第2章|関節と関節運動

運動学 第2章

2-1 関節の基本構造と構造による分類

連結様式による3分類

分類介在する組織可動性代表
線維性関節線維性結合組織ほぼ不動頭蓋の縫合、脛腓靱帯結合、釘植(歯と歯槽)
軟骨性関節軟骨わずかに動く線維軟骨結合=恥骨結合・椎間円板/硝子軟骨結合=骨端線
滑膜性関節関節腔と滑膜をもつ大きく動く肩・股・膝など可動関節の大部分

滑膜性関節の構成要素

  • 関節軟骨=硝子軟骨。血管・神経・リンパ管をもたない。栄養は滑液からの拡散で受けるため、いったん損傷すると再生しにくい
  • 関節包=外層の線維膜+内層の滑膜滑液を分泌するのは滑膜で、潤滑と軟骨の栄養を担う
  • 靱帯=運動を制限して安定を保つ。補助構造=関節唇・関節円板・関節半月(2-4)

「関節軟骨には血管が豊富に分布する」は誤り → 血管・神経をもたない。「関節液は関節軟骨が分泌する」も誤り → 滑膜が分泌。

2-2 滑膜関節の形状分類と代表関節

形状運動代表関節(この対応を丸暗記)
球関節(臼状関節)屈伸・内外転・回旋の多軸肩甲上腕関節股関節(臼状)・腕橈関節
顆状(楕円)関節屈伸+内外転の2方向橈骨手根関節中手指節(MP)関節・環椎後頭関節
鞍関節2方向+対立母指の手根中手(CM)関節・胸鎖関節
蝶番関節(らせん関節)屈伸のみ腕尺関節・指節間(IP)関節・距腿関節
車軸関節回旋のみ上橈尺関節・下橈尺関節・正中環軸関節
平面関節わずかなすべり肩鎖関節・椎間関節・手根間関節・足根間関節

らせん関節と蝶番関節の関係:らせん関節は蝶番関節の一種で、屈伸に伴いわずかなねじれを伴うもの。腕尺関節は「蝶番関節」でも「らせん関節」でも正しい。距腿関節も同型。

頻出の誤対応。母指CM関節=鞍関節(球でも蝶番でもない)/橈骨手根関節=顆状(楕円)関節(鞍でも平面でもない)/手根間関節=平面関節(鞍ではない)/肩甲上腕関節=球関節(楕円ではない)/上橈尺関節=車軸関節(顆状ではない)/MP関節=顆状関節(らせんではない)/肘(腕尺)関節=蝶番関節(球ではない)。

2-3 運動軸の数(自由度)で切る

運動軸形状関節名
1軸蝶番(らせん)腕尺関節・母指IP関節・手指のIP(PIP・DIP)関節・距腿関節
1軸車軸上橈尺関節・下橈尺関節・正中環軸関節(環軸関節)
2軸顆状(楕円)橈骨手根関節MP関節(示指など)・環椎後頭関節
2軸母指CM関節・胸鎖関節
3軸(多軸)球(臼状)肩甲上腕関節・股関節・腕橈関節
軸で数えない平面椎間関節・肩鎖関節・手根間関節(すべり主体で多方向にわずかに動く)

IP関節は屈伸だけ=1軸/MP関節は内外転もできる=2軸。母指IPが1軸、示指MPが2軸という対比が頻出。

「腕橈関節は1軸」は誤り → 球関節で多軸(回内外にも関与)。同じ肘でも腕尺関節は1軸。

「椎間関節は1軸」も誤り → 平面関節のすべり運動で屈伸・側屈・回旋に関与。

「顎関節は1軸」も誤り → 開閉口に加え前後・側方運動がある複合運動。

2-4 関節を補強する構造 — 関節唇・関節円板・関節半月

構造性状と役割もつ関節
関節唇関節窩の周縁を縁取る線維軟骨。浅い受け皿を深くして適合性・安定性を高める肩関節(関節唇)と股関節(寛骨臼唇)の2か所のみ
関節円板関節腔を完全/不完全に二分する線維軟骨。適合性の悪い関節面の間に介在し衝撃を吸収胸鎖関節・遠位(下)橈尺関節・顎関節・肩鎖関節
関節半月三日月形の線維軟骨(半月板)膝関節
  • 関節唇をもつ2関節はどちらも球関節=浅い関節窩を線維軟骨で深くして安定を補う
  • 遠位橈尺関節の関節円板は三角線維軟骨で、TFCCの中核。適合性の悪い関節ほど円板で補い、逆に適合性の高い腕尺関節には円板がない

