第5章|脊髄・末梢神経疾患

神経内科学 第5章

5-1 脊髄の感覚伝導路 ─ 交叉の位置で左右が決まる

感覚は種類ごとに別の経路を上行し、交叉する高さが違う。この差が脊髄・脳幹の症候の左右を決める。左右を問う設問はすべてここに帰着する。

伝導路伝える感覚脊髄内の位置交叉する場所損傷で障害される側
後索-内側毛帯路深部感覚(位置覚・振動覚)・識別性触覚後索延髄(後索核で交代後)同側
外側脊髄視床路温度覚・痛覚側索脊髄内(後角で交代し数髄節上行して白交連で交叉)対側
前脊髄視床路粗大触覚・圧覚前索脊髄内対側(両側性経路で症状は出にくい)
皮質脊髄路(錐体路)随意運動側索延髄錐体同側

痛温覚は脊髄に入ってすぐ反対側へ、深部感覚と運動は延髄まで同側。この一行で半側障害も脳幹梗塞も解ける。

左上肢の感覚が通る場所

感覚通る部位
痛覚・温度覚脊髄側索(外側脊髄視床路)
圧覚・粗大触覚右脊髄前索(前脊髄視床路)
位置覚・振動覚脊髄後索

「振動覚は側索を上行する」「温覚は後索を上行する」は誤り → 振動覚は同側の後索、温覚は対側の側索。索(前・側・後)と交叉側をセットで覚える。

5-2 延髄症候群 ─ 交叉性(解離性)感覚障害

延髄外側症候群(Wallenberg症候群)

後下小脳動脈(PICA)または椎骨動脈の閉塞による延髄背外側の梗塞。突然のめまい・嘔吐・歩行困難で発症する。

症状責任病巣
同側顔面の温痛覚障害・角膜反射低下三叉神経脊髄路核
同側Horner症候群(眼瞼下垂・縮瞳・発汗低下)交感神経下行路
同側小脳性運動失調(上下肢)下小脳脚
同側嚥下障害・嗄声・カーテン徴候疑核
同側めまい・眼振前庭神経核
対側体幹・四肢の温痛覚障害外側脊髄視床路

顔は同側・体は対側の温痛覚障害」が交叉性(解離性)感覚障害。障害される感覚は温痛覚だけで、深部感覚は内側毛帯が温存されるため保たれる

Wallenberg症候群で片麻痺は生じない(錐体路は延髄の内側を通り、外側病変では侵されない)。「右半身全体の痛覚脱失」も誤り → 右病変なら右は顔面のみ、体幹四肢は左。下垂足・内反足も出ない。

延髄内側症候群(Dejerine症候群)

  • 前脊髄動脈領域。対側の片麻痺(錐体)+対側の深部感覚障害(内側毛帯)+同側の舌下神経麻痺(舌が患側へ偏位)
  • 右延髄内側の病変なら「左下肢の深部感覚低下」が説明できる。顔面温痛覚障害・小脳失調は外側症候群の所見で、内側では主症状にならない
  • 延髄の小病変では高度意識障害(JCSⅢ桁)は通常きたさない

内側=錐体+内側毛帯(麻痺と深部感覚、ともに対側)/外側=脊髄視床路+小脳+嚥下(温痛覚は交叉性、失調は同側)

5-3 脊髄の部分症候群と二分脊椎

症候群障害部位障害される機能保たれる機能
Brown-Séquard症候群(脊髄半側障害)脊髄の左右どちらか半分同側:運動麻痺(痙性)・深部感覚障害/対側:温痛覚障害触覚は両側性経路のため明瞭には出にくい
前脊髄動脈症候群(前脊髄症候群)脊髄前2/3運動麻痺+温痛覚障害後索(位置覚・振動覚・触覚)は温存
中心性頸髄損傷頸髄中心部上肢に強く下肢は軽い麻痺・感覚障害下肢機能は比較的保たれ歩行可能なことも
脊髄円錐症候群L1〜L2椎体高位(脊髄末端=仙髄)肛門・会陰のサドル型感覚障害、早期からの膀胱直腸障害下肢の筋力は比較的保たれる
馬尾症候群L2椎体以下の神経根束下肢の弛緩性麻痺・サドル型感覚障害・膀胱直腸障害・強い疼痛(左右非対称)

