第4章|声道音響学とホルマント
過去問 27問 / 難易度 ★★★★★
4-1 ソース・フィルタモデル 過去問 8問
3要素
音源(ソース) → 声道(フィルタ) → 放射
| 要素 | 内容 |
|---|
| 音源(ソース) | 声帯振動(有声音)、乱流(摩擦音)、破裂(破裂音) |
| 声道(フィルタ) | 特定の倍音を強める・弱める。ホルマントを形成 |
| 放射 | 口唇・鼻腔からの放射特性 |
声道フィルタの役割
- 特定の倍音を強める・弱める
- 倍音を加えたり除いたりはしない
- 倍音の周波数を変えるのではなく、強度を変える
「放射特性の違いが母音の違いを決める」は誤り → 声道形状の違いが母音の違いを決める。「声道伝達特性の谷をホルマントという」は誤り → ホルマントは「山(ピーク)」。「ソース・フィルタモデルのソースとは気流のこと」は誤り → 気流(声門体積流)から生じる音源波形のこと。
声道の音響管モデル
- 声道の平均長:成人男性 約17cm、成人女性 約14cm
- 片端閉・片端開の音響管のモデル
- 共鳴周波数(ホルマント):
fn = (2n-1) × c / (4L) n = 1, 2, 3, ...
- 例)L=17cm、c=340m/s → F1 = 340/(4×0.17) = 500Hz、F2 = 1500Hz、F3 = 2500Hz
- 例)L=17cm、片端閉管 → 共鳴周波数 = 500, 1500, 2500Hz
声道形状とホルマント
- ホルマント周波数は声道形状(舌・唇・下顎の位置)によって決まる
- 声帯の緊張度はホルマントと無関係(基本周波数に関係)
- 口唇をすぼめると → 声道が長くなるのと等価 → ホルマント周波数が低下
「声帯の緊張はホルマントに関連する」は誤り → 声帯の緊張は基本周波数(ピッチ)に関係。
4-2 母音のホルマント 過去問 8問
5母音のホルマント特性
| 母音 | F1(第1フォルマント) | F2(第2フォルマント) |
|---|
| /a/ ア | 最高(広母音) | 中程度 |
| /i/ イ | 低い | 最高(前舌) |
| /u/ ウ | 低い | 低い(後舌・唇丸め) |
| /e/ エ | 中程度 | 高い(前舌) |
| /o/ オ | 中程度 | 低い(後舌・唇丸め) |
重要なホルマント関係
- /a/のF1が最高(広母音 → 口腔を広く開く → F1上昇)
- /i/と/u/ではF2に大きな差(前舌vs後舌)
- /u/のF2は/i/より低い(後舌母音のため)
- /e/のF1は/i/より高い
- /o/のF2は/e/より低い
- /a/に比べて/i/ではF1とF2が離れる(F1低下・F2上昇)
- 前舌母音ではF2が高い、後舌母音ではF2が低い
- 広母音ではF1が高い、狭母音ではF1が低い
- /ə/(中舌中位)に比べて:前舌母音はF2高い、広母音はF1高い
「/a/に比べて/i/ではF1とF2の周波数が近づく」は誤り → 逆に離れる(F1が下がりF2が上がる)。「/u/の第2フォルマント周波数が/i/より高い」は誤り → /i/の方が高い。
4-3 声帯振動と音源波形 過去問 7問
声帯振動のメカニズム
声帯振動の順序:
- 声帯の下唇(下端)から開き始める
- 声帯の上唇から閉じ始める
- 声門体積速度波形は滑らかに立ち上がる(開放時はゆっくり)
- 声門閉鎖に伴って急激に0になる(閉鎖は速い)
- 声門が閉じる時間が短くなると → 声門開放率は増加する(開放時間の割合が増える)
「声帯の下唇から閉じ始める」は誤り → 上唇から閉じ始める(下唇から開く、上唇から閉じる)。「声門体積速度波形は急激に立ち上がる」は誤り → 滑らかに立ち上がる。「声門開放率 = 声門が閉じている時間の割合」ではなく、開放している時間の割合。
声門音源波形のスペクトル特性
- 男性地声発声の声門音源スペクトル:約−12dB/oct(高域ほど弱い)
- 周期的声門体積流波形は時間軸上で非対称(上昇より下降の方が急峻)
「声帯音源波のパワースペクトルの傾きは高域に行くにつれ右上がり」は誤り → 右下がり(−12dB/oct)。
声の高さとF0
- 声帯振動数(基本周波数 F0)が声の高さを決める
- 声帯が速く振動するほど基本周波数が高くなる(声が高くなる)
- フォルマント周波数は声の高さとは独立(声道形状で決まる)
4-4 アンチホルマント(アンチフォルマント) 過去問 4問
- アンチホルマントは反共鳴(共鳴の逆)による谷(ディップ)
- 関連する音波の性質:反射・干渉・共鳴・反共鳴
- 回折はアンチホルマントと無関係
- アンチホルマントが生じる場合:
- 鼻音化(口腔と鼻腔が結合)
- 側音 /l/
- 鼻音 /m/, /n/, /ŋ/
鼻音のスペクトル特性
- アンチホルマントが存在する → ✅
- 鼻音ホルマントが存在する → ✅
- 口腔の共鳴特性が関与する → ✅(口腔は閉鎖されるが共鳴に関与)
- 音源は声門だけでなく、鼻腔内にも生じる(摩擦などの側音)
- 鼻腔と口唇・鼻孔から音波が放射される
「鼻音の音源は声門だけに存在する」は誤り。「鼻腔と口唇からの音声波が放射される」については、鼻音では鼻孔から主に放射される。
母音の鼻音化
- 軟口蓋が下がる → 口腔と鼻腔が音響的に結合
- スペクトルにアンチホルマントが現れる
- スペクトルに新たなピーク(鼻音ホルマント)が現れる
- ホルマントの帯域幅に影響が出る
- 口腔からの放射がなくなるわけではない(口腔が完全閉鎖されない限り)
「鼻音化すると口腔からの放射はない」は誤り → 軟口蓋が下がっても口腔が完全閉鎖されなければ口腔からも放射される。