「肩関節は関節円板をもつ」は誤り → 肩関節にあるのは関節唇のみ。

「橈骨手根関節は関節円板をもつ」も誤り → 円板をもつのは遠位橈尺関節側。橈骨手根関節は橈骨と近位手根骨の楕円関節。

「膝の半月板は関節唇である」も誤り → 半月板は関節内に介在する関節半月で、関節唇とは別物。

「肘・足関節に関節唇がある」も誤り → いずれも蝶番関節でもたない。

2-5 関節面の動き — 転がり・すべりと凹凸の法則

  • 転がり:両方の関節面で接触点が移動する。転がりの向きは常に骨の運動方向と同じ
  • すべり:一方の面上を接触点が移動する。向きは動く面が凸か凹かで変わる
動く側の関節面すべりの方向
凸面が動く骨の運動方向と肩の上腕骨頭(外転時は下方へすべる)
凹面が動く骨の運動方向と同じ脛骨で膝を動かす(下腿を振る)、橈骨手根関節の手根骨

「凸は逆・凹は同じ」。モビライゼーションでのすべり誘導方向の根拠。転がりは凹凸に関係なく常に骨運動と同方向。

締まりの肢位(close-packed position)=関節面の適合が最大で靱帯・関節包が最も緊張する肢位。股=伸展+内旋/膝=完全伸展+下腿外旋/肘=完全伸展/足=最大背屈

2-6 関節可動域(ROM)の参考可動域

日整会・日リハ医学会基準。対になる値の大小の取り違えが狙われる。

部位運動参考可動域
肩甲帯屈曲/伸展/挙上/引き下げ20°/20°/20°/10°
屈曲/伸展180°/50°
外転/内転180°/0°
外旋/内旋60°/80°
屈曲/伸展145°/5°
前腕回内/回外90°/90°
屈曲(掌屈)/伸展(背屈)90°/70°
橈屈/尺屈25°/55°
屈曲/伸展125°/15°
外転/内転45°/20°
屈曲/伸展130°/0°
背屈/底屈20°/45°

「肩伸展60°」は誤り → 50°。「肩外旋80°」も誤り → 外旋は60°、80°は内旋の値で取り違えの定番。「肘伸展10°」も誤り → 基準値は(生理的過伸展はマイナス表記)。「肩甲帯伸展20°」「手橈屈25°」は正しい

  • 肩甲帯は屈曲・伸展とも20°で左右対称/手関節は尺屈55°>橈屈25°
  • 一般に 自動ROM ≦ 他動ROM。他動のほうが大きく出る

2-7 ROM測定の基本軸・移動軸・測定肢位

測定図では基本軸を実線、移動軸を破線で示す。「中央線」と「骨そのもの」の取り違えが最も狙われる。

運動方向基本軸移動軸
肩水平屈曲・水平伸展肩峰を通る矢状面への垂直線上腕骨(肩90°外転位から開始)
肩外旋・内旋肘を通る前額面への垂直線尺骨(肩90°外転・肘90°屈曲位で測定)
手屈曲・伸展橈骨第2中手骨
手橈屈・尺屈前腕の中央線第3中手骨
指の外転・内転第3中手骨延長線指軸
股屈曲・伸展体幹と平行な線大腿骨(大転子と大腿骨外側顆を結ぶ線)
股外転・内転両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線大腿中央線(上前腸骨棘と膝蓋骨中心を結ぶ線)
股外旋・内旋膝蓋骨から下ろした垂線下腿中央線(膝蓋骨中心と足関節内外果中央を結ぶ線)
膝屈曲・伸展大腿骨腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線)
足背屈・底屈腓骨長軸への垂直線第5中足骨

母指と手指の運動名

  • 母指の橈側外転/尺側内転手掌面(前額面)内で示指から離す/近づける運動。掌側外転/掌側内転は手掌面に直交する面での運動
  • 指の外転・内転は中指(第3中手骨延長線)を基準とし、そこから離れる動きが外転(小指外転もこの基準)

「股屈曲の移動軸は下腿中央線」は誤り → 大腿骨。「股内旋の移動軸は大腿骨」も誤り → 下腿中央線。「足底屈の移動軸は第1中足骨」も誤り → 第5中足骨。「股外転の移動軸=大腿中央線」は正しい

