第5章|顔面神経麻痺・顎顔面・その他

対応過去問 6問/難易度 ★★★☆☆
📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:顔面と口まわりの横断トピックをまとめます。STに直結するのは顔面神経麻痺——表情筋のまひは口唇の閉鎖・構音(両唇音)・食物のこぼれに影響します。末梢性か中枢性かの見分け(顔の上半分=額のしわが寄るか)は、脳卒中による運動障害性構音障害神経系の理解にも直結します。あわせて咀嚼筋・顎関節・開口障害・薬剤性顎骨壊死・前庭脊髄反射の検査を整理します。

5-1 顔面神経麻痺

顔面神経(第Ⅶ脳神経)は表情筋を支配します。障害部位によって「顔のどこがまひするか」が変わるのが最大のポイントです。

障害部位まひの範囲
末梢性(核・核下性)顔面神経核〜末梢患側の顔面全体(額のしわ寄せもできない)
中枢性(核上性)大脳〜皮質核路患側の下半分のみ(額は保たれる)
側頭骨横骨折による顔面神経完全離断(末梢性):側頭骨(錐体部)内で顔面神経が完全に断たれると、患側の顔面全体がまひする。左の離断なら左の前頭筋(額)も脱力し、額のしわ寄せができない。膝神経節付近より中枢の障害ではアブミ骨筋反射の消失・涙腺分泌低下・舌前2/3の味覚障害も加わり、これらの有無で障害部位を診断する。
取り違え注意:下顎反射の消失・顔面の知覚消失は三叉神経(第Ⅴ脳神経)の障害で、顔面神経麻痺では起こらない。また「対側(右)下部の表情筋まひ」は中枢性の所見で、左末梢性離断の症状ではない。末梢性は患側全体・中枢性は患側下部のみを軸に判断する。

5-2 咀嚼筋と顎関節

咀嚼筋は咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋の4つで、いずれも三叉神経(下顎神経)支配です。

咀嚼筋作用付着の特徴
咬筋閉口(かむ)頬骨弓―下顎角の外側面(浅く触れる)
側頭筋閉口・下顎の後退側頭窩―筋突起
内側翼突筋閉口翼突窩―下顎角の内側面
外側翼突筋開口・下顎の前方移動関節円板・下顎頭(下顎頸の翼突筋窩)に停止
咬筋:「開閉口に関与する筋」のうち咬筋は頬骨弓から下顎角の外側面に付き、閉口(かむ力)の主力。皮膚の上から歯を食いしばると硬く触れる浅い筋。
顎関節円板・下顎頭内面に停止する筋=外側翼突筋:外側翼突筋は関節円板と下顎頭に停止し、開口と下顎の前方移動を担う。顎二腹筋・頬筋・眼輪筋・側頭筋は関節円板/下顎頭内面には停止しない。開口筋として問われるのがこの筋。

5-3 開口障害・薬剤性顎骨壊死

開口障害

開口障害をきたす病態:破傷風(咬筋の持続けいれん=牙関緊急)・頬骨骨折(筋突起の運動を妨げる)・顎関節強直症・下顎智歯周囲炎(炎症性の開口制限)など、咀嚼筋・顎関節・骨の問題で起こる。
開口障害を起こさない=顔面神経麻痺:顔面神経は表情筋の神経で、咀嚼筋(三叉神経支配)は動かさない。よって顔面神経麻痺では開口障害をきたさない——「開口障害を起こさないもの」で顔面神経麻痺を選ぶ。咀嚼=三叉神経、表情=顔面神経の支配の違いが決め手。

薬剤性顎骨壊死

顎骨壊死に関連する薬剤=骨粗鬆症治療薬:ビスホスホネート製剤やデノスマブなどの骨吸収抑制薬(骨粗鬆症治療薬)は、抜歯などを契機に薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を起こしうる。抗菌薬・抗血栓薬・高脂血症治療薬・高血圧治療薬は顎骨壊死の主因ではない。歯科処置前に服薬歴の確認が重要。

5-4 その他の検査(前庭脊髄反射)

前庭脊髄反射の検査=重心動揺検査:前庭脊髄反射(VSR)は立位の姿勢・バランスを保つ反射で、その評価には重心動揺検査(立位の重心の揺れを記録)を用いる。頭位眼振検査・温度眼振検査・追標追跡検査は眼球運動(前庭眼反射など)をみる検査、瘻孔症状検査は圧刺激による検査で、前庭脊髄反射の検査ではない。平衡機能検査の全体像は第4章とあわせて押さえる。
まとめ:耳鼻咽喉科は耳(きこえ)・喉頭(こえ)・咽頭(のみこみ)というST3本柱の臓器を扱う、基礎医学のなかで最もST臨床に近い科目でした。難聴は聴覚障害聴覚系、音声・喉頭は音声障害、咽頭喉頭は嚥下障害、顔面神経・脳神経は運動障害性構音障害神経系へつながります。「この疾患で将来どの障害にSTが関わるか」を意識して復習しましょう。