第3章 指導・支援法
言語発達障害学 第3章|対応過去問 74問
3-1 応用行動分析(ABA)
基本の3項随伴性
先行条件(A)→ 行動(B)→ 結果(C)
| 概念 | 内容 |
| 強化 | 行動の後に好ましい結果を与えて行動頻度を増やす |
| プロンプト | ヒント・手がかりを与えること |
| シェーピング(行動形成) | 目標行動に近い行動を段階的に強化 |
| 先行条件の調整 | 要求が出やすい事物を用意するなど |
| モデリング | 手本を示すこと |
「手本を示す=モデリング」。モニタリング(自己の行動観察)とは異なる。「行動形式=シェービング」は誤り(シェーピング)。
3-2 TEACCHプログラム
ASD者の視覚的処理能力を活かした構造化による支援
| 構造化の種類 | 内容 |
| 物理的構造化 | 活動内容と場所を分ける |
| スケジュール化 | 見通しをもって行動できるよう提示 |
| ワークシステム | 何を・どれだけ・終わったらどうするかを明示 |
「大人が子どもの行動を静かに見守る」はTEACCHの原則ではない(インリアルの姿勢)。TEACCHはエリクソンではなく別の人物が開発。
3-3 PECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)
- 最も重点が置かれる目標:自発的なコミュニケーションの開始
- 相手に絵カードを手渡すことで要求を伝える
- プロンプトを活用
- ABAの原則に基づく
構文の形成・質問応答よりも、まず「自発的に要求を伝える」が目標。
3-4 インリアル・アプローチ(INREAL)
大人の基本姿勢(SOUL)
- S:Silence(静かに見守る)
- O:Observation(よく観察する)
- U:Understanding(深く理解する)
- L:Listening(耳を傾ける)
「Modeling(ことばのモデルを示す)」はSOULの基本姿勢ではない(言語心理学的技法)。
言語心理学的技法
| 技法 | 内容 |
| ミラリング | 子どもの行動をそのまままねる |
| モデリング | ことばのモデルを示す |
| 拡張模倣 | 子どもの発話に語を付け加えてフィードバック |
| リキャスト | 意味を変えずに文法的に正しい形に言い直す |
| スクリプト | 場面に合ったやりとりのパターン |
インリアルの特徴
- 指導場面を構造化しない(構造化はTEACCHの原則)
- 子どもと反応的に関わる・子どもの興味や遊びを観察する
インリアルは「行動療法」ではない。リハーサルはインリアルの技法ではない(SSTの技法)。
3-5 ソーシャルスキル・トレーニング(SST)
| 技法 | 内容 |
| 教示 | ルールや方法を説明・教える |
| モデリング | お手本を見せる |
| リハーサル | 練習・ロールプレイ |
| フィードバック | 練習結果を評価・修正 |
| 般化 | 習得したスキルを日常場面に応用 |
| アサーション | 自己主張の適切な表現 |
ミラリング・アイゲイズはSST技法ではない(インリアルの技法)。
3-6 マカトン法
- サインと話しことばを同時に使う(サインのみは使わない)
- 語彙数は限定的(1,000語以下)
- 導入する順番が決まっている(任意ではない)
- 文レベルの表現も可能(できないわけではない)
- 知的障害・言語障害のある人向けのAAC
3-7 AAC(拡大・代替コミュニケーション)
VOCA(音声出力コミュニケーション機器)の特徴
- 録音音声と合成音声がある
- 文章での伝達が可能・写真・文字での入力が可能
- 「注意を向けている人にだけ伝わる」わけではない(誰にでも伝わる)
- 道具が必要
AAC導入の考慮点
優先度が高い:記号の具象性・語彙の親密度・コミュニケーションエイドの携帯性・絵記号の大きさ
AACの学習プログラム原則
- 容易な記号を経由して目標とする記号を学習する(スモールステップを守る)
- 身近な・経験済みの語彙から選ぶ
- 初期導入では快の状況(要求)から始める
- 発信と受信は組み合わせる(受信だけを優先しない)
3-8 各発達段階の指導ポイント
前言語期
適切な指導:
- 物への注目・探索行動を促す
- 大人と子どもの因果関係(自分の行為→大人の反応)への気づき
