第3章|補聴器

対応過去問 約55問 / 難易度 ★★★★☆

補聴器の種類と構造

基本構成

  • マイク(音→電気)→ 増幅器(アンプ)→ レシーバ(イヤホン、電気→音)+電池が基本
  • 現在はデジタル補聴器が主流(信号処理が柔軟)

形状による分類

特徴
箱型(ポケット型)操作が容易・高出力。コード式で高齢者向き
耳かけ型(BTE)汎用性が高く軽〜高度まで対応。RIC(レシーバを外耳道内に置く)型も普及
耳あな型(ITE/ITC/CIC)オーダーメイド。目立たないが高出力・強い難聴には不向きでハウリングしやすい
骨導補聴器振動子で骨導刺激。外耳道閉鎖症・伝音/混合難聴・耳漏で気導が使えない例に
CROS/BiCROS一側の高度難聴で、悪い側の音を良聴耳側へ送る
一側がほぼ聞こえない(対側は良好)例はCROS補聴器が適応。両側とも難聴ならBiCROS

補聴器の信号処理

増幅方式

  • リニア増幅:入力に比例して一定の利得(古典的)
  • ノンリニア増幅(圧縮:コンプレッション)小さい音は大きく・大きい音は抑えて増幅。補充現象で狭くなったダイナミックレンジに収める(WDRC)
  • 圧縮比・ニーポイント(圧縮の開始点)で調整

騒音・ハウリング対策

  • 指向性マイク:前方の音を優先し騒音下のSN比を改善
  • 雑音抑制(ノイズリダクション)、ハウリング(フィードバック)抑制
  • 多チャンネル処理(周波数帯ごとに利得・圧縮を設定)
  • 周波数圧縮・移調:高音急墜型で使えない高域成分を低域へ移して提示

出力特性の用語

  • 最大出力(OSPL90/最大音響利得):出せる音の上限。強大音から耳を守る天井
  • 利得(ゲイン)=出力−入力。周波数特性=周波数ごとの利得

イヤモールドと音響特性

  • ベント(通気孔)低音を逃がし、こもり感(閉塞効果)を軽減。穴を大きくするほど低音が抜けるがハウリングしやすくなる
  • ダンパー:中音域のピーク(共鳴)を抑え、聞こえを滑らかに
  • ホーン(ステップボア):内径を広げて高音域を増強
  • 閉塞効果:耳栓で耳道を塞ぐと自分の声がこもって響く→ベントで軽減
「ベントを大きくすると低音が増強される」は誤り。ベントは低音を逃がす(減らす)。こもり感は減るがハウリングは増えやすい。

補聴器の適合(フィッティング・効果評価)

処方と調整

  • 処方式:ハーフゲイン法NAL-NL(成人)・DSL(小児に適する)
  • 実耳測定(REM):外耳道内の実際の音圧を測り、処方目標に合わせて微調整
  • 2ccカプラによる特性測定で機器の性能を確認

効果の評価(補聴器適合検査の指針)

  • 音場での装用閾値と裸耳閾値の差=ファンクショナルゲイン
  • 語音明瞭度の改善(最重要)・騒音下の聞き取り・装用時の不快レベル(UCL)が超えないか
  • 質問紙(APHAB等)による自己評価
補聴器の効果は「音が大きく聞こえる」だけでなく語音明瞭度の改善で評価する。大きくしすぎてUCLを超えないことも重要。

装用指導と支給制度

  • 両耳装用の利点:方向感(左右差の利用)・騒音下の聞き取り・頭部陰影効果の解消
  • 装用練習は静かな環境・短時間から、徐々に騒音下・長時間へ段階的に
  • 身体障害者手帳があれば、補聴器は補装具として補装具費支給制度の対象(障害者総合支援法)
  • 手帳非該当の軽度・中等度難聴児には自治体の購入補助制度がある
  • 補聴器相談医・認定補聴器技能者と連携