感覚は種類ごとに別の経路を上行し、交叉する高さが違う。この差が脊髄・脳幹の症候の左右を決める。左右を問う設問はすべてここに帰着する。
| 伝導路 | 伝える感覚 | 脊髄内の位置 | 交叉する場所 | 損傷で障害される側 |
|---|---|---|---|---|
| 後索-内側毛帯路 | 深部感覚(位置覚・振動覚)・識別性触覚 | 後索 | 延髄(後索核で交代後) | 同側 |
| 外側脊髄視床路 | 温度覚・痛覚 | 側索 | 脊髄内(後角で交代し数髄節上行して白交連で交叉) | 対側 |
| 前脊髄視床路 | 粗大触覚・圧覚 | 前索 | 脊髄内 | 対側(両側性経路で症状は出にくい) |
| 皮質脊髄路(錐体路) | 随意運動 | 側索 | 延髄錐体 | 同側 |
痛温覚は脊髄に入ってすぐ反対側へ、深部感覚と運動は延髄まで同側。この一行で半側障害も脳幹梗塞も解ける。
| 感覚 | 通る部位 |
|---|---|
| 痛覚・温度覚 | 右脊髄側索(外側脊髄視床路) |
| 圧覚・粗大触覚 | 右脊髄前索(前脊髄視床路) |
| 位置覚・振動覚 | 左脊髄後索 |
「振動覚は側索を上行する」「温覚は後索を上行する」は誤り → 振動覚は同側の後索、温覚は対側の側索。索(前・側・後)と交叉側をセットで覚える。
後下小脳動脈(PICA)または椎骨動脈の閉塞による延髄背外側の梗塞。突然のめまい・嘔吐・歩行困難で発症する。
| 側 | 症状 | 責任病巣 |
|---|---|---|
| 同側 | 顔面の温痛覚障害・角膜反射低下 | 三叉神経脊髄路核 |
| 同側 | Horner症候群(眼瞼下垂・縮瞳・発汗低下) | 交感神経下行路 |
| 同側 | 小脳性運動失調(上下肢) | 下小脳脚 |
| 同側 | 嚥下障害・嗄声・カーテン徴候 | 疑核 |
| 同側 | めまい・眼振 | 前庭神経核 |
| 対側 | 体幹・四肢の温痛覚障害 | 外側脊髄視床路 |
「顔は同側・体は対側の温痛覚障害」が交叉性(解離性)感覚障害。障害される感覚は温痛覚だけで、深部感覚は内側毛帯が温存されるため保たれる。
Wallenberg症候群で片麻痺は生じない(錐体路は延髄の内側を通り、外側病変では侵されない)。「右半身全体の痛覚脱失」も誤り → 右病変なら右は顔面のみ、体幹四肢は左。下垂足・内反足も出ない。
内側=錐体+内側毛帯(麻痺と深部感覚、ともに対側)/外側=脊髄視床路+小脳+嚥下(温痛覚は交叉性、失調は同側)
| 症候群 | 障害部位 | 障害される機能 | 保たれる機能 |
|---|---|---|---|
| Brown-Séquard症候群(脊髄半側障害) | 脊髄の左右どちらか半分 | 同側:運動麻痺(痙性)・深部感覚障害/対側:温痛覚障害 | 触覚は両側性経路のため明瞭には出にくい |
| 前脊髄動脈症候群(前脊髄症候群) | 脊髄前2/3 | 運動麻痺+温痛覚障害 | 後索(位置覚・振動覚・触覚)は温存 |
| 中心性頸髄損傷 | 頸髄中心部 | 上肢に強く下肢は軽い麻痺・感覚障害 | 下肢機能は比較的保たれ歩行可能なことも |
| 脊髄円錐症候群 | L1〜L2椎体高位(脊髄末端=仙髄) | 肛門・会陰のサドル型感覚障害、早期からの膀胱直腸障害 | 下肢の筋力は比較的保たれる |
| 馬尾症候群 | L2椎体以下の神経根束 | 下肢の弛緩性麻痺・サドル型感覚障害・膀胱直腸障害・強い疼痛(左右非対称) | ─ |
よくある誤り3点 → ①「馬尾神経症候群では感覚障害はみられない」=誤り。サドル型感覚障害が出る。②「中心性頸髄損傷は下肢に強い」=誤り、上肢優位。③「前脊髄動脈症候群で位置覚が障害される」=誤り、位置覚は温存される。④「Brown-Séquardでは対側の位置覚が障害される」=誤り、位置覚は同側、対側は温痛覚。
大動脈解離のステントグラフト内挿術など大動脈手術後の脊髄虚血は前脊髄動脈領域に起こりやすい。「触覚は残っているのに痛覚が落ちている」=脊髄前方の障害と判断する。
| 型 | 脱出するもの | 神経障害 |
|---|---|---|