- 見本合わせ課題(マッチング)を実施する・動作模倣を促す
- 身振りの理解と表現を促す・子供から人に働きかける自発性を育てる
前言語期に「音声を復唱させる」「絵カードによる呼称練習」「パターン的な遊びを正確に模倣させる」は不適切。
幼児前期(1〜3歳相当)
- 見立て遊びを促す・小集団で活動する場面を設定する
- 発話を模倣させる(音声模倣)
- 推論表現よりも基本的な語彙・やりとりが優先
幼児後期(3〜6歳相当)
- 子ども同士の協同遊びを促す
- 単語を分解する課題(音韻意識)を取り入れる
- 集団活動のルールが身につくようにする・写真を見ながら自己経験を語る
「会話で相手によって伝え方を調整できる」のは学齢期以降の課題。幼児後期には難しい。
知的障害児への言語指導の原則
- 全体発達重視(言語表出だけを重視しない)
- 細かいステップ重視・親(養育者)への支援重視・個別指導を重視
- 言語理解より言語表出を重視しない(理解が基盤)
重度知的障害・ASD児への構文指導
- 語連鎖(2語文)開始の目安:理解語彙50語を超えたころ(30語は誤り)
- 助詞の誤用は2〜3語文期には許容
- 「可逆文」より「非可逆文」から指導(可逆文のほうが難しい)
- 実物やミニチュアを操作して文の意味を示す・動詞語彙を拡大する
初期語彙指導で考慮するもの
- 使用頻度が高い語・興味・関心がある語
- 対応する身振りがある語・定形発達児の獲得順序が早い語
「構音可能な音を含む語」は初期語彙指導では考慮不要。語彙理解は音声表出より先に発達する。
3-9 自閉症スペクトラム障害への指導
適切な指導原則
- 「〜してはいけない」ではなく「〜しなさい」と教える(肯定的な指示)
- 「ちょっと待って」ではなく「〜時まで待って」と伝える(具体的な時間)
- 行先を写真や文字で知らせる・予定の変更は事前に知らせる
- 社会的ルールを視覚的に教える・自己効力感の向上を図る
- 見通しを持てるようにスケジュールを視覚的に示す
- 要求などを出しやすい機会を設定する
- 困ったときに援助を求める方法を場面を設定して具体的に教える
- 遊びに参加したくないときの適切な断り方をロールプレイで教える
「相手の気持ちになってみて」「周囲の人の気持ちを考えるように言い聞かす」は不適切。「集団で同一のプログラムを設定する」は不適切(個別対応が基本)。「勝ち負けへのこだわりを利用して学習を進める」は不適切。
ASDへの支援方法:ABA・PECS・AAC・SST・INREALは適切。ボバースアプローチ(運動療法)・DAF(遅延聴覚フィードバック)は適切でない。
3-10 発達性読み書き障害の指導
仮名文字の指導(小学生)
- 音韻意識を高める
- 書く指導より読む指導から始める
- 読みの速さの指導も行う・語彙の指導も行う
- トレースや模写の繰り返しだけでは不十分
中学生以上の重度ディスレキシア
- キーボード入力・ICT活用を優先
- 英語学習は音声言語から開始
- 黒板内容の撮影・読み上げソフトウェアの利用
- 「分からない語彙を辞書で調べる」は優先順位が低い(読み書き自体が困難なため)
3-11 ADHD児の学校での配慮
適切:教師のそばに座席を設ける・宿題の問題数を少なくする・机には必要なものだけおく・スケジュール表を活用・注意は短く具体的にポイントを絞って与える
不適切:掲示物を増やす(→刺激過多)・後ろの席にする・不適切な行動をその都度繰り返し言い聞かせる・学級の係活動を制限する(→適切な役割を与えることが有効)・言語指示を詳細に行う(→簡潔な指示が有効)
3-12 その他の支援法
| 支援法 | 対象・特徴 |
| ソーシャルストーリー | 社会的状況を文章で説明し適切な行動を理解させる。構造化の一種 |
| ポーテージプログラム | 家庭療育プログラム。知的障害・発達遅滞の早期療育に使用。ADHDへの指導法ではない |
| Hanen Programme(ハーネンプログラム) | ASD等向けの早期言語発達支援プログラム(親主導)。リッカムプログラム(Lidcombe)と混同しないこと——リッカムは吃音の訓練法 |
| ボバースアプローチ | 脳性麻痺などへの運動療法。ASDへの支援ではない |
| マカトン法 | 知的能力障害向けAAC |
| ICT活用 | 発達性読み書き障害 |