第3章 指導・支援法

言語発達障害学 第3章|対応過去問 68問

3-1 応用行動分析(ABA)

基本の3項随伴性

先行条件(A)→ 行動(B)→ 結果(C)

概念内容
強化行動の後に好ましい結果を与えて行動頻度を増やす
プロンプトヒント・手がかりを与えること
シェーピング(行動形成)目標行動に近い行動を段階的に強化
先行条件の調整要求が出やすい事物を用意するなど
モデリング手本を示すこと

「手本を示す」はモデリングモニタリング(行動の観察・記録)と結びつけた組合せは誤り。一方「行動形成=シェイピング」は正しい組合せ(設問では「行動形式・シェービング」と表記されることがあるが、意味する内容は目標行動への段階的形成で正しい)。

3-2 TEACCHプログラム

ASD者の視覚的処理能力を活かした構造化による支援

構造化の種類内容
物理的構造化活動内容と場所を分ける
スケジュール化見通しをもって行動できるよう提示
ワークシステム何を・どれだけ・終わったらどうするかを明示

「大人が子どもの行動を静かに見守る」はTEACCHの原則ではない(インリアルの姿勢)。TEACCHはエリクソンではなく別の人物が開発。

3-3 PECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)

  • 最も重点が置かれる目標:自発的なコミュニケーションの開始
  • 相手に絵カードを手渡すことで要求を伝える
  • プロンプトを活用
  • ABAの原則に基づく

構文の形成・質問応答よりも、まず「自発的に要求を伝える」が目標。

3-4 インリアル・アプローチ(INREAL)

大人の基本姿勢(SOUL)

  • S:Silence(静かに見守る)
  • O:Observation(よく観察する)
  • U:Understanding(深く理解する)
  • L:Listening(耳を傾ける)

「Modeling(ことばのモデルを示す)」はSOULの基本姿勢ではない(言語心理学的技法)。

言語心理学的技法

技法内容
ミラリング子どもの行動をそのまままねる
モデリングことばのモデルを示す
拡張模倣子どもの発話に語を付け加えてフィードバック
リキャスト意味を変えずに文法的に正しい形に言い直す
スクリプト場面に合ったやりとりのパターン。日常場面(スクリプト)を設定して伝達を促す伝達場面(文脈)設定型指導でも用いられる(インリアル専用の技法ではない)

インリアルの特徴

  • 指導場面を構造化しない(構造化はTEACCHの原則)
  • 子どもと反応的に関わる・子どもの興味や遊びを観察する

インリアルは「行動療法」ではない。リハーサルはインリアルの技法ではない(SSTの技法)。

3-5 ソーシャルスキル・トレーニング(SST)

技法内容
教示ルールや方法を説明・教える
モデリングお手本を見せる
リハーサル練習・ロールプレイ
フィードバック練習結果を評価・修正
般化習得したスキルを日常場面に応用
アサーション自己主張の適切な表現

ミラリング・アイゲイズはSST技法ではない(インリアルの技法)。

3-6 マカトン法

  • サインと話しことばを同時に使う(サインのみは使わない)
  • 語彙数は限定的(1,000語以下
  • 導入する順番が決まっている(任意ではない)
  • 文レベルの表現も可能(できないわけではない)
  • 知的障害・言語障害のある人向けのAAC

3-7 AAC(拡大・代替コミュニケーション)

VOCA(音声出力コミュニケーション機器)の特徴

  • 録音音声と合成音声がある
  • 文章での伝達が可能・写真・文字での入力が可能
  • 「注意を向けている人にだけ伝わる」わけではない(誰にでも伝わる)
  • 道具が必要

シンボル体系と伝達手段・機器の区別

用語種類
PIC絵記号(シンボル体系)=何で表すか
PCS絵記号(シンボル体系)=何で表すか
ブリスシンボル図形記号によるシンボル体系=何で表すか
VOCA音声出力機器=どう伝えるか(手段・機器の側)
コミュニケーションボード伝達手段(エイド)=どう伝えるか