| 潜在性二分脊椎 | なし(皮膚で覆われる) | 無症状のことが多い |
| 髄膜瘤 | 髄膜・髄液のみ | 通常伴わない |
| 脊髄髄膜瘤 | 神経組織を含む(最重症) | 下肢麻痺・膀胱直腸障害。ChiariⅡ型奇形を高率に合併し水頭症を合併する |
| AIS | 定義 | Frankel |
|---|---|---|
| A | 完全麻痺。最下位仙髄(S4-5)の運動・感覚がすべて消失 | A=完全麻痺 |
| B | S4-5に感覚は残るが、損傷レベル以下に実用的な随意運動が残らない(感覚のみ不全) | B=運動消失・感覚残存 |
| C | 損傷レベル以下に随意運動が残るが、キー筋の半数未満がMMT3以上 | C=運動残存だが非実用的 |
| D | 損傷レベル以下のキー筋の半数以上がMMT3以上 | D=運動残存で実用的(歩行可) |
| E | 運動・感覚とも正常 | E=正常 |
判定の起点は肛門の随意収縮(S4-5の運動)と肛門周囲・深部肛門の感覚。どちらも消失=A、感覚だけ残る=不全(B以上)。次に「損傷レベル以下に随意運動があるか」→「キー筋の半数以上がMMT3以上か」の順に降ろす。下肢キー筋がすべて0で仙髄の感覚のみ残る例はB、下肢がMMT1〜2中心で残る例はC。
Frankel分類のC/Dの分かれ目は実用的に歩けるか。手すりを使って自宅内を歩いて移動できる、食事は自助具で自立、更衣は介助──という段階はD(ADLに一部介助があってもD)。
機能残存レベル=MMT3以上を保つ最下位のレベル(それより上位はすべて正常)。MMT表の問題はキー筋を上から順に見て、3以上が途切れる直前のレベルを答える。
| レベル | キー筋 | 新たにできること |
|---|---|---|
| C3以上 | ─ | 横隔膜が働かず人工呼吸器が必要(自発呼吸は困難) |
| C4 | 横隔膜・僧帽筋 | 呼吸自立。上肢機能はほぼなく、顎・呼気操作の電動車椅子と環境制御装置 |
| C5 | 上腕二頭筋・腕橈骨筋・三角筋(肘屈曲) | 肘屈曲。万能カフなど自助具で食事 |
| C6 | 長・短橈側手根伸筋(手関節背屈) | テノデーシス(腱固定)把持。寝返り・起き上がり・手動車椅子駆動 |
| C7 | 上腕三頭筋(肘伸展) | プッシュアップ・側方移乗・更衣 |
| C8 | 深指屈筋(中指) | 随意的な手指屈曲=橈側-手掌握り。ADLほぼ自立 |
| T1 | 小指外転筋(手内在筋) | 巧緻動作。上肢機能はほぼ完全 |
MMT表の読み方の例:長橈側手根伸筋4〜5・上腕三頭筋2・指伸筋0 → 手関節背屈は保たれC7以下が働かない=C6。横隔膜5・上腕二頭筋4・短橈側手根伸筋2・上腕三頭筋2・深指屈筋0・小指外転筋0 → 手関節背屈が弱くC5〜C6の境界で、到達目標はテノデーシスと自助具を併用した食事動作にとどまる(プッシュアップ・移乗・自己導尿は困難)。
「C4で手動車椅子操作」「C5でプッシュアップ」「C4で万能カフを用いた食事」はいずれも誤り → 手動車椅子とテノデーシス把持はC6、プッシュアップに必要な肘伸展はC7、万能カフでの食事はC5から。
| レベル | 移動 | 移乗 | その他のADL |
|---|---|---|---|
| C4 | 電動車椅子(顎・呼気操作) | 全介助 | ADL全介助・環境制御装置 |
| C5 | 電動車椅子中心 | 介助(肘伸展不可でプッシュアップ不能) | 自助具で食事。更衣自立は困難 |
| C6 | 手動車椅子(屋内平地) | トランスファーボードを用いた移乗が獲得目標 | 寝返り・起き上がりが自立目標。更衣は一部。自己導尿は一般に困難 |
| C7 | 手動車椅子・キャスター上げ・5cm程度の段差昇降 | ボードなしの側方移乗・トイレ移乗が自立 | 更衣自立。手動装置で自動車運転 |
| C8〜T1 | 手動車椅子 | 自立 | 手指の把持が可能でADLほぼ自立・自己導尿も可能に |
| T3 | 車椅子自立 | 自動車への移乗が実用的に可能 | 上肢機能完全。体幹は不安定 |
| T6〜T12 | 実用移動は車椅子 | 自立 | 長下肢装具+松葉杖で治療的(大振り)歩行。実用歩行にはならない |
