この章の問題は「どこが壊れているか」を先に決めると解ける。障害部位ごとに検査所見が決まっている。
| 項目 | 筋原性(筋ジストロフィー・多発性筋炎) | 神経原性(前角細胞・末梢神経) | 神経筋接合部(重症筋無力症・Lambert-Eaton) |
|---|---|---|---|
| 筋力低下の分布 | 近位筋優位(筋強直性のみ遠位優位) | 末梢神経支配領域・遠位優位 | 外眼筋・球筋・四肢近位筋 |
| 血清CK | 上昇(DMDは数千〜数万IU/L) | 正常〜軽度上昇 | 上昇しない(正常) |
| 針筋電図 | 低振幅・短持続・多相性 | 高振幅・長持続 | 反復刺激試験で判定 |
| 腱反射 | 正常〜減弱 | 減弱(前角・末梢)/亢進(上位運動ニューロン) | 正常〜減弱 |
| 感覚障害 | なし | あり(手袋靴下型など) | なし |
| Babinski反射 | 陰性 | 陰性(上位運動ニューロン障害でのみ陽性) | 陰性 |
重症筋無力症でCKを運動量の指標にするのは誤り → CKは筋線維の壊れ具合を示す指標で、筋自体が壊れない接合部疾患では上がらない。CKを負荷指標に使うのは多発性筋炎。
筋疾患の共通像=近位筋優位・感覚正常・腱反射正常〜減弱・Babinski陰性。深部感覚障害やBabinski陽性が並んでいたら、それは筋疾患の選択肢ではない。
| 所見 | 中身 | 反映する筋 |
|---|---|---|
| 登攀性起立(Gowers徴候) | 床から立つとき自分の膝・大腿に手をついてよじ登る | 殿筋・大腿四頭筋=骨盤帯近位筋 |
| 動揺性歩行(あひる歩行) | 体幹を左右に振る。腰椎前弯を伴う | 中殿筋(股関節外転筋) |
| 下腿三頭筋の仮性肥大 | 筋線維が脂肪・結合組織に置換され太く見えるが筋力は弱い | 腓腹筋 |
異常歩行の持ち主を取り違えない。動揺性歩行=DMD(中殿筋)/小刻み歩行=Parkinson病/踵打ち歩行=深部感覚障害(脊髄癆)/酩酊歩行=小脳性失調/逃避性歩行=疼痛。
DMDの誤答肢つぶし。常染色体劣性・常染色体優性は誤り(X連鎖劣性)/女性に多いは誤り(男児)/成人後発症は誤り(3〜5歳)/感染が契機は誤り(遺伝子変異)/心筋障害はまれは誤り(心筋症は呼吸筋麻痺と並ぶ予後規定因子)/下肢の伸展拘縮は誤り(尖足・股関節および膝関節の屈曲拘縮)/踵足変形は誤り(下腿三頭筋短縮による尖足)/ミオトニアは誤り(筋強直性ジストロフィーの所見)/平均寿命約60歳は誤り(現在も30歳前後)。
厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類は「移動様式」でランクが決まる。ステージ名を暗記するのではなく、何で動いているかを読む。
| ステージ | 移動能力 |
|---|---|
| 1〜3 | 歩行可能(階段昇降が独力→手すり要→不能へ) |
| 4 | 歩行可能だが階段昇降は不能 |
| 5 | 起立・歩行不能。四つ這い移動(車椅子生活に移行) |
| 6 | いざり這い(ずり這い)移動 |
| 7 | 座位保持は可能だが移動不能 |
| 8 | 座位保持も不能 |
「歩行消失後に四つ這い生活を積極的に指導する」は誤り → 四つ這い生活の継続は脊柱後弯変形を加速させ呼吸機能を落とす。車椅子への早期移行が標準。
DMDは筋疾患なので神経伝導速度検査は診断的価値がない。深部腱反射・前腕回内外試験も進行期の優先評価にならない。
| 型 | 遺伝形式 | 発症年齢 | 筋力低下の分布・特徴 |
|---|---|---|---|
| Duchenne型 | X連鎖劣性(男児) | 幼児期3〜5歳 | 近位筋優位・Gowers徴候・仮性肥大・頻度最多 |
| Becker型 | X連鎖劣性(男児) | 学童期〜成人 | DMDの軽症型・進行緩徐・ジストロフィン部分発現 |
| 筋強直性 | 常染色体優性(CTGリピート伸長・表現促進) | 成人期20〜40歳代 | 遠位筋優位・ミオトニア・斧様顔貌 |
| 福山型(先天性) | 常染色体劣性(男女とも) | 乳児期早期=最も早い | 筋緊張低下・運動発達遅滞・脳奇形・高度の精神遅滞・てんかん。日本に多いがDMDより頻度は低い |
| 肢帯型 | 常染色体(劣性が多い) | 幅広い | 肩甲帯・骨盤帯の近位筋優位 |
