第4章|器質性構音障害(舌・口腔切除後)

対応過去問 10問 / 難易度 ★★★☆☆

舌切除後の構音障害

切除範囲と予後

切除範囲構音予後
舌根部1/2以上の切除不良
中咽頭前壁・側壁・上壁の合併切除不良
舌亜全摘術後の再建(移植皮弁を扁平に)不良(膨隆していた方が良好)
中咽頭側壁・上壁の再建目標鼻咽腔閉鎖不全の防止

「舌亜全摘術後の再建では移植皮弁を扁平にすると良好」は誤り——皮弁に適度な膨隆があった方が舌との接触が確保され良好。

舌半側切除後に明瞭度が低下する音

舌を用いる調音音:歯茎音([t][d][n][s][z])と軟口蓋音([k][g])

  • [a]:母音——舌半側切除の影響は小さい
  • [h]:声門摩擦音——舌を使わない
  • [k]:軟口蓋破裂音——舌後部を使う → 影響あり
  • [t]:歯茎破裂音——舌尖を使う → 影響あり
  • [Φ]:両唇摩擦音——舌を使わない

舌尖部切除術後の訓練

舌尖が失われた場合:

  • 上顎前歯と下唇で歯茎音([t][d])の代償的産生
  • 残存舌の可動範囲拡大
  • 代償構音の習得

不適切な訓練(舌尖部切除後に適応とならない):

  • ブローイング訓練(口蓋の問題ではない)
  • 咽頭破裂音産生訓練(舌根の問題ではない)
  • 口腔内圧を高める訓練(鼻咽腔の問題ではない)
  • バルブ型スピーチエイドの制作(鼻咽腔閉鎖の装具)

舌亜全摘術後の訓練

適切な訓練:

  • 構音状態を患者に理解させる
  • 舌圧子を用いて触覚を利用する
  • 残存舌の可動範囲を拡大させる

不適切な訓練:

  • 会話から訓練を開始する(単音・音節から)
  • 正常構音を目標にする(代償構音が現実的目標)

上顎全摘術後の構音特徴

上顎全摘では口蓋が失われ鼻腔と口腔が交通する:

  • 開鼻声
  • 呼気鼻漏出による子音の歪み
  • 有声破裂音が鼻音に異聴される
  • 摩擦音の明瞭度低下(保たれるわけではない)
  • 歯茎音が両唇音に異聴されるわけではない

顎・舌の分離運動訓練

顎と舌の分離運動を促す訓練:

  • バイトブロックを挟みながら舌尖音の産生(顎を固定した状態で舌だけを動かす)

バイトブロックは顎の動きを制限し、舌の独立した運動を促す。