よくある誤り3点 → ①「馬尾神経症候群では感覚障害はみられない」=誤り。サドル型感覚障害が出る。②「中心性頸髄損傷は下肢に強い」=誤り、上肢優位。③「前脊髄動脈症候群で位置覚が障害される」=誤り、位置覚は温存される。④「Brown-Séquardでは対側の位置覚が障害される」=誤り、位置覚は同側、対側は温痛覚。

大動脈解離のステントグラフト内挿術など大動脈手術後の脊髄虚血は前脊髄動脈領域に起こりやすい。「触覚は残っているのに痛覚が落ちている」=脊髄前方の障害と判断する。

二分脊椎

脱出するもの神経障害
潜在性二分脊椎なし(皮膚で覆われる)無症状のことが多い
髄膜瘤髄膜・髄液のみ通常伴わない
脊髄髄膜瘤神経組織を含む(最重症)下肢麻痺・膀胱直腸障害。ChiariⅡ型奇形を高率に合併し水頭症を合併する
  • 脊髄係留症候群=脊柱の成長に伴って症状が顕在化するため学童期以降〜成長期に問題化する(2〜3歳が好発ではない)。症状は下肢の感覚・運動障害と排尿障害で、上肢には出ない

5-4 脊髄ショックと重症度分類(AIS・Frankel)

  • 脊髄ショック=受傷直後、損傷レベル以下の反射がすべて消失し弛緩性麻痺・尿閉となる時期。数日〜数週で反射が回復し痙性へ移行する。この時期を脱してから残存レベルを判定する
AIS定義Frankel
A完全麻痺。最下位仙髄(S4-5)の運動・感覚がすべて消失A=完全麻痺
BS4-5に感覚は残るが、損傷レベル以下に実用的な随意運動が残らない(感覚のみ不全)B=運動消失・感覚残存
C損傷レベル以下に随意運動が残るが、キー筋の半数未満がMMT3以上C=運動残存だが非実用的
D損傷レベル以下のキー筋の半数以上がMMT3以上D=運動残存で実用的(歩行可)
E運動・感覚とも正常E=正常

判定の起点は肛門の随意収縮(S4-5の運動)と肛門周囲・深部肛門の感覚。どちらも消失=A、感覚だけ残る=不全(B以上)。次に「損傷レベル以下に随意運動があるか」→「キー筋の半数以上がMMT3以上か」の順に降ろす。下肢キー筋がすべて0で仙髄の感覚のみ残る例はB、下肢がMMT1〜2中心で残る例はC。

Frankel分類のC/Dの分かれ目は実用的に歩けるか。手すりを使って自宅内を歩いて移動できる、食事は自助具で自立、更衣は介助──という段階はD(ADLに一部介助があってもD)。

5-5 頸髄損傷のキー筋と機能残存レベルの判定

機能残存レベル=MMT3以上を保つ最下位のレベル(それより上位はすべて正常)。MMT表の問題はキー筋を上から順に見て、3以上が途切れる直前のレベルを答える。

レベルキー筋新たにできること
C3以上横隔膜が働かず人工呼吸器が必要(自発呼吸は困難)
C4横隔膜・僧帽筋呼吸自立。上肢機能はほぼなく、顎・呼気操作の電動車椅子と環境制御装置
C5上腕二頭筋・腕橈骨筋・三角筋(肘屈曲)肘屈曲。万能カフなど自助具で食事
C6長・短橈側手根伸筋(手関節背屈)テノデーシス(腱固定)把持。寝返り・起き上がり・手動車椅子駆動
C7上腕三頭筋(肘伸展)プッシュアップ・側方移乗・更衣
C8深指屈筋(中指)随意的な手指屈曲=橈側-手掌握り。ADLほぼ自立
T1小指外転筋(手内在筋)巧緻動作。上肢機能はほぼ完全