| 顔面肩甲上腕型 | 常染色体優性 | 思春期〜成人 | 顔面・肩甲帯・上腕から |
「つり革を放せない・遠位筋優位・斧様顔貌・親も同症状」という症例で選ぶのはミオトニア。アテトーゼ=脳性麻痺などの不随意運動/Gowers徴候=下肢近位筋(DMD)/Lhermitte徴候=頸部前屈で走る電撃痛(多発性硬化症など脊髄病変)/Romberg徴候=深部感覚障害(後索)で、いずれも筋強直性ジストロフィーの所見ではない。
筋強直性ジストロフィーの誤答肢。5歳までに発症は誤り(成人期)/伴性劣性遺伝は誤り(常染色体優性)/顔面筋は侵されにくいは誤り(顔面筋・側頭筋・胸鎖乳突筋が侵され斧様顔貌)/認知機能は障害されないは誤り。
他疾患の遺伝形式も同時に問われる。脊髄性進行性筋萎縮症=常染色体劣性(SMN1)/Huntington病=常染色体優性(CAGリピート)。「伴性劣性」に置き換える引っかけが定番。
福山型が「男児のみ」「初発3歳前後」「精神遅滞はDMDより少ない」「15歳以降も歩行可能」はすべて誤り → 常染色体劣性で男女とも発症、乳児期発症、精神遅滞は高度、歩行を獲得できないか早期に歩行不能。
「起床時・午前中に症状が強い」は誤り → 夕方悪化。「複視はまれ」は誤り → 眼症状が高頻度。「四肢遠位筋優位」は誤り → 近位筋・球筋。「悪性腫瘍の合併が多い」も誤り → 合併するのは胸腺腫(10〜15%程度)であり、他の悪性腫瘍との関連は高くない。悪性腫瘍合併が要点になるのは皮膚筋炎。
| 検査 | 結果 |
|---|---|
| 誘発筋電図・低頻度反復刺激試験 | waning(漸減)=M波の振幅が漸減 |
| テンシロン(抗コリンエステラーゼ薬)試験 | 一時的に症状が改善(悪化ではない) |
| 血清CK | 正常(上昇しない) |
| 抗体 | 抗AChR抗体陽性 |
MG患者の理学療法での誤答肢。血清CKを運動量の指標にするのは誤り/筋緊張亢進へのボツリヌス毒素療法は誤り(筋力低下が問題で筋緊張亢進はない。ボツリヌスは接合部を遮断するため禁忌)/クリーゼで閉塞性換気障害を念頭に、は誤り(拘束性)/体温上昇で神経症状が増悪するので環境温に注意、は誤り → 体温上昇での増悪=Uhthoff現象は多発性硬化症の特徴。
| 比較点 | 重症筋無力症 | Lambert-Eaton症候群 |
|---|---|---|
| 障害部位 | シナプス後膜のAChR | シナプス前膜=ACh放出の障害 |
| 反復刺激試験 | waning(漸減) | waxing(漸増) |
| 随伴 | 胸腺腫・胸腺過形成 | 肺小細胞癌に随伴することが多い |
| 薬物 | 作用 | 間違えやすい点 |
|---|---|---|
| コリンエステラーゼ阻害薬 | AChの分解を抑え神経筋接合部のACh濃度を高める。MGの治療薬 | MGの治療は抗コリン「エステラーゼ阻害」薬。抗コリン薬は逆効果で誤り |
| 抗コリン薬 | 副交感神経遮断→気管支拡張・口渇 | 「気管支収縮を促進」は誤り |
| β遮断薬 | 心拍数・心収縮力を抑制し降圧 | 「骨格筋の収縮力を増強」は誤り。運動強度はBorgを併用 |
| カルシウム拮抗薬 | 血管拡張・降圧 | 「心拍出量を増加させる」は誤り |
| 利尿薬 | 水・Naの再吸収を抑制し尿量増加 | 「再吸収を促進」は誤り |
| ボツリヌス毒素 | 神経筋接合部でACh放出を阻害して筋を弛緩。効果は約3〜4か月。痙縮・局所性ジストニアに使用 | 作用部位は「筋内神経」ではない。効果「約3日」は誤り。MG・Lambert-Eaton症候群には禁忌(適応があるは誤り) |
病態と治療薬の組合せ問題は「その薬が原因側でないか」を見る。関節リウマチ―メトトレキサート(アンカードラッグ)が正しい組合せ。L-dopaはジスキネジアを起こす側/アスピリンは消化管出血を起こす側/男性ホルモンは前立腺肥大を増悪させる側で、いずれも治療薬ではない。
神経ブロックの合併症も接合部と並んで問われる。星状神経節ブロック→反回神経への波及で嗄声、ほかにHorner症候群。三叉神経痛には三叉神経ブロック・ガッセル神経節ブロックを用い、硬膜外ブロックではない。
合併の取り違えに注意。胸腺腫=重症筋無力症/先行感染=Guillain-Barré症候群/悪性腫瘍=皮膚筋炎。「高い室温で筋力が低下する」は多発性筋炎の特徴ではない。