| L3以下 | 短下肢装具+杖で実用歩行 | 自立 | ─ |
境界は3つだけ覚える。C6=手関節背屈でテノデーシス/C7=肘伸展でプッシュアップ/C8=手指屈曲で握り。「ボードを使う移乗=C6、ボードなしの移乗=C7」で図問題を判定する。
①「第10胸髄で両長下肢装具の実用歩行」=誤り、T10では実用性がなく車椅子が主。②「第12胸髄で両短下肢装具歩行」=誤り、T12は長下肢装具+松葉杖が必要(短下肢装具で歩けるのはL3以下)。③「C6で橈側-手掌握り」=誤り、随意的な手掌握りはC8。④「C8で長下肢装具歩行」=誤り、下肢は完全麻痺で実用的でない。
C5行を境界例にそのまま当てない。表のC5は上肢の残存がC5でぴたりと止まる例の目安。肘屈曲が徒手抵抗に抗して可能で、手関節背屈も弱いながら出ている(MMT2=抗重力位の保持は困難)というC5〜C6の境界例は、テノデーシス把持と手動車椅子の駆動を伸ばせる側なので、「電動車椅子操作」を到達目標に据えるのは過小(電動車椅子が到達目標になるのは上肢がほぼ使えないC4〜純粋なC5まで)。この段階の第一目標は起き上がり=ベッド柵・ループ・上肢の反動を使う動作。
同じ設問に並ぶ他の肢も残存筋で切れる。側方移乗・トイレ移乗はプッシュアップ=上腕三頭筋(C7)が要る。自動車運転は手指の把握(C7〜C8)を要する動作が多く、改造車でもこの段階の第一目標にはならない。
C7でも自立が難しい動作=床面から車椅子への乗り移り。高い筋力・バランス・技術を要する。自動車運転・キャスター上げ・段差昇降・ベッドからの側方移乗はいずれもC7で自立可能なので、「最も困難なのは」と問われたら床からの移乗を選ぶ。
Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類は、頸髄損傷の上肢残存機能をC5〜C8で細分する。国試では動作の図から該当レベルを選ばせる。
| レベル | 機能する筋 | できる動作 |
|---|---|---|
| C5A | 上腕二頭筋(腕橈骨筋なし) | 肘屈曲のみ。上肢支持は不可 |
| C5B | +腕橈骨筋 | 手関節背屈は不十分で体重支持は困難 |
| C6A | 長橈側手根伸筋のみ(背屈が弱い) | 安定した上肢支持は難しい |
| C6BⅠ | 長橈側手根伸筋が強い(背屈確立) | テノデーシス把持。寝返り・起き上がりが目標 |
| C6BⅡ | +短橈側手根伸筋・円回内筋 | 肘伸展の代償(受動的ロック)が可能。上肢を後方につき体幹を押し上げる起き上がり、反動を使った寝返りから前腕支持 |
| C6BⅢ | +上腕三頭筋の一部 | 肘伸展の補助が加わる |
| C7A | 上腕三頭筋(能動的肘伸展) | プッシュアップによる移乗が安定 |
「上肢を後方について体幹を押し上げる起き上がり」「反動をつけた寝返り→前腕支持」を獲得できる最も上位のレベルはC6BⅡ。C7Aでも当然できるが、問われているのが「最も上位(=最も機能が少なくても可能な)レベル」なら下位のC7Aは答えにならない。
C6完全麻痺の目標設定:まず起き上がり動作。側方アプローチの移乗・床からの移乗はC7以上で安定するため第一目標にしにくく、電動車椅子は手動駆動が可能なC6には過小な目標となる。
プッシュアップはC6かC7か:肘伸展筋(上腕三頭筋)が働くのはC7で、移乗や除圧として安定して自立するのもC7以上。ただし動作そのものは、C6でも肩関節の屈曲・内転と手関節背屈(橈側手根伸筋)で肘をロックする代償により獲得できる。「獲得可能な最も高位の残存レベル」と問われればC6、「安定して移乗・除圧が自立するレベル」ならC7と読み分ける。上腕三頭筋がMMT2にとどまる例ではプッシュアップも移乗も困難と判断する。
| みられる | みられない(誤答肢) |
|---|---|
| 発作性の著明な高血圧(220/100 mmHgなど) | 低血圧 |
| 反射性の徐脈(圧受容器反射) | 頻脈 |
| 拍動性頭痛・鼻閉 | 四肢の疼痛(麻痺域は痛みを感じない) |
