第5章|音声のピッチと調音音響
過去問 17問 / 難易度 ★★★☆☆
5-1 基本周波数曲線(ピッチ曲線) 過去問 6問
ピッチ曲線の途切れ
ピッチ曲線が途切れる区間 = 声帯振動がない区間(無声区間・無音区間)
無声区間が生じる音:
- 無声子音(/k/, /s/, /t/, /p/, /h/など)
- 閉鎖音の閉鎖区間
- 無音区間(ポーズ)
計算問題の例:
- 「にっしんげっぽ(日進月歩)」/ni.ss.shi.n.ge.ppp.po/
- 促音「っ」→ /sh/ の無声閉鎖、/p/ の無声閉鎖 → 途切れ箇所 = 2
- 「言ったと思ったんだけどな」(い.っ.た.と.お.も.っ.た.ん.だ.け.ど.な)
- 「っ(た)」= 無声閉鎖 /t/ × 2回 → 「けど」の/k/ → 途切れ = 4箇所
ピッチ曲線に反映されるもの
- 反映される:
- 声帯振動の有無
- アクセントの型(ピッチアクセント)
- 統語構造(句末下降など)
- 焦点(強調)
「声道の共鳴がピッチ曲線に反映される」は誤り → ホルマントはスペクトル(周波数軸)に現れる。ピッチ曲線はF0の時間変化。
5-2 音節・モーラと音響特徴 過去問 7問
促音の音響特徴
- 促音「っ」:閉鎖区間の持続が延長される
- 「マッチ」の「っ」→ 後続の/ch/(破擦音)の閉鎖区間が持続される
「促音は摩擦区間の持続」は誤り → 閉鎖音の前の促音は閉鎖区間の持続。「促音は母音の無声化」「口蓋化」「鼻音化」も誤り。
「なく(泣く)」の音響区間
| 区間 | 音響特性 |
|---|
| /n/の鼻音区間 | ホルマントあり(鼻音ホルマント) |
| /a/の母音区間 | ホルマントあり |
| /k/の閉鎖区間 | ホルマントなし(無音・閉鎖) |
| /k/の破裂区間 | 広帯域の雑音的な成分 |
| /u/の母音区間 | ホルマントあり |
「ぱ・た・か」の識別
識別に寄与する主な音響特徴:
- 破裂区間の振幅スペクトル(調音位置によりエネルギーの集中帯域が異なる)
- 後続母音へのホルマント周波数遷移(F2のロカスが異なる)
「無音区間の長さ」や「破裂区間の平均的強さ」は調音位置の識別には主要でない。「母音のラウドネス」は無関係。
子音の音響特徴
| 子音 | 特徴 |
|---|
| 無声歯茎摩擦音 /s/ | 4kHz以上に強い成分 |
| /sh/ 歯茎硬口蓋摩擦音 | 高周波数成分(4kHz未満にも成分) |
| 鼻音 /m/, /n/ | 低周波領域の強い周期性(鼻音マーマー) |
| 接近音 /j/, /r/ | フォルマントのゆっくりとした遷移 |
| はじき音 /ɾ/ | 持続時間は100msより短い(瞬間的) |
| /s/ vs /z/ の違い | 無声区間(無声子音)の有無ではなく線スペクトル構造の有無が区別点(どちらも摩擦あり) |
「はじき音の持続時間は100msより長い」は誤り → 非常に短い(15〜40ms程度)。「/s/と/z/の違いは無声区間の有無」は誤り → /s/は無声摩擦、/z/は有声摩擦。どちらも摩擦区間がある。違いは線スペクトル構造(有声音の調波成分)の有無。
VOT(Voice Onset Time)
- 定義:破裂の時刻から声帯振動開始時刻までの時間
- 有声閉鎖音(/b/, /d/, /g/):VOTが短い(または負のVOT)
- 無声閉鎖音(/p/, /t/, /k/):VOTが長い
- 「か」の部分に負のVOT」は誤り → /ka/は無声 → 正のVOT(または0)
5-3 音響管の共鳴計算 過去問 4問
片端閉・片端開管(声道モデル)
共鳴周波数 fn = (2n-1) × c / (4L)
n = 1, 2, 3, ...(奇数倍のみ)
- L = 管の長さ、c = 音速
- 例)L=17cm = 0.17m、c=340m/s
- F1 = 340 / (4 × 0.17) = 500Hz
- F2 = 1500Hz
- F3 = 2500Hz
両端開管
共鳴周波数 fn = n × c / (2L)
n = 1, 2, 3, ...(すべての整数倍)
実際の計算例
L=17cm(片端閉)の場合:
- c=340m/s → F1=500Hz、F2=1500Hz、F3=2500Hz