第5章|時間特性・聴覚疲労・聴覚情景分析

対応過去問 3問/難易度 ★★★☆☆
この章のねらい:音の「時間」に関わるテーマをまとめます。時間的加重(短い音は聞こえにくい)は聴力検査の刺激音の長さに、聴覚疲労(TTS)と音響外傷の区別騒音性難聴・イヤホン難聴の予防指導に直結します。聴覚情景分析(音脈分凝)は雑音下で会話を聞き分けるしくみで、補聴の到達目標そのもの。得点源は「TTS=持続曝露/音響外傷=瞬間の強大音」の区別です。

5-1 時間的加重と時間分解能

短い音の聞こえは、その持続時間に強く左右されます。ある時間まではエネルギーを足し合わせて聞く時間的加重が働きます。

  • 短い音のラウドネスは持続時間に依存して変化する(約200msまでは長いほど大きく聞こえる)。
  • 一定時間(臨界時間)を超えると、それ以上長くしてもラウドネスは変化しない。
  • 音を極端に短くすると、絶対閾は上昇(聞こえにくく)する。
  • 純音の数周期分だけ取り出した音は、音高をもたないクリック音として知覚される。
  • 短い音の音色は持続時間に依存して変化する。
要点:約200msまでは「長い=大きい・聞こえやすい」(時間的加重)。それを超えると一定。逆に極端に短いと閾値が上がり、数周期だけならクリック音になる。「短い音ほど聞こえにくい」が軸。

ひっかけ:「短い音では持続時間を短縮すると絶対閾が低下する」は誤り(上昇する)。「短い音の音色は持続時間に依存しない」は誤り(依存する)。

5-2 聴覚疲労(TTS/PTS)と音響外傷

大きな音にさらされた後の一時的な閾値上昇聴覚疲労(TTS)です。音響外傷との区別が最頻出です。

区分原因特徴
聴覚疲労=一過性閾値上昇(TTS)ある程度持続する騒音曝露曝露後に一時的に閾値上昇。休めば回復。騒音下のヘッドホン聴取・コンサート後など
永続性閾値上昇(PTS)=騒音性難聴TTSの反復・慢性曝露回復しない恒常的な閾値上昇に至る
音響外傷瞬間的な強大音(爆発音など)聴覚疲労とは別物。一度の強大音で急性に生じる

最頻出ひっかけ:「聴覚疲労は瞬間的な騒音暴露によって生じる」は誤り。聴覚疲労(TTS)はある程度持続する曝露で生じ、瞬間的な強大音で生じるのは音響外傷(別物)。TTSは繰り返すとPTS(騒音性難聴)になる。

つながる知識:TTS→PTSの流れは、騒音性難聴・イヤホン(ヘッドホン)難聴の予防指導の根拠。「大音量で長く聴かない・耳を休ませる」という保健指導につながります。

5-3 聴覚情景分析と選択的注意

聴覚情景分析は、混ざり合った音を音源ごとにまとめて分離して聞く働き(音脈分凝)です。雑音下で目的の声を拾う土台になります。

  • カクテルパーティ効果=多数の音から特定の声に注意を向ける選択的注意第4章の両耳聴と表裏)。
  • 知覚は感覚入力だけでなく上位の知識・文脈からも導かれる。関連する認知の用語も対で押さえる。
用語対応する概念
カクテルパーティ効果選択的注意
文脈効果トップダウン処理(文脈が知覚を導く)
ストループ効果認知的葛藤
マッカロー効果残効
初頭効果リハーサル(長期記憶への移行)

ひっかけ:「文脈効果=ボトムアップ処理」は誤り。文脈効果は上位の文脈情報が知覚を導くトップダウン処理。カクテルパーティ効果=選択的注意はセットで正しい組合せ。

科目のまとめ:聴覚心理学は、聴覚障害(聴力検査・補聴器・人工内耳)聴覚系(蝸牛の生理)音響学(物理音響)心理測定法(精神物理学的測定法)と直結する「聞こえの土台」でした。フォン・ソーン・メルの定義、聴覚フィルタとマスキング、両耳聴、時間特性——臨床とつなげて覚えれば得点源になります。