第2章|脳血管障害・頭部外傷

対応過去問 20問/難易度 ★★★★☆
📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:脳血管障害は、STが臨床で最も多く出会う失語症・運動障害性構音障害・嚥下障害・高次脳機能障害最大の原因です。どの動脈が詰まると/出血するとどの症状が出るか(動脈支配と巣症状)を押さえることが、そのまま失語症運動障害性構音障害嚥下障害高次脳機能障害の「損傷部位からの理解」につながります。

2-1 脳血管障害の病型と危険因子

脳血管障害(脳卒中)は大きく虚血(脳梗塞)と出血に分かれます。脳梗塞はさらに3病型に分けるのが基本です。

病型機序危険因子・特徴
アテローム血栓性梗塞大〜中動脈の動脈硬化高血圧・脂質異常・糖尿病
心原性脳塞栓症心臓由来の塞栓子が飛ぶ心房細動が塞栓源として最多・突然発症・大梗塞
ラクナ梗塞穿通枝の細小動脈閉塞(径約15mm未満の小梗塞)高血圧と関連が深い・日本人に多い・多発で認知症リスク
高血圧と関係が深いのは=ラクナ梗塞・(高血圧性)脳出血。高血圧は穿通枝を傷め、ラクナ梗塞被殻・視床・橋・小脳の脳出血(橋出血など)を起こす。脳塞栓は心原性、慢性硬膜下血腫は外傷、海綿状血管腫は血管奇形で、高血圧と直結しない。

ラクナ梗塞のひっかけ:治療は抗血小板薬が中心で、「抗凝固薬が第一選択」は誤り(抗凝固薬は心原性脳塞栓症=心房細動などに用いる)。日本人に多い・高血圧関連・穿通枝閉塞・多発で認知症リスク、は正しい。

病型の正誤(頻出):「直径30mm以上の脳深部梗塞はラクナ梗塞」は誤り(ラクナは小梗塞)。「頭蓋内出血の治療に抗血小板薬を用いる」も誤り。「脳出血の最大の危険因子は糖尿病」も誤り(最大は高血圧)。正しいのは「TIAの多くは内頸動脈からの微小塞栓」「脳静脈洞血栓症の原因に隣接組織の感染が多い」。

2-2 一過性脳虚血発作(TIA)と急性期治療

TIA(一過性脳虚血発作)は、局所神経症状が一過性(多くは1時間以内・24時間以内)に完全消失するもの。脳梗塞の前兆=救急で、放置してはいけません。

局在の読み方(内頸動脈):「右片麻痺+左眼の一過性黒内障」=左内頸動脈の病変。運動麻痺は対側半球(左)、一過性黒内障は同側の眼動脈(=同側内頸動脈の枝)「同側の眼・対側の手足」=内頸動脈と覚える。

TIAへの対応:症状がすぐ消えても「今すぐ専門医を受診」が正解。TIA後は短期に脳梗塞を起こしやすく、仕事(運転など)を優先させる助言は誤り。

超急性期治療の時間軸:発症3時間の中大脳動脈閉塞では血栓溶解療法(rt-PA静注)を最優先で考慮(適応は発症からの時間が鍵)。適応外・主幹動脈閉塞では血栓回収療法(機械的血栓除去)。「時間=脳(time is brain)」。

2-3 動脈支配と巣症状(失語・構音・嚥下)

大脳の主幹動脈ごとに、出やすい巣症状が決まっています。言語・行為・計算は左(優位)半球、半側空間無視・地誌的障害は右(劣位)半球が原則です。

動脈灌流域巣症状
前大脳動脈前頭葉内側・下肢運動野下肢優位の片麻痺・自発性低下
中大脳動脈大脳半球外側(広い)上肢・顔面優位の片麻痺、失語(左)・半側空間無視(右)
後大脳動脈後頭葉・内側側頭葉同名半盲・純粋失読・視覚失認・地誌的失見当・健忘
責任血管の読み:「失語症+右顔面を含む右上下肢の運動障害」=左中大脳動脈(レンズ核線条体動脈を含む)領域。失語=左半球=中大脳動脈、が基本形。

