📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:形成外科でST国試に一番出るのが
口唇裂・口蓋裂です。ここは
「基礎医学のなかで最もST臨床に直結するテーマ」——口蓋裂は
鼻咽腔閉鎖機能不全→開鼻声・異常構音で
器質性構音障害そのものであり、
耳管機能不全→滲出性中耳炎→伝音難聴で
聴覚障害、
哺乳障害で
摂食嚥下、そして
言語発達にも影響します。この章では
①発生と分類 ②口唇裂の術式と口輪筋 ③口蓋裂の術式と鼻咽腔閉鎖機能 ④粘膜下口蓋裂・ピエール・ロバン ⑤治療時期・補綴・構音評価を、過去問の頻出ポイントに絞って整理します。
1-1 口唇裂・口蓋裂の発生頻度と顔面の発生
まずは頻度の人種差と顔面の発生学から。ここは「どの突起が癒合するか」「日本人は多いか少ないか」がそのまま問われます。
発生頻度と人種差
頻度の人種順位:口唇口蓋裂の発生頻度には人種差があり、アジア人(日本人)>白色人種>黒色人種の順に高い。日本人ではおよそ出生500人に1人(1000人に1人ではない)。「日本人は黒色人種より高い/白色人種より高い」が正しい。
性差のひっかけ:「性差はない」は誤り。口唇裂(口唇口蓋裂を含む)は男児に多く、口蓋裂単独は女児に多い。裂型別に性差の向きが逆になる点が問われる。
顔面の発生と裂の成り立ち
上唇は正中を内側鼻突起、外側を左右の上顎突起がつくり、両者が癒合して完成します。この癒合不全=口唇裂。二次口蓋(硬口蓋の大部分〜軟口蓋)は左右の外側口蓋突起(口蓋突起)が正中で癒合してでき、この癒合不全が口蓋裂です。
| 突起 | つくる構造 |
| 内側鼻突起 | 上唇正中(人中)・一次口蓋・上顎正中部 |
| 上顎突起 | 上唇外側部・上顎・二次口蓋の一部 |
| 外側鼻突起 | 鼻翼(小鼻) |
| 外側口蓋突起 | 二次口蓋(左右癒合) |
| 下顎突起 | 下唇・下顎 |
「上唇の形成に関与する突起を選べ」:正答は内側鼻突起+上顎突起。外側鼻突起(鼻翼)・外側口蓋突起(二次口蓋)・下顎突起(下唇)は上唇形成に関与しないので混同しない。
1-2 口唇裂の手術と口輪筋
口唇裂手術の要点は「皮膚の縫合だけでなく、分断された口輪筋の連続性を再建する」こと。術式名が口唇裂用か口蓋裂用かの仕分けが頻出です。
口唇裂の術式
| 口唇裂の術式 | 特徴 |
| ミラード(Millard)法 | 回転伸展法(rotation-advancement)。口唇裂の代表術式 |
| 三角弁法(テニソン・ランディ法) | 三角弁を用いる口唇形成 |
| 四角弁法 | 四角弁を用いる口唇形成 |
| マリケン(Mulliken)法/マンチェスター法 | いずれも口唇形成術 |
| アッベ(Abbe)法 | 上唇の組織欠損を下唇弁で再建 |
頻出のひっかけ(術式の仕分け):「口唇裂の術式でないもの」として問われる代表がファーロー法・プッシュバック法——これらは口蓋裂(軟口蓋の延長)の術式。口唇裂=ミラード・三角弁・四角弁・マリケン、口蓋裂=プッシュバック・ファーローと部位で分ける。
口輪筋の再建
裂で連続性が絶たれる筋=口輪筋:未手術の口唇裂では、口唇を輪状に取り囲む口輪筋が裂で左右に分断され連続性を失う。広頚筋・口角下制筋・鼻筋・笑筋は主たる断裂筋ではない。口唇形成術で再建する筋=口輪筋(眼輪筋・口蓋帆挙筋ではない)。