「VOCA-PIC」は誤った組合せ——VOCAは操作に応じて音声を出力する機器であり、絵記号体系であるPICとは役割の次元が異なる。AACはシンボル体系(何で表すか:PIC・PCSなど)手段・機器(どう伝えるか:VOCA・コミュニケーションボード)を分けて整理する。

AAC導入の考慮点

優先度が高い:記号の具象性語彙の親密度・コミュニケーションエイドの携帯性・絵記号の

配慮事項優先度
絵記号の具象性・語彙の親密度・絵記号の数・エイドの携帯性高い(理解しやすさと実用性に直結)
絵記号の大きさ低い(視認性の調整にとどまる)

「絵記号の大きさ」は優先順位が低い。導入時はまず理解しやすく使いやすい記号を選ぶことが重視され、サイズの最適化はその後の微調整。「絵記号の数」は逆に優先度が高い——一度に扱う記号数は子どもの理解段階に合わせて調整すべき重要事項である。

シンボルの抽象度の階層(何から導入するか)

AACで用いる手段は具体 → 抽象の順に難しくなる。その子の理解段階より少し具体的な側から導入するのが原則。

実物 > ミニチュア・写真 > 絵・線画 > マークやロゴ > 抽象的な図形記号 > 文字 (左ほど具体的でわかりやすい → 右へ行くほど抽象度が高い)
  • 身振り——道具がいらず直感的。前言語期から使える
  • 実物・ミニチュア——最も具体的。指示対象との対応がそのまま見える
  • 写真・絵・マークやロゴ——身近な視覚シンボル。日常で見慣れているものは導入しやすい
  • VOCA——写真や絵を押すと音声が出る機器。文字が読めなくても使える
  • 文字(五十音ひらがな文字表)——最も抽象度が高い

発語のない重度知的障害児のコミュニケーション支援に五十音ひらがな文字表は適切でない——文字は音と記号の対応を要する最も抽象的な手段で、この段階には時期尚早。身振り・実物・マークやロゴ・VOCAはいずれも具体的で導入しやすく適切。「抽象度が高すぎる選択肢を外す」のが判断の軸になる。

AACの学習プログラム原則

  • 容易な記号を経由して目標とする記号を学習する(スモールステップを守る)
  • 身近な・経験済みの語彙から選ぶ
  • 初期導入では快の状況(要求)から始める
  • 発信と受信は組み合わせる(受信だけを優先しない)

重症心身障害児の意思伝達手段

要点は本人が随意に制御できるか。随意に制御できる反応はスイッチ操作や入力に利用でき、意思表出の手段になる。

  • わずかな随意運動——スイッチ操作などに利用できる
  • 視線——視線入力として利用できる
  • 呼気——呼気スイッチとして利用できる
  • 脳波——ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)として利用できる

「心拍」は意思伝達手段としての有用性が低い——自律的な反応で本人が随意にコントロールできないため、意思表出の手段に向かない。視線・脳波・呼気・随意運動(いずれも随意に制御できる)との対比で押さえる。

3-8 各発達段階の指導ポイント

前言語期

適切な指導:

  • 物への注目・探索行動を促す
  • 大人と子どもの因果関係(自分の行為→大人の反応)への気づき
  • 見本合わせ課題(マッチング)を実施する・動作模倣を促す
  • 身振りの理解と表現を促す・子供から人に働きかける自発性を育てる

前言語期に「音声を復唱させる」「絵カードによる呼称練習」「パターン的な遊びを正確に模倣させる」は不適切。

有意味語が出ていない段階(発語のない子ども)への働きかけ

簡単な指示は分かるが有意味語の表出がない、という段階では前言語的なやりとりと概念形成を土台に据える。子どもの発信を受け止めて意味づけることがことばの出発点になる。