| 顔面紅潮・損傷レベルより上の発汗 | 損傷レベルより下の発汗(むしろ発汗低下) |
| 高血圧性脳出血・痙攣などの重篤な合併症 | 低血糖(血糖はむしろ上がる) |
対応の順序は①起座位にする(臥位にしない)②きつい衣類・腹帯をゆるめる③排尿・排便状況を確認して誘因を除去④それでも下がらなければ降圧薬。放置すれば脳出血をきたす救急病態である。
「体位を臥位にする」は誤り → 起座位にして脳への血圧を下げる。「重篤な合併症は生じない」も誤り。
感覚脱失と自力での体位変換困難が重なり生じる。好発部位は姿勢で変わる。
| 姿勢 | 好発部位 |
|---|---|
| 背臥位 | 仙骨部・踵骨部・後頭部・肩甲部 |
| 側臥位 | 大転子部・腸骨稜・外果・肘頭部 |
| 腹臥位 | 腸骨稜・膝・肋骨部 |
| 座位(車椅子) | 坐骨結節部・仙骨部・尾骨部 |
排尿中枢は仙髄(S2〜S4)。この中枢より上か下かで型が決まる。
| 核上型(過活動性・反射性膀胱) | 核・核下型(低活動性・弛緩性膀胱) | |
|---|---|---|
| 障害部位 | 仙髄より上位=脳・頸髄・胸髄 | 仙髄・馬尾・末梢神経 |
| 代表疾患 | 脳出血・脳梗塞、胸髄損傷、頸椎後縦靱帯骨化症、多発性硬化症 | 糖尿病性自律神経障害、骨盤内手術後、馬尾障害 |
| 症状 | 頻尿・切迫性尿失禁。排尿筋括約筋協調不全(DSD)で残尿・膀胱内圧上昇→腎障害 | 知覚低下と排尿筋収縮力低下→残尿増加・溢流性尿失禁 |
| 管理 | トリガーポイント(下腹部・恥骨上)の叩打で反射性排尿を試みる | 間欠(自己)導尿が原則。尿道カテーテル長期留置は避ける |
①「受傷直後は尿失禁状態になる」は誤り → 脊髄ショック期は尿閉。②「排尿筋括約筋協調不全は生じない」は誤り → 核上型では生じやすい。③「残尿150 mLなら導尿は不要」は誤り → 残尿が多いと尿路感染・腎機能障害の原因となり間欠導尿が必要。④「核・核下型はカテーテル長期留置」は誤り → 間欠導尿が原則。
| 検査 | GBSでの所見 |
|---|---|
| 髄液検査(最も有用) | 蛋白細胞解離=蛋白は上昇するが細胞数は正常。発症1〜2週で明らかになる |
| 神経伝導検査 | 脱髄型で伝導速度低下・伝導ブロック |
| F波 | 近位(神経根)脱髄を反映して潜時延長または消失(短縮はしない) |
| CT・MRI・脳波・血液培養 | 診断的価値は低い(病変は末梢神経で、脊髄実質の信号異常は通常ない) |
「連続(反復)刺激でM波振幅が漸増する」はGBSではなくLambert-Eaton筋無力症候群の所見。漸減(waning)は重症筋無力症。GBSでは反復刺激に特徴的変化はない。
鑑別の2本柱 → 遠位優位=末梢神経障害/近位優位=筋疾患(ミオパチー)、腱反射低下=末梢(下位)/亢進=中枢(上位)。
| 原因 | 主な障害 |
|---|---|
| 有機水銀(メチル水銀) | 水俣病。四肢末端の感覚障害・運動失調・求心性視野狭窄・難聴 |
| カドミウム | イタイイタイ病(骨軟化・腎障害) |
| 鉛 | 橈骨神経麻痺(下垂手)・貧血・腹部疝痛 |
| ヒ素 | 末梢神経障害・消化器症状 |
| 一酸化炭素 | 組織低酸素による中枢神経障害(遅発性脳症) |
| マンガン | パーキンソン様症状 |
| 有機リン(農薬) | コリンエステラーゼ阻害による中毒 |
| アルコール多飲・ビタミンB₁欠乏 | アルコール性ニューロパチー・脚気・Wernicke脳症(GBSの原因ではない) |
| 甲状腺中毒(機能亢進)・ステロイド・Cushing症候群 | ミオパチー=近位筋優位の筋力低下・筋萎縮(重金属中毒は神経障害でありミオパチーではない) |
| 放射線療法 | 急性期=皮膚炎・粘膜炎・気道浮腫・悪心・食欲不振/晩期(数か月〜数年)=末梢神経障害・線維化 |
| 抗てんかん薬 | 頻度が高い=傾眠・複視・めまい・肝機能障害/末梢神経障害はまれ |
Koplik斑は麻疹の所見、帯状絞扼感(体幹を締めつけられる感覚)は脊髄障害(横断性脊髄炎など)の症候であり、いずれも帯状疱疹の症状ではない。