| 所見 | 示す病態 | 代表疾患 |
|---|---|---|
| 神経伝導速度の低下・潜時延長 | 脱髄 | CIDP(慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー)・Guillain-Barré症候群 |
| 振幅低下 | 軸索障害 | 軸索型ニューロパチー |
| F波の潜時延長・出現率低下 | 近位部(神経根含む)の障害。F波は近位部の伝導を反映 | Guillain-Barré症候群(潜時は延長。短縮は誤り) |
| 反復刺激でwaning | シナプス後膜 | 重症筋無力症 |
| 反復刺激でwaxing | シナプス前膜 | Lambert-Eaton症候群 |
| 低振幅・短持続の運動単位電位 | 筋原性 | 筋ジストロフィー・多発性筋炎 |
Parkinson病・進行性核上性麻痺・多系統萎縮症は中枢の変性疾患なので、末梢神経伝導検査は基本的に正常。F波異常の選択肢に並んでいたらすべて切ってよい。
顔面筋MMTで前頭筋・眼輪筋(上部顔面)が左右とも保たれ、口角挙筋・口輪筋・鼻筋(下部顔面)だけが片側で低下していたら中枢性顔面神経麻痺。上部顔面は両側大脳支配なので中枢性では残る。
| 区別点 | 中枢性(核上性) | 末梢性(核・核下性) |
|---|---|---|
| 額のしわ寄せ | 可能 | 不能 |
| 閉眼 | 可能 | 不能 |
| 代表疾患 | 被殻出血など脳卒中 | Bell麻痺・Ramsay Hunt症候群 |
重症筋無力症は易疲労性・眼瞼下垂・複視が主体で、固定した片側下部顔面麻痺のパターンにはならない。筋強直性ジストロフィーは両側対称性の顔面筋萎縮(斧様顔貌)なのでこれも合わない。
視神経脊髄炎は抗アクアポリン4抗体による自己免疫性脱髄疾患で、視神経炎+脊髄炎を再発と寛解を繰り返しながら生じ、3椎体以上の長い脊髄病変を作る。免疫不全ではなく自己免疫。レム睡眠行動異常=Parkinson病・Lewy小体型認知症/JCウイルス=進行性多巣性白質脳症/抗コリンエステラーゼ薬が効く=重症筋無力症で、いずれも視神経脊髄炎ではない。
てんかんは大脳ニューロンの過剰放電による反復性の発作。意識障害の有無で全般発作と焦点(部分)発作を割るのが原則。
| 発作型 | 意識 | 特徴 |
|---|---|---|
| 強直発作・間代発作・強直間代発作 | 障害あり | 全般発作。持続的緊張/律動的けいれん。発作後もうろう状態 |
| 欠神発作・非定型欠神発作 | 障害あり | 全般発作。数秒〜十数秒の意識消失 |
| Jackson発作(焦点運動発作) | 保たれる | 運動野の興奮が身体の一部から隣接部位へ「行進」するように広がる |
| 複雑部分発作(焦点意識減損発作) | 減損 | もうろう状態で歩き回る・徘徊などの自動症 |
| 症候群 | 年齢 | 発作と誘因・脳波 |
|---|---|---|
| 小児欠神てんかん | 学童期5〜10歳 | 数秒の意識消失で倒れない。過呼吸で誘発・脳波3Hz棘徐波複合 |
| 若年性ミオクロニーてんかん | 思春期 | 起床時・睡眠不足で誘発される上肢のミオクロニー(物を落とす、意識消失なし)・光過敏性 |
| 覚醒時大発作てんかん | 思春期〜 | 起床後の全般強直間代発作が主 |
| 側頭葉てんかん | 幅広い | 自動症・意識減損を伴う焦点発作 |
| Lennox-Gastaut症候群 | 幼児期 | 強直発作・非定型欠神・知的障害を伴う難治てんかん |
欠神発作の誤答肢。心因性は誤り(脳の異常放電)/高齢で発症は誤り(学童期)/発作後に入眠は誤り(発作後症状がなくすぐ元の活動に戻る。もうろう状態を欠くのが強直間代発作との区別点)/周囲に気付かれやすいは誤り(倒れず一瞬の動作停止・凝視のみで、ぼんやり・学業不振として見過ごされる)。
やってはいけないこと。口に物(割り箸・タオル)を噛ませない=窒息・誤嚥・歯や口腔の損傷/身体を押さえて止めない=本人と介助者が負傷する/体をゆすらない=発作は止まらず転倒を招く/大声をかけない=意識減損下では刺激にしかならない/一人にしない=転倒・事故の危険。救急搬送は短時間で収まれば通常不要で、重積や反復時に検討する(最初の対応ではない)。