MMT表の読み方の例:長橈側手根伸筋4〜5・上腕三頭筋2・指伸筋0 → 手関節背屈は保たれC7以下が働かない=C6。横隔膜5・上腕二頭筋4・短橈側手根伸筋2・上腕三頭筋2・深指屈筋0・小指外転筋0 → 手関節背屈が弱くC5〜C6の境界で、到達目標はテノデーシスと自助具を併用した食事動作にとどまる(プッシュアップ・移乗・自己導尿は困難)。

「C4で手動車椅子操作」「C5でプッシュアップ」「C4で万能カフを用いた食事」はいずれも誤り → 手動車椅子とテノデーシス把持はC6、プッシュアップに必要な肘伸展はC7、万能カフでの食事はC5から。

5-6 残存レベル別のADL到達目標

レベル移動移乗その他のADL
C4電動車椅子(顎・呼気操作)全介助ADL全介助・環境制御装置
C5電動車椅子中心介助(肘伸展不可でプッシュアップ不能)自助具で食事。更衣自立は困難
C6手動車椅子(屋内平地)トランスファーボードを用いた移乗が獲得目標寝返り・起き上がりが自立目標。更衣は一部。自己導尿は一般に困難
C7手動車椅子・キャスター上げ・5cm程度の段差昇降ボードなしの側方移乗・トイレ移乗が自立更衣自立。手動装置で自動車運転
C8〜T1手動車椅子自立手指の把持が可能でADLほぼ自立・自己導尿も可能に
T3車椅子自立自動車への移乗が実用的に可能上肢機能完全。体幹は不安定
T6〜T12実用移動は車椅子自立長下肢装具+松葉杖で治療的(大振り)歩行。実用歩行にはならない
L3以下短下肢装具+杖で実用歩行自立

境界は3つだけ覚える。C6=手関節背屈でテノデーシス/C7=肘伸展でプッシュアップ/C8=手指屈曲で握り。「ボードを使う移乗=C6、ボードなしの移乗=C7」で図問題を判定する。

①「第10胸髄で両長下肢装具の実用歩行」=誤り、T10では実用性がなく車椅子が主。②「第12胸髄で両短下肢装具歩行」=誤り、T12は長下肢装具+松葉杖が必要(短下肢装具で歩けるのはL3以下)。③「C6で橈側-手掌握り」=誤り、随意的な手掌握りはC8。④「C8で長下肢装具歩行」=誤り、下肢は完全麻痺で実用的でない。

C5行を境界例にそのまま当てない。表のC5は上肢の残存がC5でぴたりと止まる例の目安。肘屈曲が徒手抵抗に抗して可能で、手関節背屈も弱いながら出ている(MMT2=抗重力位の保持は困難)というC5〜C6の境界例は、テノデーシス把持と手動車椅子の駆動を伸ばせる側なので、「電動車椅子操作」を到達目標に据えるのは過小(電動車椅子が到達目標になるのは上肢がほぼ使えないC4〜純粋なC5まで)。この段階の第一目標は起き上がり=ベッド柵・ループ・上肢の反動を使う動作。

同じ設問に並ぶ他の肢も残存筋で切れる。側方移乗・トイレ移乗はプッシュアップ=上腕三頭筋(C7)が要る。自動車運転は手指の把握(C7〜C8)を要する動作が多く、改造車でもこの段階の第一目標にはならない。

C7でも自立が難しい動作床面から車椅子への乗り移り。高い筋力・バランス・技術を要する。自動車運転・キャスター上げ・段差昇降・ベッドからの側方移乗はいずれもC7で自立可能なので、「最も困難なのは」と問われたら床からの移乗を選ぶ。

