第4章|人工内耳・その他の聴覚補償

対応過去問 約42問 / 難易度 ★★★☆☆

人工内耳の構造と仕組み

構成

体外部体内部(埋込)
マイク・スピーチプロセッサ・送信コイル受信/刺激装置・電極(蝸牛内に挿入)

仕組み

  • 音→電気信号に変換→蝸牛(鼓室階)に挿入した電極ラセン神経節(聴神経)を直接電気刺激
  • 障害された有毛細胞をバイパスするのが補聴器との決定的な違い(補聴器は音を増幅して残存有毛細胞に届ける)
  • 体外部→体内部は経皮的に電磁誘導で送信(コイルを磁石で固定)
  • 蝸牛の周波数局在(底部=高音・頂部=低音)に沿って電極を配置しコード化
人工内耳は聴神経を電気刺激する。補聴器のように「音を大きくして有毛細胞に届ける」ものではない。

人工内耳の適応基準

  • 共通:高度〜重度の感音難聴で、補聴器の装用効果が不十分(装用下の語音明瞭度が低い)
  • 成人:補聴器装用下でも語音聴取が困難な高度・重度難聴
  • 小児:原則1歳以上(全身状態・体格を考慮)。先天性高度難聴は早期ほど良好
  • 適応外:蝸牛神経の欠損・高度低形成(電気刺激の相手がいない)→聴性脳幹インプラント(ABI)を検討。中耳炎の活動期も不適
  • 髄膜炎後は蝸牛骨化が進む前に早期手術が望ましい
「重度難聴ならまず人工内耳」ではない。補聴器の効果が不十分なことが前提。蝸牛神経がなければ人工内耳ではなくABI。

マッピングとリハビリテーション

  • 手術後の音入れに続き、各電極のT(閾値)レベルとC/M(快適・最大)レベルを設定する=マッピング(調整)
  • 装用後は聴覚学習・(リ)ハビリテーションが必須。小児は療育と並行(聴覚活用・聴覚口話
  • 成績を左右する因子:難聴期間が短い・装用開始が早い・残存聴力・術後訓練

その他の植込み型・補償機器

機器適応・特徴
人工中耳(VSB)耳小骨等を直接振動させる。感音・伝音・混合難聴の一部
骨導インプラント(Baha)外耳道閉鎖症・伝音/混合難聴・一側ろう。骨に固定し骨導刺激
聴性脳幹インプラント(ABI)蝸牛神経が使えない(NF2・蝸牛神経欠損)例。蝸牛神経核を刺激
残存聴力活用型(EAS)低音は残存聴力(音響)・高音は人工内耳(電気)のハイブリッド

補聴援助システム

  • FM/デジタルワイヤレス補聴システム:話者のマイクから直接電波で補聴器へ。距離・騒音・反響を越えてSN比を改善(教室・講演で有効)
  • 磁気誘導ループ(ヒアリングループ):補聴器のTコイルで受信。窓口・ホール・公共施設
  • 赤外線システムなど
  • 補聴援助=補聴器・人工内耳だけでは越えにくい距離・雑音・残響を補う「情報保障」の一部
FM/ワイヤレスや磁気ループはSN比(話者の声と雑音の比)を上げるのが目的。単に音量を上げる装置ではない。