後大脳動脈のひっかけ:後大脳動脈閉塞で生じにくいのは意味記憶障害(=側頭葉前下部=意味性認知症の症状で動脈支配が違う)。純粋失読・同名半盲・地誌的失見当・連合型視覚失認は後大脳動脈領域で生じる。右後大脳動脈梗塞=地誌的失見当(道順障害)

ST直結(嚥下):脳卒中で「水飲みテストでむせがなければ嚥下障害は否定できる」は誤り——不顕性誤嚥(むせない誤嚥)があるため、スクリーニング陰性でもVF/VEで精査する。この考え方は嚥下障害ノートの中核です。失語は失語症、麻痺性・痙性のdysarthriaは運動障害性構音障害へ。

2-4 脳幹の血管症候群(交叉性症候群)

脳幹梗塞の特徴は交叉性症候群=「同側の脳神経麻痺+対側の手足の症状」。脳神経核が同側、下行する運動路は交叉するために起こります。

症候群部位・動脈特徴
ワレンベルグ症候群
(延髄外側症候群)
延髄外側/椎骨・後下小脳動脈嗄声・嚥下障害(疑核)・めまい眼振(前庭)・小脳失調・ホルネル徴候・交叉性の温痛覚障害(解離性感覚障害)
ウェーバー症候群中脳・大脳脚同側の動眼神経麻痺+対側の片麻痺

ワレンベルグ症候群でみられないもの:複視(眼球運動核は障害されない)と舌下神経麻痺(=延髄「内側」症候群の所見)。嗄声・嚥下障害・めまい・小脳失調・解離性感覚障害はみられる。嚥下障害・嗄声を伴う=ST的にも重要

中脳病変の読み:「右動眼神経麻痺+左片麻痺」=中脳(ウェーバー症候群)。同側の脳神経麻痺と対側の片麻痺が同時にあれば、その脳神経核のある高さ(中脳=動眼、橋=外転・顔面、延髄=舌咽・迷走・舌下)に病巣がある。

2-5 脳出血・くも膜下出血・頭部外傷

脳出血・くも膜下出血

病態頻出ポイント
高血圧性脳出血被殻・視床・橋・小脳に好発。高血圧例の突然の意識障害+片麻痺=まず脳出血を疑う
くも膜下出血多くは脳動脈瘤破裂。突然の激しい頭痛・髄膜刺激症状・CTで高吸収。片麻痺は少ない
くも膜下出血で正しいのは=髄膜刺激症状がみられる。「動静脈奇形が最多」(→動脈瘤破裂が最多)・「慢性頭痛」・「CTで低吸収」(→高吸収)・「片麻痺の頻度が高い」はいずれも誤り。高血圧の人が突然、意識障害+右片麻痺・血圧著明高値なら脳出血が最も疑わしい。

頭部外傷(ST関連)

外傷特徴
慢性硬膜下血腫軽微な頭部外傷の数週間後、頭痛・物忘れ・歩行障害。高齢・飲酒がリスク。手術で改善する治療可能な認知症
びまん性軸索損傷(DAI)回転加速度で軸索が剪断。脳梁・脳幹・白質に好発。受傷直後から意識障害。動脈閉塞は伴わない

ひっかけ:「びまん性軸索損傷は動脈閉塞を伴う」は誤り——機械的な軸索の剪断であり、虚血(脳梗塞)とは機序が違う。脳梁に生じやすい・頭部外傷で生じる・軸索が断裂・発症時に意識障害、は正しい。

ST直結(外傷性脳損傷のリハ):外傷性脳損傷(TBI)のリハでは、記銘力障害にメモ帳(外的代償)、遂行機能障害に作業手順の簡略化、問題行動に行動変容法、そして就労・就学支援へつなぐ。興奮状態に「強い口調で叱る」は不適切。これらは高次脳機能障害のアプローチそのものです。
次章へ:血管障害が「突然起こる原因」なら、次はゆっくり進む原因第3章 神経変性疾患・運動異常症で、パーキンソン病・ALSと、STに直結する球麻痺/仮性球麻痺と運動障害性構音障害・嚥下障害を扱います。