この段階で適切な働きかけこの段階には高度で不適切
手遊び歌などで模倣行動を引き出す——楽しい活動の中で模倣とやりとりの土台をつくる2語文を復唱させる——発語のない段階に語連鎖の復唱を求めるのは段階を超えている
物の機能的操作によって概念形成を促す——物を本来の用途で使う経験が語の意味の基盤になる色名や曜日などの理解語彙を拡大する——抽象度が高く、有意味語のない段階には難しい
子どもの身振り・指さしに応じてことばをかける——発信に意味づけして返し、伝達意図を育てるストーリーのある絵本の読み聞かせ——筋のある物語の理解はこの段階には高度
共同注意を確かめる/子どもの動作・身振りを読み取る/文脈に沿ったことばかけをする指導者が示すことばを言わせる——言わせるより、伝えたくなる場面をつくる

判断の軸は「その子が今できていることの一段上か」復唱・抽象語彙・物語理解は発語のない段階には飛びすぎで、模倣・機能的操作・発信への意味づけ・共同注意が土台づくりになる。ただし絵本そのものが不適なのではなく、「ストーリーのある絵本」の理解が高度という点に注意する——単語が出はじめた段階では、絵本の読み聞かせは語彙への興味と共同注意を育てる有効な働きかけになる。

1歳6か月健診の事後指導(ことばの理解が未確立の段階)

ことばの理解ができない子どものグループ指導では、ことばの聴覚的理解を前提としない課題を組む。身振り・動作・文脈の手がかりで取り組めるかどうかが分かれ目になる。

適否課題の性質具体例
適切身振りの模倣——ことばの理解を前提とせず前言語的なやりとりを促す拍手・バンザイをまねさせる
適切日常動作——具体物を用いた動作でことばに依存しない食べ終わった皿をトレイに置く/脱いだ靴を靴箱にしまう
適切文脈手がかりのあるやりとり——手を差し出す動作そのものが手がかりになる大人が手を差し出して「ちょうだい」と言うところに物を渡す
不適切語の聴覚的理解と語-対象の対応を前提とする選択課題——ことばの理解が未確立の段階には難度が高い「リンゴとって」と言って複数の果物カードから選ばせる

原則は発達段階に合った課題設定。同じ「ことばをかける」場面でも、手を差し出すなどの文脈手がかりがあれば成立するが、語を聞き分けて対象を選ばせる課題は成立しない。この違いを見分けられるようにする。

幼児前期(1〜3歳相当)

  • 見立て遊び(象徴遊び)を促す——幼児前期に育つ象徴機能を支え、言語発達の基盤となる
  • 小集団で活動する場面を設定する——他児とのやりとりを通じて社会性・言語を育てる
  • 推論表現よりも基本的な語彙・やりとりが優先

幼児前期に重要なのは見立て遊び小集団活動の場面設定の2つ。「発話を模倣させる」は不適切——模倣を一方的にさせるより、やりとりの中で自発的な発話を促す。「音韻意識を育てる」は幼児後期〜学齢期の課題、「推論表現を促す」はさらに後の段階で、いずれも幼児前期の中心ではない。

幼児後期(3〜6歳相当)

  • 子ども同士の協同遊びを促す
  • 単語を分解する課題(音韻意識)を取り入れる
  • 集団活動のルールが身につくようにする・写真を見ながら自己経験を語る

「会話で相手によって伝え方を調整できる」のは学齢期以降の課題。幼児後期には難しい。

語彙が増え2語文が出はじめた段階の指導

語彙が急に増え、2語文が出てきた時期は語彙と統語が一気に伸びる伸びしろの大きい段階。発音の不明瞭さがあっても、まずはことばを使うやりとりを厚くする。

この段階で適切な指導この段階には合わない指導
自発話に拡張模倣でフィードバックする——子どもの発話に語を足して返し、語連鎖を伸ばす構音訓練を中心に行う——語彙・統語が伸びる時期に構音中心は時期尚早
繰り返しのあるやりとりを指導場面に組み入れる——定型的なやりとりが発話を引き出す文の復唱課題を行う——機械的な復唱は日常の発話に般化しにくい
物品を色・形・カテゴリーで分類する課題——概念を整理し、語彙の基盤を育てる

