脳神経は12対。ST臨床では構音・嚥下・聴覚・顔面に関わる神経(V三叉・VII顔面・VIII内耳・IX舌咽・X迷走・XII舌下)がとくに重要です。障害像=「その神経が何を支配するか」から導けます。
| 脳神経 | 主な働き | 障害像(頻出) |
|---|---|---|
| II 視神経 | 視覚 | 同側の視力低下(同名半盲は視索以降) |
| III 動眼神経 | 眼球運動の大部分・上眼瞼挙筋・瞳孔(縮瞳) | 眼瞼下垂・散瞳・眼球の外下方偏位(内転・上転・下転が障害、外転は保たれる) |
| VI 外転神経 | 外直筋 | 外転できず内斜視になる |
| VII 顔面神経 | 表情筋・舌前2/3の味覚(鼓索神経)・アブミ骨筋・涙腺/唾液腺 | 顔面麻痺・閉眼不能・聴覚過敏・涙/唾液減少(乾燥)・味覚低下 |
| VIII 内耳神経(前庭・蝸牛) | 聴覚・平衡 | 感音難聴・めまい・眼振(前庭神経鞘腫の好発) |
| IX 舌咽/X 迷走 | 咽頭・軟口蓋・舌後1/3味覚・発声嚥下 | 嚥下障害・開鼻声・カーテン徴候(軟口蓋が健側に引かれる) |
| XI 副神経 | 胸鎖乳突筋・僧帽筋 | 肩の挙上・首の回旋の障害 |
| XII 舌下神経 | 舌の運動 | 舌の偏位(患側へ)・萎縮 |
ひっかけ①(動眼神経麻痺):動眼神経麻痺でみられないのは「外転障害」。外転は外転神経の担当なので保たれる。散瞳・内転障害・上転障害・下転障害はいずれもみられる。
ひっかけ②(顔面神経麻痺の症状でないもの):右顔面神経麻痺で「右瞳孔が散大する」は誤り——瞳孔は動眼神経の支配。顔面神経麻痺では、右眼の乾燥(涙腺)・音が大きく響く(アブミ骨筋麻痺=聴覚過敏)・口角から水が漏れる・舌右側の味覚低下がみられる。
反射は「求心路(感覚)→中枢→遠心路(運動)」の脳神経の組合せで覚えます。
| 反射 | 求心路→遠心路 |
|---|---|
| 対光反射 | 視神経(II)→動眼神経(III) |
| 瞬目(角膜)反射 | 三叉神経(V)→顔面神経(VII) |
| 咽頭反射・嘔吐反射 | 舌咽神経(IX)→迷走神経(X) |
| 下顎反射 | 三叉神経(V)→三叉神経(V) |
神経鞘腫(シュワン細胞由来)は前庭神経(VIII)に好発(いわゆる聴神経腫瘍)=一側性の感音難聴・耳鳴・めまいで気づかれます。顔面神経麻痺が陳旧化した場合の再建として側頭筋移行術などがあり、麻痺が長引くと表情筋は萎縮します(形成外科領域・詳細は監修前)。
神経疾患を読む最重要の軸が「上位運動ニューロン(UMN)」と「下位運動ニューロン(LMN)」の区別です。ここを外すと球麻痺/仮性球麻痺(第3章)も混乱します。
| 上位運動ニューロン障害(錐体路) | 下位運動ニューロン障害(前角細胞・末梢神経) | |
|---|---|---|
| 筋トーヌス | 痙縮(亢進) | 弛緩(低下) |
| 腱反射 | 亢進 | 低下・消失 |
| 病的反射 | バビンスキー徴候(+) | なし |
| 筋萎縮・線維束性収縮 | 目立たない | 萎縮(+)・線維束性収縮(+) |
膝蓋腱反射は脊髄性の単シナプス反射(伸張反射)。筋を叩打すると筋紡錘が伸張を感知し、Ia群求心性線維が脊髄へ伝え、α運動神経が筋を収縮させます。反射亢進は錐体路症状です。
ひっかけ:「γ(ガンマ)線維が筋伸張を伝える」は誤り。筋伸張を中枢へ伝えるのはIa群感覚線維。γ運動線維は筋紡錘の感度を調節する遠心路で、伸張の「求心」担当ではない。