【設問の欠陥/膝屈曲の移動軸】「運動方向と移動軸の組合せで正しいのはどれか(1つ選べ)」の型は、正答が一意にならないことがある。57回の出題では「股外転 ── 大腿中央線」(公式正答)「膝屈曲 ── 腓骨」2肢が同時に成立している。上の表のとおり膝屈曲・伸展の移動軸は腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線)で、これは日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の基準そのままの記載であり誤りではない。58回でも同じ形(公式正答「股屈曲・伸展 ── 大腿骨」に対し「膝屈曲・伸展 ── 腓骨」が併存)が出ている。試験では公式正答(57回=股外転 ── 大腿中央線)を採る。

本番での手順
① まず軸の名前が別の運動のものにすり替わっている肢を全部消す(大腿骨↔大腿中央線↔下腿中央線、第1中足骨↔第5中足骨)。ここまでで大半は1つに絞れる。
② それでも2肢残ったら股関節の肢を採る。この型の主題は股関節の3方向(屈曲伸展/外転内転/外旋内旋)の軸の区別で、膝の肢は消去用に置かれているだけで正答にはされない。
膝の肢は「基本軸か移動軸か」を読み直す基本軸を問う問題なら「膝屈曲 ── 大腿骨」が正答(50回で実際に正答)、移動軸なら腓骨。どちらも事実として正しいので、設問がどちらを聞いているかだけが分かれ目。
④ 2つ成立すると気づいても悩まない。これは出題側の不備で知識不足ではない。想定解にマークして次へ進む。

2-8 エンドフィール(最終域感)

正常なエンドフィール

種類止まり方代表的な関節運動
骨性(硬い)骨どうしが当たって急に止まる肘関節伸展(肘頭が肘頭窩に当たる)
軟部組織性(軟部組織の接近)筋腹どうしが接触して弾力的に止まる膝関節屈曲・肘関節屈曲
筋の伸張やや弾力のある抵抗SLR(下肢伸展挙上)・膝伸展位での股関節屈曲
靱帯性・関節包性(結合組織性)硬く弾力の乏しい停止膝関節伸展・前腕回外・肩外旋・股伸展

異常なエンドフィール

  • 虚性(empty)疼痛のため可動域終了前に運動が止まる。抵抗を感じないまま被検者が止める。正常では生じない
  • 筋スパズム:防御性収縮による急な抵抗。正常では生じない
  • ばね様の跳ね返り:半月板損傷のロッキング

「膝屈曲の最終域感は骨性」は誤り → 軟部組織性(下腿後面と大腿後面の軟部組織が接近して止まる)。

「肘伸展は筋の伸張感」も誤り → 骨性

「SLRは靱帯の伸張」も誤り → 筋(ハムストリングス)の伸張

「前腕回外は関節包の伸張」も誤り → 靱帯・軟部組織の伸張

「手指MP関節伸展は骨性」も誤り → 軟部組織・関節包で制限される。

2-9 股関節の構造と数値

  • 形状は球関節(臼状関節)。寛骨臼の周縁の寛骨臼唇が適合性を高める
  • 頸体角=約125°(120〜130°)。小さいと内反股、大きいと外反股
  • 前捻角=約15°。頸部が前方へねじれる角度で、運動軸のことではない
  • 大腿骨頭の前方は寛骨臼に完全には覆われず一部が露出する(脱臼方向にも関与)

股関節の靱帯

靱帯緊張する肢位
腸骨大腿靱帯(Y靱帯・人体最強)伸展・外旋
恥骨大腿靱帯伸展・外転(・外旋)
坐骨大腿靱帯伸展・内旋

股関節の3靱帯はいずれも伸展で緊張する。立位で関節が締まって安定するのはこのため。

「股関節は鞍関節」は誤り → 球(臼状)関節。鞍関節の代表は母指CM関節。

「恥骨大腿靱帯は屈曲で緊張する」も誤り → 伸展で緊張

「大腿骨の垂直軸に対する運動軸が約15度」も誤り → 15°は前捻角であって運動軸ではない。

2-10 関節周囲組織の画像評価

評価対象第一選択の検査
軟部組織(腱・靱帯・半月板・椎間板)MRI(超音波も有用)
骨の形態・骨折線単純エックス線・CT
骨代謝の亢進(腫瘍・炎症・不顕性骨折)骨シンチグラフィー
血管病変血管造影

腱板断裂の範囲把握に最も有用なのはMRI。断裂の有無に加え腱の退縮・筋萎縮・脂肪変性まで非侵襲的に評価できる。

単純エックス線は骨棘や骨頭上方化という間接所見のみで腱板を描出できない。単純CTは骨には優れるが軟部組織のコントラストが低く断裂範囲の把握には不向き。