「発話がはっきりしない」という主訴でも、発達段階が語彙拡大・2語文期であれば構音訓練を主軸にしない。この時期の不明瞭さはことばの発達そのものが進むにつれて改善していく部分が大きいため、語彙・統語・やりとりを育てる指導を優先する。

知的障害児への言語指導の原則

  • 全体発達重視——言語だけでなく発達全体のなかで言語をとらえる
  • 細かいステップ(スモールステップ)重視——課題を細かい段階に分けて進める
  • 親(養育者)への支援重視——家庭での関わり・般化を支える
  • 生活・集団場面での般化も重視するため、個別指導だけに偏らない
  • 言語理解より言語表出を重視しない(理解も含めバランスよく扱う)
適切(重視する)不適切(偏ってはいけない)
全体発達重視/細かいステップ重視/親への支援重視言語表出重視個別指導重視

知的障害児の言語指導で適切なのは全体発達・細かいステップ・親への支援の3点。「言語表出重視」「個別指導重視」は不適切——表出だけ・個別場面だけに偏ると、生活場面で使える力(般化)が育たない。

重度知的障害・ASD児への構文指導

  • 語連鎖(2語文)開始の目安:理解語彙50語を超えたころ(30語は誤り)
  • 助詞の誤用は2〜3語文期には許容
  • 「可逆文」より「非可逆文」から指導(可逆文のほうが難しい)
  • 実物やミニチュアを操作して文の意味を示す・動詞語彙を拡大する

初期語彙指導で考慮するもの

  • 使用頻度が高い語・興味・関心がある語
  • 対応する身振りがある語・定形発達児の獲得順序が早い語

「構音可能な音を含む語」は初期語彙指導では考慮不要。語彙理解は音声表出より先に発達する。

数量概念の指導(数唱と集合数を分ける)

「1〜10まで数えられるのに『3個ちょうだい』が分からない」は、数唱(順に唱えること)はできるが、数と量の対応(集合数)が育っていない状態。指導は数唱の範囲を広げるのではなく、数と量を結びつける課題を組む。

段階内容課題の例
①数唱数詞を順に唱える(暗唱に近い)1〜10まで数える
一対一対応ものと数詞を1つずつ対応させて数えるおはじきを1つずつ指さして数える
集合数(量の理解)数が「いくつあるか」という量を表すと分かるカードの丸の数と同数のおはじきを選ぶ大人が立てた指の数と同数のおはじきを選ぶ指を3本立てる動作を模倣する

すでに10まで数えられる子どもに「11〜20まで復唱する」課題は数量概念の指導として適切でない——数唱の延長にすぎず、欠けている「量の理解」を補えない「数えられる」と「量がわかる」は別と区別し、同数選択・一対一対応など量に結びつく課題を選ぶ。

脳性麻痺児へのオーラルコントロール

オーラルコントロールは、介助者が下顎・口唇の動きを外から支える介助。目的は次のとおり。

  • 口腔周辺の感覚運動機能を促進する
  • 下顎・舌・口唇・頬の分離協調運動を促進する——それぞれが分かれて動くようにする
  • 顎の開閉の安定を保つ
介助の方向指の当て方
前方から介助するとき親指は顎の側方、人さし指は上唇の上、中指は下唇の下にあてる
側方から介助するとき前方からとは当て方が異なる(親指・人さし指・中指の位置を前方からと同じにしない)