5-7 Zancolli分類と起居・移乗動作の読み取り

Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類は、頸髄損傷の上肢残存機能をC5〜C8で細分する。国試では動作の図から該当レベルを選ばせる。

レベル機能する筋できる動作
C5A上腕二頭筋(腕橈骨筋なし)肘屈曲のみ。上肢支持は不可
C5B+腕橈骨筋手関節背屈は不十分で体重支持は困難
C6A長橈側手根伸筋のみ(背屈が弱い)安定した上肢支持は難しい
C6BⅠ長橈側手根伸筋が強い(背屈確立)テノデーシス把持。寝返り・起き上がりが目標
C6BⅡ+短橈側手根伸筋・円回内筋肘伸展の代償(受動的ロック)が可能。上肢を後方につき体幹を押し上げる起き上がり、反動を使った寝返りから前腕支持
C6BⅢ+上腕三頭筋の一部肘伸展の補助が加わる
C7A上腕三頭筋(能動的肘伸展)プッシュアップによる移乗が安定

「上肢を後方について体幹を押し上げる起き上がり」「反動をつけた寝返り→前腕支持」を獲得できる最も上位のレベルはC6BⅡ。C7Aでも当然できるが、問われているのが「最も上位(=最も機能が少なくても可能な)レベル」なら下位のC7Aは答えにならない。

C6完全麻痺の目標設定:まず起き上がり動作。側方アプローチの移乗・床からの移乗はC7以上で安定するため第一目標にしにくく、電動車椅子は手動駆動が可能なC6には過小な目標となる。

車椅子上の除圧動作と残存レベル

  • 上位(残存機能が少ない)ほど介助量が多く、下位ほど自力の方法がとれる
  • 順序は全介助での体幹前傾 → 深い前傾(自力)→ 前腕支持 → 手掌支持でのプッシュアップ自立
  • 手掌支持のプッシュアップによる除圧は上腕三頭筋(C7)以上、C6以下は前方・側方への体幹傾斜で除圧する

プッシュアップはC6かC7か:肘伸展筋(上腕三頭筋)が働くのはC7で、移乗や除圧として安定して自立するのもC7以上。ただし動作そのものは、C6でも肩関節の屈曲・内転と手関節背屈(橈側手根伸筋)で肘をロックする代償により獲得できる。「獲得可能な最も高位の残存レベル」と問われればC6、「安定して移乗・除圧が自立するレベル」ならC7と読み分ける。上腕三頭筋がMMT2にとどまる例ではプッシュアップも移乗も困難と判断する。

5-8 脊髄損傷の合併症 ─ 自律神経過反射・褥瘡・異所性骨化

自律神経過反射(自律神経過緊張反射)

  • 発生条件=第6胸髄(T6)以上の損傷。腰髄損傷では起こりにくい
  • 誘因=膀胱充満・尿閉・カテーテル閉塞が最多、次いで便塊貯留。褥瘡・陥入爪・きつい衣類も誘因
  • 機序=損傷レベル以下の交感神経が脳幹の抑制を受けられず過剰興奮する
みられるみられない(誤答肢)
発作性の著明な高血圧(220/100 mmHgなど)低血圧
反射性の徐脈(圧受容器反射)頻脈
拍動性頭痛・鼻閉四肢の疼痛(麻痺域は痛みを感じない)
顔面紅潮・損傷レベルより上の発汗損傷レベルより下の発汗(むしろ発汗低下)
高血圧性脳出血・痙攣などの重篤な合併症低血糖(血糖はむしろ上がる)

対応の順序は①起座位にする(臥位にしない)②きつい衣類・腹帯をゆるめる③排尿・排便状況を確認して誘因を除去④それでも下がらなければ降圧薬。放置すれば脳出血をきたす救急病態である。

