5-1 訓練法の全体像
① 言語機能の直接訓練
刺激法(Schuell)・プログラム学習法
② 機能再編成
遮断除去法(Wepman)・機能再編成法・キーワード法
③ 実用コミュニケーション訓練
PACE・AAC
④ 認知神経心理学的アプローチ
意味セラピー・音韻セラピー・マッピング訓練
⑤ 行動変容法
オペラント条件付けに基づくプログラム学習
5-2 刺激法(Schuellの刺激法)
強力で適切な聴覚刺激を繰り返し与えることで、言語処理系を賦活する。
重要なポイント
- 主要な刺激は聴覚刺激(視覚刺激は補助的に使用)
- 反応を強制せず引き出す(矯正はしない)
- 前刺激(priming)を使って反応を促す
- 反復刺激を用いる
- 難易度を段階的に調整する
- 誤反応の矯正よりも反応を引き出すことを優先
⚠️ 「刺激法では誤りを矯正する」は誤り
賦活(反応を引き出すこと)を重視
5-3 遮断除去法(Wepman)
言語モダリティ間に成績差がある場合、成績の良いモダリティを前刺激として使い、障害されたモダリティの遮断を除去する。
❌ 引っかけ頻出
「障害されているモダリティを前刺激として用いる」→
誤り
○ 正しくは「
保たれたモダリティを前刺激にする」
💡 例:書字は困難でも音読は可能な場合
→ 音読を前刺激として書字を促す
5-4 機能再編成法・キーワード法
損傷された機能を、別の残存機能(神経経路)を使って代償・再構成する方法。
キーワード法(仮名文字訓練)
- 仮名1文字を覚えるためにキーワード(絵と言葉)を使う
- 例:「さ」→「さかな(魚)の絵」→「さ」の字を想起
- 50音の系列(自動的言語)を利用する
- モーラ分解・抽出能力が必要(実施前に必ず評価が必要)
- 機能再編成法の一種であり、遮断除去法とは異なる
⚠️ 「キーワード法は遮断除去法の一つ」は誤り
機能再編成法が正しい
マッピング訓練
文の産生・理解における助詞の選択や意味役割の割り当てを訓練。「誰が・何を・どうした」という文法構造(意味マッピング)を扱う。
5-5 行動変容法(プログラム学習法)
行動理論(オペラント条件付け)に基づき、目標行動を設定し、スモールステップで達成する。
- 目標行動を明確に設定する
- スモールステップ(細かく段階化)
- 強化子(うなずき・笑みも強化子になる)を適切に使う
- 日常場面への般化も目標に含める
- レスポンデント条件付けではなくオペラント条件付けを用いる
5-6 PACE
Promoting Aphasics' Communicative Effectiveness。日常会話に近い状況を訓練室に再現し、実用的なコミュニケーション能力を高める。
PACEの4原則
- 新しい情報の交換(お互いに知らない情報を伝え合う)
- 対等な役割分担(患者もSTも送り手・受け手を交互に担当)
- 伝達手段の自由な選択(発話・身振り・描画など何でも使える)
- 伝達内容へのフィードバック(内容が伝わったかどうかをフィードバック)
⚠️ PACEで禁じられていること
誤り反応の矯正・発話以外の手段の禁止・役割の固定
PACE vs 刺激法
| PACE | 刺激法 |
| 目的 | 実用コミュニケーション | 言語機能の賦活 |
| 手段 | 自由(発話・身振り等) | 主に聴覚刺激 |
| 役割 | 対等(交互に交代) | ST主導 |
| 誤り | 矯正しない | 矯正しない |
5-7 認知神経心理学的アプローチ
言語情報処理モデルを用いて障害されているモジュールを特定し、そのモジュールに焦点を当てた訓練を計画する。
- 失語型ではなく障害されたモジュールに基づいて訓練を選択する
- 単語の親密度・心像性・語長などの語彙属性が反応に及ぼす影響を重視
- 誤反応のパターン分析が重要
⚠️ 「失語型に基づいて治療法を選択する」は誤り
障害されたモジュールを特定して選択する
意味セラピー・音韻セラピー
- 意味セラピー:意味システムの活性化。カテゴリー分類・特徴判断を通じて呼称を改善。喚語障害に対して用いる
- 音韻セラピー:音韻出力処理の改善。復唱・音読を用いて音韻表象にアクセスする経路を強化。音韻性錯語の改善に用いる
5-8 CI言語療法
Constraint-Induced Language Therapy。発話以外の代償手段(ジェスチャー等)の使用を制限し、発話を強制的に使わせることで発話機能の改善を図る。
- 短期集中的に実施(毎日・高頻度)
- 発症後早期から実施可能
- 段階的に課題を複雑にしていく
⚠️ 「CI言語療法では発話を制限する」は誤り
制限するのはジェスチャー等。発話を増やすことが目的
5-9 AAC(拡大・代替コミュニケーション)
発話以外の手段(身振り・文字板・コミュニケーションボード・描画など)を活用してコミュニケーションを補う。
- 急性期から導入する(待つ必要はない)
- 軽度例にも適応がある(発話の補助として)
- 複数の手段を組み合わせて使う
- 習得のための訓練が必要
- コミュニケーション相手への指導も重要
⚠️ 「重度例にのみ適応」「軽度例では不要」は誤り
軽度例にも用いる
5-10 回復期・生活期のアプローチ
急性期
- コミュニケーション手段の確保が最優先
- リスク管理・予後予測
- 家族・スタッフへの情報提供・助言
- 言語機能の精密評価よりも機能状態の把握と環境調整
⚠️ 「急性期は言語機能訓練に集中する」は誤り
コミュニケーション確保・環境調整が優先
生活期(維持期)
- ICFの活動・参加への支援
- 言語機能への介入も継続して行う(「言語機能訓練は行わない」は誤り)
- 患者会・当事者グループへの参加支援
- 家族・介護者への助言指導
- 全般的認知機能の維持