「摂食嚥下指導のときのみ行う」は誤り——オーラルコントロールは摂食時に限らず、口腔周辺の感覚運動機能の促進として行う。また「親指は顎の側方、人さし指は上唇の上、中指は下唇の下」は前方から介助するときの当て方で、これを側方からの当て方として示す記述は誤り。目的(感覚運動機能・分離協調運動・顎の安定)は正しい記述として問われる。

重複障害児(脳性麻痺など)への指導の優先順位

発語が最も低い段階にある子ども(例:対人関係2歳・言語理解1歳9か月に対し発語9か月レベル)では、次の順で組み立てる。

①信頼関係の構築 → ②やり取りの成立 → ③身振りの増加 → ④音声言語の理解 → ⑤音声言語の表出
  • 基盤づくり(信頼関係)と前言語的なやりとりを先に整える
  • 音声以外の代替手段(身振り)を増やして表出の道を確保する
  • 理解(音声言語の理解)の伸長は表出より先に図る

発語が最も未熟な段階では「音声言語の表出」の優先度が最も低い最も未熟な領域にいきなり重点を置かないのが原則で、理解・やり取り・代替手段を音声表出より先に整える。

ことばの表出が出はじめたが発音が不明瞭な脳性麻痺児の言語指導では、次を優先する。

  • やりとりを通して言語発達を促進する(意欲とやりとりを育てる)
  • 発声・発語しやすい姿勢を工夫する——姿勢調整で発声を支える
  • 写真やシンボルによるAACで意思疎通を補う
  • 遊びを通してコミュニケーション意識(動機づけ)を高める

発音が不明瞭でも「舌尖を使ってラ行音を練習する」は適切でない——脳性麻痺では運動の協調性が乏しく、舌尖を使うような巧緻な構音運動の直接練習は負担が大きく定着しにくい。難度の高い個別音の構音訓練を急ぐより、姿勢・呼吸・発声の土台づくりとAACによる意思疎通の確保、やりとり・遊びによる全体的な発達促進を優先する。

指導の優先順位の決め方(症例問題の頻出型)

「優先順位が低い訓練項目はどれか」「重点をおくのはどれか」は毎年出る型。次の3原則で判断する。

原則意味
到達段階の一段上に目標を置く今できていることの少し先(発達の最近接領域)に課題を設定する。段階を飛ばした課題は優先度が低い
すでに成立していることを改めて重点にしない獲得済みの力を訓練項目に挙げても伸びしろが小さい
最も未熟な領域にいきなり重点を置かない土台(理解・やりとり・代替手段)を先に整え、最も未熟な力は後から伸ばす
子どもの状態優先度が高い優先度が低い
3語文の理解は可能だが発話がなく、文字の意味理解もないASD児。要求はハンドリング(クレーン)語彙理解の拡大/身振りでの表現/写真を示しての要求(AAC)/文字単語と絵とのマッチング書字——文字の意味理解も発話もない段階では時期尚早
2語連鎖の理解はできるが、表出は1音節・ワードパーシャルで浮動的に10語程度。10種図形の弁別は可能言語理解の拡大/身振りでの要求/擬音語(「ボーン」など)の模倣/ひらがな同士のマッチング2語連鎖での表出——単語の安定した表出が未確立
理解は単語レベルで成立、語連鎖の理解は困難、有意味語の表出なし。コミュニケーション態度は良好語彙の拡大語連鎖の受信の獲得音声発信・発信行動の獲得事物名称の受信の獲得/事物の基礎概念の拡大——いずれもすでに成立
就学前に会話は獲得したが説明は困難。仮名一文字を単独に示されると読めない(知覚推理は正常域)音韻抽出課題/五十音での文字さがし課題/絵と文字単語の線結び課題/日常会話での質問・応答課題助詞の穴埋め課題——文法は会話で運用できており、読みの基盤づくりが先
6歳。質問-応答関係検査で日常的質問・なぞなぞは6歳レベル、説明が3歳レベル。平仮名清音は書ける語彙の拡大/3語連鎖以上の表出/上位・下位概念の関係理解ターンテイキング——すでに成立/カタカナのなぞり書き——言語面の課題が中心で書字の優先度は低い