「体位を臥位にする」は誤り → 起座位にして脳への血圧を下げる。「重篤な合併症は生じない」も誤り。

褥瘡

感覚脱失と自力での体位変換困難が重なり生じる。好発部位は姿勢で変わる

姿勢好発部位
背臥位仙骨部・踵骨部・後頭部・肩甲部
側臥位大転子部・腸骨稜・外果・肘頭部
腹臥位腸骨稜・膝・肋骨部
座位(車椅子)坐骨結節部・仙骨部・尾骨部
  • 長時間のデスクワークなど車椅子座位が続く場面で最も危険なのは仙骨部と坐骨結節部。背もたれにもたれた仙骨座り(後方すべり座位)では圧に剪断力が加わる
  • 15〜30分ごとの除圧(プッシュアップ・前傾・側方傾斜)が必須

異所性骨化(異所性化骨)

  • 麻痺域の大関節周囲に生じ、股関節が最好発、次いで膝関節
  • 発赤・腫脹・熱感・関節可動域制限。座位保持やADLを阻害する
  • 過度な他動運動は誘発・増悪の要因となるため避ける。肘関節の異所性骨化は脳損傷後・熱傷後に多く、脊髄損傷の最好発ではない

5-9 神経因性膀胱と排尿管理

排尿中枢は仙髄(S2〜S4)。この中枢より上か下かで型が決まる。

 核上型(過活動性・反射性膀胱)核・核下型(低活動性・弛緩性膀胱)
障害部位仙髄より上位=脳・頸髄・胸髄仙髄・馬尾・末梢神経
代表疾患脳出血・脳梗塞、胸髄損傷、頸椎後縦靱帯骨化症、多発性硬化症糖尿病性自律神経障害、骨盤内手術後、馬尾障害
症状頻尿・切迫性尿失禁。排尿筋括約筋協調不全(DSD)で残尿・膀胱内圧上昇→腎障害知覚低下と排尿筋収縮力低下→残尿増加・溢流性尿失禁
管理トリガーポイント(下腹部・恥骨上)の叩打で反射性排尿を試みる間欠(自己)導尿が原則。尿道カテーテル長期留置は避ける

①「受傷直後は尿失禁状態になる」は誤り → 脊髄ショック期は尿閉。②「排尿筋括約筋協調不全は生じない」は誤り → 核上型では生じやすい。③「残尿150 mLなら導尿は不要」は誤り → 残尿が多いと尿路感染・腎機能障害の原因となり間欠導尿が必要。④「核・核下型はカテーテル長期留置」は誤り → 間欠導尿が原則。

5-10 末梢神経の疾患 ─ Guillain-Barré症候群と多発ニューロパチー

Guillain-Barré症候群(GBS)

  • 先行感染(上気道感染・Campylobacter腸炎・サイトメガロウイルスなど)の1〜3週後に発症する自己免疫性の急性末梢神経障害。全年齢に起こり、小児に多いわけではない
  • 麻痺は左右対称・四肢遠位(下肢)から始まり上行する弛緩性麻痺。中枢部(近位)優位でも一側性でもない
  • 末梢神経=下位運動ニューロン障害のため深部腱反射は減弱〜消失(亢進・痙性麻痺は誤り)
  • 病型は脱髄型(AIDP)と軸索型(AMAN・AMSAN)。抗ガングリオシド抗体が関与し、軸索型は予後がやや不良
  • 経過は単相性で数週にピーク後に回復。歩行可能まで回復する例が多く、再発を繰り返すのは多発性硬化症、慢性経過はCIDP
  • 合併=球麻痺による嚥下障害・誤嚥、呼吸筋麻痺による拘束性換気障害(人工呼吸を要することがある)、自律神経障害(起立性低血圧・血圧変動・不整脈・発汗異常)、神経根の炎症による腰背部痛・運動時痛
  • 感覚障害は軽く、温痛覚脱失のような明瞭な感覚脱失は生じにくい
  • 治療=血漿交換・免疫グロブリン大量療法(IVIg)。ステロイドパルス療法は無効
  • リハは急性期の過用(過負荷)を避け、回復期に廃用予防と筋力増強を段階的に進める
検査GBSでの所見
髄液検査(最も有用)蛋白細胞解離=蛋白は上昇するが細胞数は正常。発症1〜2週で明らかになる
神経伝導検査脱髄型で伝導速度低下・伝導ブロック
F波近位(神経根)脱髄を反映して潜時延長または消失(短縮はしない)
CT・MRI・脳波・血液培養診断的価値は低い(病変は末梢神経で、脊髄実質の信号異常は通常ない)

