舌切除後の構音障害
切除範囲と予後
| 切除範囲 | 構音予後 |
| 舌根部1/2以上の切除 | 不良 |
| 中咽頭前壁・側壁・上壁の合併切除 | 不良 |
| 舌亜全摘術後の再建(移植皮弁を扁平に) | 不良(膨隆していた方が良好) |
| 中咽頭側壁・上壁の再建目標 | 鼻咽腔閉鎖不全の防止 |
「舌亜全摘術後の再建では移植皮弁を扁平にすると良好」は誤り——皮弁に適度な膨隆があった方が舌との接触が確保され良好。
舌半側切除後に明瞭度が低下する音
舌を用いる調音音:歯茎音([t][d][n][s][z])と軟口蓋音([k][g])
- [a]:母音——舌半側切除の影響は小さい
- [h]:声門摩擦音——舌を使わない
- [k]:軟口蓋破裂音——舌後部を使う → 影響あり
- [t]:歯茎破裂音——舌尖を使う → 影響あり
- [Φ]:両唇摩擦音——舌を使わない
舌尖部切除術後の訓練
舌尖が失われた場合:
- 上顎前歯と下唇で歯茎音([t][d])の代償的産生
- 残存舌の可動範囲拡大
- 代償構音の習得
不適切な訓練(舌尖部切除後に適応とならない):
- ブローイング訓練(口蓋の問題ではない)
- 咽頭破裂音産生訓練(舌根の問題ではない)
- 口腔内圧を高める訓練(鼻咽腔の問題ではない)
- バルブ型スピーチエイドの制作(鼻咽腔閉鎖の装具)
舌亜全摘術後の訓練
適切な訓練:
- 構音状態を患者に理解させる
- 舌圧子を用いて触覚を利用する
- 残存舌の可動範囲を拡大させる
不適切な訓練:
- 会話から訓練を開始する(単音・音節から)
- 正常構音を目標にする(代償構音が現実的目標)
上顎全摘術後の構音特徴
上顎全摘では口蓋が失われ鼻腔と口腔が交通する:
- 開鼻声
- 呼気鼻漏出による子音の歪み
- 有声破裂音が鼻音に異聴される
- 摩擦音の明瞭度低下(保たれるわけではない)
- 歯茎音が両唇音に異聴されるわけではない
顎・舌の分離運動訓練
顎と舌の分離運動を促す訓練:
- バイトブロックを挟みながら舌尖音の産生(顎を固定した状態で舌だけを動かす)
バイトブロックは顎の動きを制限し、舌の独立した運動を促す。