解き方の順序は、①所見から到達段階を確定する → ②獲得済みの項目を消す → ③段階を飛ばした項目を消す。残ったものが優先度の高い課題になる。発話・書字など「出力」に関わる項目は、その土台(理解・音韻・伝達手段)が整っていない段階では優先度が下がる

3-9 自閉症スペクトラム障害への指導

ASD支援の4原則

原則内容
共感的な関係本人の感じ方を受け止め、信頼関係を土台にする
構造化場所・時間・手順を視覚的に示し、予測できるようにする(TEACCH)
刺激の低減音・光・においなど過剰な感覚刺激を減らす環境調整
肯定的なアプローチできたことを認め、望ましい行動を増やす方向で関わる

「指示的な態度」はASD支援の原則ではない——一方的・命令的な関わりは不安と混乱を招きやすい。支援の柱は視覚的構造化・予測可能性・刺激の調整・肯定的で受容的な関わりで、本人の特性に合わせた環境調整が基本になる。

コミュニケーション機能の学習を促す方法

ASD児のコミュニケーションを育てる方法は、「伝え合う行動」そのものに直接働きかけるかで判断する。

  • 早期から他者への関心を育てる——共同注意・やりとりの基盤になる
  • 模倣行動から自発行動へ促す——まず模倣を引き出し、段階的に自発的な発信へ広げる
  • 集団場面での行動を分析する——場面に応じた関わりの指導に活かす
  • 文字や絵を手掛かりにする——視覚的手がかりで理解と表出を支える

「快や不快の感情を経験させる」はコミュニケーション機能の学習を促す方法とはいえない——感情体験は関わりの前提にはなるが、伝え合う行動への直接の働きかけではない。方法として挙げられているものが「他者・伝達・視覚的手がかり・行動分析」のどれかに結びつくかで見分ける。

適切な指導原則

  • 「〜してはいけない」ではなく「〜しなさい」と教える(肯定的な指示)
  • 「ちょっと待って」ではなく「〜時まで待って」と伝える(具体的な時間)
  • 行先を写真や文字で知らせる・予定の変更は事前に知らせる
  • 社会的ルールを視覚的に教える・自己効力感の向上を図る
  • 見通しを持てるようにスケジュールを視覚的に示す
  • 要求などを出しやすい機会を設定する
  • 困ったときに援助を求める方法を場面を設定して具体的に教える
  • 遊びに参加したくないときの適切な断り方をロールプレイで教える

「相手の気持ちになってみて」「周囲の人の気持ちを考えるように言い聞かす」は不適切。「集団で同一のプログラムを設定する」は不適切(個別対応が基本)。「勝ち負けへのこだわりを利用して学習を進める」は不適切。

ASDへの支援方法:ABA・PECS・AAC・SST・INREALは適切。ボバースアプローチ(運動療法)・DAF(遅延聴覚フィードバック)は適切でない。

パニックの原因と対応

給食の時間など特定の場面でパニックが起きるときは、原因を見立て、それに応じた環境調整・代替手段の指導を行う。原因ごとの対応は次のとおり。

考えられる原因適切な対応
偏食摂食可能な食物や形態に変更する(食べられる形に調整する)
感覚過敏音・臭い・味など原因となる刺激を軽減する
活動の切替困難一日の活動の見通しが立つようにする(スケジュールの視覚化)
意思表現の困難拒否を表現できる手段を指導する(代替手段を教える)

感情の抑制が困難な状態のときに「その場で理由を説明させる」のは適切でない——混乱している最中に言語的な説明を求めるのは本人の負担が大きく、逆効果になりやすい。ASDの行動への対応の基本は原因の軽減・見通しの提示・代替手段の指導であって、パニックの渦中で説明や反省を求めることではない。