「連続(反復)刺激でM波振幅が漸増する」はGBSではなくLambert-Eaton筋無力症候群の所見。漸減(waning)は重症筋無力症。GBSでは反復刺激に特徴的変化はない。

糖尿病性多発神経障害

  • 長さ依存性・遠位優位・左右対称・感覚優位で、下肢の足先から始まる靴下手袋型感覚障害が特徴。発症は緩徐進行で急激ではない
  • アキレス腱反射など深部腱反射は低下・消失。筋力低下も遠位優位
  • 自律神経障害を合併=起立性低血圧・無痛性心筋梗塞・胃不全麻痺・無自覚低血糖・低活動性の神経因性膀胱。自律神経過反射は脊髄損傷の病態であり糖尿病では起こらない
  • 足の感覚低下は潰瘍・壊疽につながるためフットケアが重要

鑑別の2本柱 → 遠位優位=末梢神経障害/近位優位=筋疾患(ミオパチー)腱反射低下=末梢(下位)/亢進=中枢(上位)

中毒性・薬剤性・物理的な神経障害

原因主な障害
有機水銀(メチル水銀)水俣病。四肢末端の感覚障害・運動失調・求心性視野狭窄・難聴
カドミウムイタイイタイ病(骨軟化・腎障害)
橈骨神経麻痺(下垂手)・貧血・腹部疝痛
ヒ素末梢神経障害・消化器症状
一酸化炭素組織低酸素による中枢神経障害(遅発性脳症)
マンガンパーキンソン様症状
有機リン(農薬)コリンエステラーゼ阻害による中毒
アルコール多飲・ビタミンB₁欠乏アルコール性ニューロパチー・脚気・Wernicke脳症(GBSの原因ではない)
甲状腺中毒(機能亢進)・ステロイド・Cushing症候群ミオパチー=近位筋優位の筋力低下・筋萎縮(重金属中毒は神経障害でありミオパチーではない)
放射線療法急性期=皮膚炎・粘膜炎・気道浮腫・悪心・食欲不振/晩期(数か月〜数年)=末梢神経障害・線維化
抗てんかん薬頻度が高い=傾眠・複視・めまい・肝機能障害/末梢神経障害はまれ

帯状疱疹

  • 水痘・帯状疱疹ウイルスが後根神経節に潜伏し、数年〜数十年後に再活性化して発症(初感染の数日後ではない)
  • 片側性・デルマトームに沿った帯状の有痛性発疹。左右対称にはならない
  • アロディニア(異痛症)=本来痛くない軽い触刺激で痛みを感じる。皮疹が消えた後も残る帯状疱疹後神経痛が疼痛管理上の課題

Koplik斑は麻疹の所見、帯状絞扼感(体幹を締めつけられる感覚)は脊髄障害(横断性脊髄炎など)の症候であり、いずれも帯状疱疹の症状ではない。

絞扼性末梢神経障害

  • 手根管症候群=正中神経(母指〜環指橈側のしびれ・母指球萎縮)
  • 肘部管症候群=尺骨神経(小指側のしびれ・鷲手)
  • 橈骨神経麻痺=下垂手(鉛中毒でも生じる)
  • 腓骨神経麻痺=下垂足・下腿外側〜足背の感覚障害