第5章|母音の無声化・その他の音声現象

対応過去問 約20問/難易度 ★★★☆☆

5-1 母音の無声化

無声化の条件(共通語)

母音「イ」「ウ」が以下の環境で無声化しやすい:

  1. 無声子音に挟まれた環境(前後が無声子音)
  2. 特に「イ」と「ウ」が対象
  3. 後続子音が無声破裂音・無声摩擦音のとき
鼻音の前では無声化が起こりにくい。(第23回正答:b,c)

具体的な無声化例

無声化しやすい例
  • 「景色(けしき)」:「し」→[ɕi]の[i]が[ɕ]の後・次が無声[k]
  • 「ふき」の「ふ」:無声[ɸ]の後・次も無声[k]
  • 「あきた」:「き」→[i]が[k]と[t](無声)に挟まれる
  • 「いしかわ」:「し」→[i]が[ɕ]と[k](無声)の間
無声化しにくい例
  • 「ぶき」の「ぶ」:有声[b]の後 → 無声化しにくい
第18回問39正答(b,c):「あきた」「いしかわ」の2モーラ目が無声化しやすい。

5-2 鼻濁音

鼻濁音とは

語中のガ行音が[ŋ](軟口蓋鼻音)として発音される現象。

鼻濁音になる環境
  • 語中(語頭以外)の「が行」
  • 複合語の後部要素語頭も鼻濁音になる
鼻濁音になる例
  • 「入道雲(にゅうどうぐも)」:「ぐ」→語中 ✓(第20回問137正答)
鼻濁音にならない例
  • 語頭の「が行」
  • 外来語・数詞の「が行」

5-3 音声の逆再生

音声を逆再生すると個々の音の前後が逆になる。

「あめだま(飴玉)」[ameɾama] を逆再生 → [amaɾema] ≈「あまでま」(第24回正答:4)

5-4 パラトグラフィ

舌と口蓋の接触パターンを記録する装置・手法。

識別できる音の対:「ナ」―「ニ」([n]と[ɲ]で接触位置が異なる)。(第17回正答:1)

5-5 方言と音声

方言に関する正しい記述(第25回正答:a,e)
  • どの方言にも母音と子音が存在する
  • アクセントのない方言(無アクセント方言)も存在する
誤りの記述
  • 平均的な母音の分布は方言によって同じ → 誤り(異なる)
  • 母音の無声化の頻度は方言によって同じ → 誤り(異なる)

5-6 語形成と音変化

連濁・連声

  • 連濁:複合語の後部要素の語頭が有声音になる
  • 連声:前部要素末の撥音・促音が後部要素先頭に影響
「落ち葉(おちば)」の音変化(第28回)

/h/ → [b](「は」→「ば」)

  • 構音位置:声門 → 両唇 に変化
  • 構音様式:摩擦音 → 破裂音 に変化

構音位置と構音様式の両方が変化

5-7 撥音と促音の共通点

特徴撥音(/N/)促音(/Q/)
自立拍
逆行同化
音節末に現れる
無声化××
鼻音化必ず×
第28回正答(c,d,e):撥音と促音に共通するのは「自立拍・逆行同化・音節末に現れる」。

5-8 男声と女声の比較

特徴男声 vs 女声
基本周波数(F0)男声が低い
フォルマント周波数男声が低い
調波成分の間隔男声が広い(F0が低いため)
「男声の調波成分の間隔が狭い」は誤り。F0が低い=周期が長い=調波間隔が広い。

確認問題

Q1. 母音の無声化が起こりやすい環境はどれか。①有声子音に挟まれた環境 ②鼻音の前 ③無声子音に挟まれた環境 ④語頭

Q2. 鼻濁音[ŋ]が現れる環境はどれか。①語頭のが行 ②語中のが行 ③外来語のが行 ④数詞のが行

Q3. パラトグラフィで識別できる音の対はどれか。①ハ―パ ②ナ―ニ ③ア―イ ④マ―ナ

Q4. 方言に関して正しいのはどれか。①どの方言も同じ母音分布をもつ ②すべての方言にアクセントがある ③どの方言にも母音と子音が存在する ④無アクセント方言は存在しない

Q5. 男声と女声の比較として正しいのはどれか。①男声のF0は女声より高い ②男声の調波成分の間隔は女声より狭い ③男声のフォルマント周波数は女声より低い ④男声の音圧は女声より小さい

解答:Q1=③ Q2=② Q3=② Q4=③ Q5=③

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