ASD児との会話における配慮

  • 指さしで答えられるように絵や写真を用意する(視覚的手がかり)
  • 実物やイラストを用いて質問の意図が分かりやすいようにする
  • 話し手が順番にマイクを持つなど、会話が一方的にならないようやりとりを構造化する(交替を促す)
  • 子どもの興味・関心に沿った話題を提供する

「同じ質問を繰り返す場合にその都度答える」は適切でない——常同的な同じ質問にその都度応じるとその行動を強化しかねない。ただ応じるのではなく、話題を広げる・視覚的手がかりを用いるなど別の関わり方を工夫する。視覚的手がかり・やりとりの構造化(交替)・興味に沿った話題提供はいずれも適切な配慮である。

ASDが疑われる吃音児への対応

  • 環境調整を行う(話しやすい環境を整えるのは吃音支援の基本)
  • 吃音の状態に応じて訓練手順を変える(個々の状態に合わせ柔軟に進める)
  • 認知や言語の発達レベルを把握する(発達の全体像を踏まえて支援を組み立てる)
  • ASDの特性を踏まえた対応を行う(見通しの持てる構造化・視覚的手がかりの活用)

「ASDの確定診断後に開始する」は適切でない。発達期の問題への支援は診断の確定を待たず、評価と支援を並行して早期に開始するのが原則。「診断がつくまで何もしない」ではなく、困りごとや発達状況に応じて早期から肯定的なかかわりを重ね、コミュニケーションへの不安や回避が育たないようにする。

3-10 発達性読み書き障害の指導

仮名文字の指導(小学生)

  • 音韻意識を高める
  • 書く指導より読む指導から始める
  • 読みの速さの指導も行う・語彙の指導も行う
  • トレースや模写の繰り返しだけでは不十分

ひらがな未習得児の文字単語―絵 結合学習(導入語彙の選び方)

  • 導入順は易→難——文字数(モーラ数)が少ない語から始める(「め・き・は」→「て・くつ・あいす」)
  • 具体的で身近・絵に描きやすい・使用頻度が高い語を選ぶ
  • 色名(あか・あお)は抽象度が高く、絵との結合がしにくいため最初の導入に向かない
  • 4モーラ以上の長い語(すいか・にわとり・ひこうき)は負荷が大きく後回し
  • 「いぬ・ねこ・うま」のように身近な語でも、1〜3モーラの短い具体語の群より導入順は後になる

最初に導入するのは1モーラ語(め・き・は)1〜3モーラの身近な具体語(て・くつ・あいす)。「短い・具体的・絵にしやすい・高頻度」の4条件で選び、モーラ数の多い語や色名など抽象的な語は後回しにする。

認知処理様式(継次処理・同時処理)に合わせた漢字指導

KABC-IIやK-ABCでは継次処理と同時処理のどちらが優位かが分かる。漢字指導は優位な側(得意な処理様式)を活かす方法を選ぶ。

処理様式特徴合う指導法
同時処理優位情報を全体的・空間的にまとめて捉えるのが得意絵と漢字をマッチングさせて漢字全体の形を捉える漢字をパズルにして空間的に形を理解する
継次処理優位情報を順序立てて・言語的に段階を追って処理するのが得意ことばや番号を用いて書き順を意識させる漢字の部分に名前を付けて書き方を言語化する

設問は「認知発達特性に合わせた指導法として適切なのはどれか」の形で問われる。弱い側の処理様式に合わせた方法を選ばないのが要点で、同時処理優位の児に書き順の言語化や部分の命名(継次的な方法)を選ぶのは誤り。また「絵カードで漢字の意味を理解させる」は意味理解の支援であって、書字の認知特性に合わせた方法ではない点にも注意する。

読み書き障害児への学習上の配慮(小学校)

