第2章|言語聴覚士法② 業務・診療の補助・名称独占・連携・守秘義務

対応過去問 10問/難易度 ★★★☆☆
この章のねらい:ここは「STは何ができ、何が“独占”ではないのか」「どんな行為に医師・歯科医師の指示が要るのか」「秘密はいつまで守るのか」という、臨床の毎日そのものです。国試では診療の補助(指示の下)・名称独占(業務独占ではない)・守秘義務(退職後も継続)が、「業務でないのはどれか」「誤っているのはどれか」で繰り返し問われます。業務範囲は言語聴覚障害総論ノートとも重なり、各障害領域の検査・訓練の詳細は失語症・構音・聴覚など各論ノートにつながります。

2-1 言語聴覚士の業務範囲(言語モダリティ)

言語聴覚士の本来業務は、音声機能・言語機能・聴覚に障害のある者に対する言語訓練その他の訓練・検査・助言・指導その他の援助です。言語のはたらきは聴く・話す・読む・書くの各モダリティに分かれ、それぞれ処理の回路が異なります。

言語モダリティ処理の要点
発話意味を音声言語化し、発声発語器官で出力する(音韻→構音のプログラミング)
復唱聴覚入力→音韻を保持し出力(読解の回路は含まない
音読文字入力→音声出力(聴覚的理解の回路は含まない
書取(ディクテーション)聴覚入力→書字出力(読解の回路は含まない
写字文字を写す(復唱の回路は含まない
核心:「◯◯の回路は△△を含む」という言い回しは、入力と出力のモダリティが違えば別回路と考えると解ける。正しいのは「発話は意味を音声言語化し発声発語器官で出力する」。言語モダリティの詳細は総論ノート・失語症ノートで扱う。

2-2 診療の補助 ― 医師・歯科医師の指示の下

言語聴覚士は、保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、診療の補助として、医師または歯科医師の指示の下に、一定の行為を業として行うことができます(第42条)。何が診療の補助業務に含まれ、何が含まれないかが頻出です。

診療の補助に含まれる(○)含まれない(×)
機器を用いる一定の聴力検査生命維持装置の操作
画像診断組織病理学的検査
(=医師・臨床検査技師等の領域。検査結果の「診断」も医師
聴性脳幹反応検査(ABR)
耳型の採型(採取)
音声機能・言語機能に係る検査/人工内耳の調整
嚥下訓練/補聴器装用訓練

頻出のひっかけ:
・「診療の補助について誤っているのはどれか」→生命維持装置の操作(言語聴覚士の業務ではない)。
・「言語聴覚士法による業務でないのはどれか」→画像診断・組織病理学的検査(人工内耳の調整・ABR・嚥下訓練は業務)。
人工内耳の調整は診療の補助業務として明文で規定されている(=医師・歯科医師の指示の下に行う)。

2-3 名称独占(業務独占ではない)

言語聴覚士は名称独占資格です。言語聴覚士でない者は「言語聴覚士」またはこれに紛らわしい名称を使ってはなりません(第45条)。一方で、「言語訓練」そのものを言語聴覚士だけが行える業務独占ではありません――ここが最頻出の区別です。

言語聴覚士について正しい(○)誤り(×=ひっかけ)
名称独占である(業務独占ではない)言語聴覚士の業務は独占業務である
守秘義務がある/医療関係者との連携が必要検査結果の診断の権限がある(診断は医師)
相対的欠格事由がある免許の取消は都道府県知事(→正しくは厚生労働大臣)

「言語聴覚士法について誤っているのはどれか」の定番:
「都道府県知事は免許を取り消すことができる」=誤り(取消は厚生労働大臣)。
「専門職としての資質向上義務規定がある」=誤りとして問われることがある(言語聴覚士法には保助看法のような資質向上の努力義務の明文規定がない、という扱い)。
・一方で名称独占・守秘義務違反の罰則(50万円以下の罰金)・人工内耳の調整=診療の補助は、いずれも正しい記述。

2-4 主治医の指導と多職種・教育連携

言語聴覚士は、業務を行うにあたり医師・歯科医師その他の医療関係者との緊密な連携を図り、適正な医療の確保に努めなければなりません。対象者に主治の医師・歯科医師があるときは、その指導を受けなければならないのが原則です。

正しい対応(○)不適切な対応(×)
人工内耳の調整は医師または歯科医師の指示の下に行う嚥下機能に障害のある者に主治医がいなくても単独で嚥下訓練を行う
主治医があるときはその指導を受ける/福祉関係者とも連携を保つ主治医の指導・連携を欠いたまま独断で進める

教育との連携(学齢児のST)

就学・在学中の子どもに関わるときは、保護者の同意・情報管理が前提です。

  • ◯ 保護者からの依頼で、担当児の学校に報告書を送る/担任と保護者と三者で話し合う/教育委員会の依頼で巡回相談をする。
  • ☓ 就学支援委員会で知り得た内容をそのまま保護者に伝える(委員会の情報管理・守秘に反する)/ST自身の判断で保護者の同意なく担任に電話連絡する。
核心:連携の可否は「保護者(本人)の依頼・同意があるか」「守秘の範囲を超えないか」で判断する。良かれと思っても、本人の同意なく情報を第三者に流すのは不適切

2-5 守秘義務(退職後も継続)と罰則

言語聴覚士は、正当な理由がなく、業務上知り得た人の秘密を漏らしてはなりません(第44条)。この義務は言語聴覚士でなくなった後(退職後・資格喪失後)も継続します。

守秘義務について正しい(○)誤り(×=ひっかけ)
資格がなくなっても守秘義務は続く資格がなくなれば守秘義務は課せられない
正当な理由があれば漏らしても違反にならないいかなる場合も一切漏らせない
違反は罰金(50万円以下)に処せられる罰則はない
親告罪(告訴がなければ公訴を提起できない)告訴なしでも起訴できる
職務上の重要事項:言語聴覚士法に規定されている職務上の重要事項として、守秘義務多職種連携(他の医療関係者との連携)が問われる。善行原則・正義原則・インフォームド・コンセントは倫理の原則ではあるが、この文脈で法に明記される重要事項としては守秘義務・連携が答えになる。

2-6 職業倫理(日本言語聴覚士協会 倫理綱領)

専門職としての行動指針が倫理綱領です。日本言語聴覚士協会の倫理綱領(2012年)は、次のような柱で構成されます。「内容に含まれないのはどれか」で問われます。

倫理綱領に含まれる(○)含まれない(×)
言語聴覚士の職務および専門性言語聴覚士の「研究」(研究倫理そのものは別の指針。倫理綱領の柱としては挙がらない)
言語聴覚士と社会との関係
関連職種・関係者との協力
訓練・指導・援助を受ける人々への接し方
つながる知識:言語聴覚士法(第1〜2章)を固めたら、第3章医療法・医療提供施設・他の国家資格の根拠法へ広げます。臨床で連携する看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士などが「どの法律を根拠にする資格か」を対比できると、組合せ問題に強くなります。職業倫理・多職種連携の全体像は言語聴覚障害総論ノートとつながります。