・ヒトデ状 | 脳動脈瘤破裂 |
| 皮質下出血 | 脳実質内の塊状 | 脳表近くの出血。骨には接しない |
| 脳動静脈奇形〈AVM〉 | 異常血管塊として描出 | 均一な血腫像にはならない |
| 高吸収域(白) | 低吸収域(黒) |
|---|---|
| 急性期の出血(脳出血・くも膜下出血・急性硬膜下血腫・硬膜外血腫)、石灰化(脈絡叢)、骨 | 脳梗塞慢性期(壊死・嚢胞化)、浮腫、脂肪、空気 |
急性期の脳梗塞はCTで写りにくく(early CT signに乏しい)、慢性期に明瞭な低吸収域となる。
| 項目 | CT | MRI |
|---|---|---|
| 撮影時間 | 短時間(救急向き) | 長い |
| 被ばく | あり(X線を使う) | なし |
| 急性期の脳出血 | 有用(高吸収で即座に描出) | CTに劣る |
| 急性期の脳梗塞 | 初期変化に乏しく苦手 | 拡散強調像で有用 |
| 脳幹・後頭蓋窩 | アーチファクトが出て見にくい | 描出に優れる |
| 撮像法 | 得意な病変・信号の基本 | 発症数時間(超急性期)の脳梗塞での信号 |
|---|---|---|
| 拡散強調像〈DWI〉 | 水分子の拡散制限を捉え、発症数十分〜数時間の超急性期・急性期脳梗塞を高信号で描出 | 高信号(最も早く出る) |
| FLAIR | 脳脊髄液を黒く抑制。陳旧性梗塞・虚血性白質病変を高信号で描出 | まだ目立たない(数時間〜以降に高信号へ) |
| T2強調像 | 水(髄液は高信号)。梗塞巣も浮腫により高信号 | まだ目立たない(急性期以降に高信号) |
| T1強調像 | 水が黒く写る(髄液は低信号)。高信号になるのは脂肪・亜急性期の出血(メトヘモグロビン)・高蛋白/高濃度の液体・造影後の病変 | 低信号〜ほぼ等信号。高信号にはならない |
| T2*(スター)強調像・SWI | 微小出血・ヘモジデリン沈着を低信号で鋭敏に検出 | 梗塞巣そのものは描出しない(出血性変化の検出用) |
| MRA | 頸動脈狭窄・脳動脈瘤・主幹動脈の閉塞(造影剤不要) | 責任血管の閉塞・途絶として写る |
「陳旧性梗塞の検索に拡散強調像を用いる」は誤り → DWIは急性期用。陳旧性梗塞はFLAIR・T2強調像で評価する。
「T2強調像で髄液は低信号」は誤り → T2で髄液は高信号(低信号はT1)。「T2で脳梗塞の信号変化はみられない」も誤り。
「超急性期の脳梗塞はT1強調像で高信号」は誤り → 超急性期の梗塞巣で起きているのは細胞性浮腫=組織の水分が増える変化。T1は水が黒く写るので、T1では低信号(またはほぼ等信号)になり、高信号にはならない。T1で高信号を見たらまず脂肪か亜急性期の出血を疑う。
「超急性期の脳梗塞をT1で見る」という選択肢は、信号の向き(高/低)もタイミングも両方違うので切れる。T1に求める役割は梗塞の検出ではなく、脳の形態を見ることと、脂肪・出血・造影効果の識別。
超急性期脳卒中の画像戦略
この場面で並ぶ誤答肢の切り方。脳腫瘍=緩徐進行が本態で、「突然発症・発症3時間」という急性の経過を取らない(進行性の巣症状・頭蓋内圧亢進で受診する)。脳動静脈瘻・脳動静脈奇形などの血管奇形=画像上は異常血管塊として描出されるのが本態で、突然の片麻痺+単発のDWI高信号病変という所見は作らない。脳出血=CTで即座に高吸収域として写るので、まずCTを撮った時点で除外される。くも膜下出血=突然の激しい頭痛が主症状で片麻痺は典型的でない。
「近位の回復が遅れる」「下肢の回復が遅れる」「共同運動の後に連合反応が出る」「発症直後は筋緊張が高まる」はすべて誤り。上の4つと逆に覚えていないか毎回確認する。
| ステージ | 上肢 | 手指 | 下肢 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ | 弛緩性麻痺。随意運動なし | ||
| Ⅱ | 連合反応・わずかな随意運動、痙縮出現 | わずかな手指屈曲 | わずかな随意運動 |
| Ⅲ | 共同運動が随意的に最大に出現。座位で肩内転・肘伸展・前腕回内(伸筋共同運動)、座位で肩90度外転 | 全指の集団屈曲(鉤形握り)。随意的な伸展は不可 | 座位・立位での股・膝・足の同時屈曲(共同運動) |
| Ⅳ | 分離運動が出始める。手を腰の後ろへ回す、肘90度屈曲位での前腕回内外 | 横つまみ、わずかな半随意的手指伸展 | 座位で踵を床につけたまま足関節背屈/座位で膝90度以上屈曲 |
| Ⅴ | 分離運動が進む。肩90度外転位で肘伸展、前方挙上で肘伸展、肘伸展位で肩90度屈曲し前腕回内外 | 対向つまみ・筒握り・球握り、随意的な手指の集団伸展 | 立位・股関節伸展位での膝屈曲、立位・膝伸展位での足関節背屈 |
| Ⅵ | 協調運動がほぼ正常。個々の指の分離運動 | 立位での股関節外転、座位での下腿の内外旋 | |
「手指Ⅲ=不十分な全指伸展」は誤り → 手指Ⅲは集団屈曲で、不十分な伸展はⅣ以降。
「下肢Ⅲ=座位で踵接地のまま足関節背屈」は誤り → それは下肢Ⅳ。「下肢Ⅳ=立位で股伸展位の膝屈曲」も誤りで、それは下肢Ⅴ。「下肢Ⅴ=立位で股外転」も誤りで、股外転や下腿内外旋はより高度な段階。
脳卒中とてんかん