「ふらつき(失調)」は小脳性か・深部感覚性かの切り分けが要点です。目印はロンベルグ徴候(閉眼で悪化するか)。
| 失調のタイプ | ロンベルグ徴候 | 病巣 |
|---|---|---|
| 深部感覚性(後索性)失調 | 陽性(開眼で保てるが閉眼で倒れる) | 脊髄後索など深部感覚路 |
| 小脳性失調 | 陰性(開眼でも不安定) | 小脳・小脳路 |
| 病変部位 | 典型症候 |
|---|---|
| 内包 | 対側の片麻痺・上肢巧緻性障害 |
| 小脳 | 失調(協調運動障害) |
| 末梢神経 | 腱反射低下(亢進ではない)・弛緩 |
| 脳幹 | 嚥下障害・脳神経症状・交叉性障害 |
| 前頭葉 | 自発性低下・遂行機能障害 |
| 視床 | 体性感覚障害・視床痛・視床失語・健忘・傾眠(片麻痺は主症状でない) |
ひっかけ:「末梢神経―腱反射亢進」は誤り(末梢神経障害では腱反射は低下)。また視床の損傷で生じないのは片麻痺——視床は感覚の中継核で、運動麻痺は内包・皮質脊髄路の障害による(視床病変では体性感覚障害・健忘・傾眠などが前景)。
| 歩行 | 代表疾患 |
|---|---|
| すくみ足・小刻み歩行 | パーキンソン病 |
| 痙性片麻痺歩行(分回し) | 被殻出血など片麻痺 |
| はさみ脚歩行 | 痙性対麻痺(ミエロパチー) |
| 失調歩行(開脚・動揺) | 脊髄小脳変性症 |
| 動揺性(アヒル)歩行 | 近位筋筋力低下(筋ジストロフィー) |
ひっかけ:「突進歩行―進行性筋ジストロフィー」は誤り。突進現象はパーキンソン病の特徴で、筋ジストロフィーは動揺性歩行。歩行の型は疾患のよい手がかりになる。
検査は「何を見る検査か」=形態・機能・血管・電気活動で分類すると組合せ問題に強くなります。
| 見るもの | 検査 | 要点 |
|---|---|---|
| 形態(構造) | CT・MRI | 出血・梗塞・萎縮。CTは脳出血の急性期に鋭敏(高吸収) |
| 機能(活動・血流・代謝) | fMRI・PET・SPECT | fMRI=BOLDで脳活動を計測(放射線被曝なし)。PET/SPECT=血流・代謝 |
| 血管 | 超音波ドップラー・MRA・血管造影 | 狭窄・閉塞・動脈瘤。血管造影はX線=被曝あり |
| 電気活動・眼球運動 | 脳波(EEG)・電気眼振計(ENG) | てんかん波・眼振の記録 |
ひっかけ(被曝の有無):放射線被曝があるのは血管造影(X線)。脳波・MRA・超音波・近赤外線分光法(NIRS)は被曝なし。電気眼振計(ENG)で記録しないのは足踏み検査(=身体の偏りを見る検査。温度刺激・視標追跡・視運動性眼振・二点交互注視は眼球運動=ENGで記録)。
先天異常は「発生のどの段階の障害か」で疾患が決まります。ST臨床では口蓋裂(構音)・外耳/中耳奇形(伝音難聴)を伴う頭蓋顔面奇形が関連します。
| 発生の障害 | 疾患 |
|---|---|
| 神経細胞遊走障害 | 滑脳症 |
| 神経管閉鎖不全 | 無脳症・二分脊椎・脳瘤(髄膜瘤) |
| 前脳分化(腹側化)障害 | 全前脳胞症 など |
| 中脳水道の閉鎖 | (非交通性)水頭症 |
| 頭蓋骨の早期癒合 | 小頭症・頭蓋縫合早期癒合症 |
ひっかけ:「前脳分化障害―脳瘤」は誤り。脳瘤は神経管閉鎖不全による。前脳分化障害は全前脳胞症など。