第1章|神経心理学の基礎概念

対応過去問 17問 / 難易度 ★★★☆☆

大脳機能の側性化(半球優位性)

側性化の強さ

側性化が最も強い機能は言語(左半球優位)

  • 言語理解・言語表出:左半球が強く優位
  • 行為(失行):左半球優位だが言語よりやや弱い
  • 相貌認知・視空間認知:右半球優位
  • 地誌的見当識:右半球優位
  • 遂行機能は側性化が最も不明瞭(左右差が小さい)

遂行機能の側性化が明らかでないは繰り返し出題。言語・相貌認知・視空間認知は明確な側性化あり。

大脳機能の局在に関する基本原則

  • 利き手は側性化に関連する(右利きの大多数は左半球言語優位)
  • 視空間機能には局在がある
  • 病巣と症状は一対一対応しない(同じ部位でも症状は多様)
  • 脳損傷後も機能局在は変化しうる(可塑性)
  • 高次脳機能障害は白質病巣でも生じる

神経心理学の原理

原理内容
離断の原理脳の異なる部位間の連絡が切断されることで症状が生じる
二重乖離の原理機能AはあるがBはない症例と、BはあるがAはない症例が存在することで、AとBが独立した機能・部位に対応することを示す
ジャクソンの原理意図的・随意的な行為と自動的・反射的な行為の乖離
ボトムアップ処理データ(感覚入力)から出発する処理(データ駆動型)
トップダウン処理予測・知識・文脈に基づく処理(スキーマ駆動型)

離断の原理=意図性と自動性の乖離は誤り。離断の原理は神経経路の切断による症状の説明原理であり、意図性と自動性の乖離はジャクソンの原理。

脳の局在・病変部位と症状

頭頂葉の症状

左頭頂葉(優位半球):観念運動性失行・観念性失行・手指失認・左右識別障害(ゲルストマン症候群)・失算・失書・言語性短期記憶障害

右頭頂葉(劣位半球):着衣失行・構成障害・半側空間無視・病態失認

相貌失認の責任病巣は紡錘状回(側頭・後頭葉)。頭頂葉の症状ではない。

前頭葉の症状

前頭葉全般:遂行機能障害・発動性低下・無言症

前頭葉内側面:把握反射(本能性把握反応)・模倣行動・接近行為(利用行動)

道具の強迫的使用は前頭葉(内側・補足運動野近傍)の病変。頭頂葉ではない。

前大脳動脈領域梗塞の症状

無言症・本能性把握反応・道具の強迫的使用・超皮質性運動失語

着衣失行は前大脳動脈梗塞では生じない(右頭頂葉・後頭葉病変)。

中大脳動脈領域梗塞の症状

手指失認・半側身体失認・失語・半側空間無視

頭頂後頭葉(両側)の症状 ― バリント症候群

責任病巣:両側頭頂後頭葉 3徴:視覚性注意障害・視覚性運動失調・眼球運動失行

脳梁の解剖と離断症状

脳梁の部位障害で生じる症状
脳梁膨大部左視野の失読(右半球視覚野→左半球言語野への連絡遮断)
脳梁全体(前部〜体部)左手の失行・左手の失書・左手の触覚性呼称障害
脳梁後部(膨大後域)海馬との連絡に関与(エピソード記憶と関連)

脳梁損傷で生じる触覚性呼称障害は左手。右手ではない。

純粋失書の責任病巣

純粋失書:左中前頭回後部(書字中枢)

前脳基底部・側頭葉前部・海馬傍回

  • 前脳基底部:健忘症候群の責任病巣(コリン作動性ニューロン);損傷による健忘では作話を伴うことがある
  • 意味記憶の障害と関連が深い部位:側頭葉前部
  • 海馬傍回の損傷:街並失認(場所・風景の再認障害)

脳内ネットワーク

  • 前頭前野ネットワーク:遂行機能に関係
  • 言語ネットワーク:線条体を含む(皮質下も参加)
  • 背側頭頂前頭ネットワーク:空間性注意に関係
  • 腹側後頭側頭ネットワーク:物体認知に関係(損傷→物体失認)
  • 交連線維の損傷 → 半球間離断症状(半球内離断ではない)