指導の基本は書字の負担を減らすこと手がかりを与えて学習を支えることの2本立て。

適切な配慮ねらい
板書の内容を事前にプリントで配布する書き写しの負担を減らす合理的配慮
タブレット端末を使う場面を増やす書字を補う代替手段の確保
キーワード法を用いてひらがな指導を行う手がかり(キーワード)で文字の形と音を結びつける
漢字は文脈の中で提示する意味のある文脈で示して定着を助ける

「書くときにはマス目に収まるよう指導する」は適切でない——書字に困難のある児に整った書字を求めるのは負担を増やすだけで、読み書きの力の改善につながらない。負担軽減と代替手段の確保が要点であり、書式の整えを厳しく求めない。

中学生以上の重度ディスレキシア

  • キーボード入力・ICT活用を優先
  • 英語学習は音声言語から開始
  • 黒板内容の撮影・読み上げソフトウェアの利用
  • 「分からない語彙を辞書で調べる」は優先順位が低い(読み書き自体が困難なため)

3-11 ADHD児の学校での配慮

適切:教師のそばに座席を設ける・宿題の問題数を少なくする・机には必要なものだけおく・スケジュール表を活用・注意は短く具体的にポイントを絞って与える

不適切:掲示物を増やす(→刺激過多)・後ろの席にする・不適切な行動をその都度繰り返し言い聞かせる・学級の係活動を制限する(→適切な役割を与えることが有効)・言語指示を詳細に行う(→簡潔な指示が有効)

支援計画の優先順位(学齢期・小学校高学年など)

  • 行動面の支援を基盤に据える——適応行動の形成・問題行動への対応が土台
  • 応用行動分析(ABA)の理論に基づいて支援法を計画する(行動の機能を分析し環境を調整する)
  • ソーシャルスキルの学習(SST)を取り入れる
  • できたことにほめことばを与える(正の強化で望ましい行動を増やす)
  • 同じ悩みをもつ親同士が話し合える場(ペアレントサポート)をつくる

「行動支援より学習支援を優先する」は誤り——順序が逆で、行動支援(ABA・正の強化・SST・環境調整)を基盤とし、学習支援はそれを土台に併用する。ABAに基づく計画・SSTの導入・称賛・親同士のピアサポートの場づくりはいずれも妥当な支援である。

3-12 その他の支援法

支援法対象・特徴
ソーシャルストーリー社会的状況を文章で説明し適切な行動を理解させる。構造化の一種
ポーテージプログラム家庭療育プログラム。知的障害・発達遅滞の早期療育に使用。ADHDへの指導法ではない
Hanen Programme(ハーネンプログラム)ASD等向けの早期言語発達支援プログラム(親主導)。リッカムプログラム(Lidcombe)と混同しないこと——リッカムは吃音の訓練法
ボバースアプローチ脳性麻痺などへの運動療法。ASDへの支援ではない
マカトン法知的能力障害向けAAC
ICT活用発達性読み書き障害

視覚障害(全盲)を伴う言語発達障害児への指導

理解語彙が数語しかない段階では、触覚・聴覚など残存感覚を活かした具体的な経験と、その経験の言語化による言語基盤づくりを優先する。

  • 操作すると音が出る玩具で遊ぶ——聴覚を活かし、操作と結果(因果関係)への気づきと能動的な関わりを促す
  • バスタオルを触らせて「お風呂だよ」と話しかける——具体物(触覚)+ことばかけで状況と語の意味を結びつける
  • 玩具のしまってある位置を一定にする——空間の手がかりを与え、見通しと自立的な探索を促す
  • 靴箱にフェルトのマークをつける——触覚的な目印で自分の場所を識別できるようにする

この段階で「点字の学習を行う」は適切でない——点字はあくまで文字であり、理解語彙が数語で言語・概念の基盤が未確立の段階では時期尚早。点字学習は文字習得段階に達してから行う。まず多感覚的な経験と言語発達の土台づくりを優先する。