唇裂と口蓋裂で異常になる筋の対比:片側唇顎口蓋裂で正常と異なる構造になるのは口輪筋(唇裂による分断)と口蓋帆挙筋(口蓋裂で正中の連続が失われ付着異常)。「口唇=口輪筋」「口蓋=口蓋帆挙筋」を対で覚える。
1-3 口蓋裂の手術と鼻咽腔閉鎖機能
口蓋裂手術のゴールは鼻咽腔閉鎖機能の獲得=発話時に鼻咽腔をしっかり閉じ、開鼻声や鼻漏出を防ぐことです。ここがSTの構音との接点です。
口蓋形成術と鼻咽腔閉鎖不全への術式
| 術式 | 内容・目的 |
| プッシュバック(push back)法 | 軟口蓋を後方へ移動して延長する口蓋形成 |
| ファーロー(Furlow)法 | 口腔側と鼻腔側に相対する二重Z形成(ダブルオポージングZ)で軟口蓋を延長+口蓋帆挙筋を再配置 |
| 咽頭弁形成術 | 咽頭後壁の粘膜弁を軟口蓋に縫合し、鼻咽腔の隙間を狭めて閉鎖を補う(鼻咽腔閉鎖不全の代表術式) |
| 二弁法など | 口蓋粘膜骨膜弁で裂を閉鎖 |
「Z形成で軟口蓋を延長する術式」=ファーロー法:軟口蓋の口腔側と鼻腔側に互い違いのZ形成を施して延長する。プッシュバック法は後方移動でありZ形成ではない点が鑑別。ファーロー法では口蓋帆挙筋の再配置が閉鎖機能改善の鍵。
「鼻咽腔閉鎖不全に対する術式を選べ」:正答は咽頭弁形成術・ファーロー法。四角弁法・ミラード法・マリケン法(=口唇裂の術式)を選ばせるひっかけが定番。口唇裂用の術式は鼻咽腔閉鎖不全には用いない。
ST接続:口蓋帆挙筋の付着異常や短い軟口蓋は、そのまま
鼻咽腔閉鎖機能不全→開鼻声・鼻漏出・声門破裂音などの異常構音を生みます。ここは
器質性構音障害の中心テーマで、術後の構音獲得をSTが担います。手術で解剖を整え、STが機能を引き出す——役割分担を意識すると流れが見えます。
1-4 粘膜下口蓋裂とピエール・ロバン連鎖
見た目に裂がなくても機能障害を起こす粘膜下口蓋裂と、口蓋裂を伴う代表的な連鎖ピエール・ロバンは頻出です。
粘膜下口蓋裂の三徴
粘膜下口蓋裂の三徴:粘膜は連続しているが筋層が正中で離開している病態。三徴は①口蓋垂裂(二分口蓋垂) ②軟口蓋正中部の菲薄化(青白帯=zona pellucida) ③硬口蓋後端の骨欠損(後鼻棘の欠損を触知)。口蓋帆挙筋の走行異常を伴い、鼻咽腔閉鎖不全→開鼻声を生じうる。
粘膜下口蓋裂に特徴的でないもの=扁桃肥大:扁桃肥大は粘膜下口蓋裂とは無関係。三徴(口蓋垂裂・青白帯・骨欠損)と口蓋帆挙筋走行異常を「特徴」として押さえ、扁桃肥大を選べるようにする。
ピエール・ロバン連鎖
ピエール・ロバン連鎖の三徴:①小下顎症 ②舌根沈下 ③口蓋裂(しばしばU字型)。下顎が小さいために舌が後方へ落ち込み(舌根沈下)、上気道閉塞・哺乳障害をきたす。呼吸困難の原因は「上顎」ではなく下顎が小さい(小下顎)こと。
ピエール・ロバンのひっかけ:含まれないのは巨口症・下眼瞼欠損・顔面神経麻痺。下眼瞼の部分欠損(コロボーマ)はトリーチャー・コリンズ症候群の所見。「上顎が小さい」も誤り(正しくは下顎)。症候群ごとの主徴は第3章で整理する。
1-5 口蓋裂の治療計画・補綴・構音評価と経過観察
口蓋裂は段階的な治療と長期の経過観察が必要です。時期・装置・観察項目がまとめて問われます。
治療の順序(時期)
唇顎口蓋裂の治療の流れ:口唇形成術(生後約3か月)→口蓋形成術(1〜1歳半)→(必要に応じ)咽頭弁形成術→顎裂骨移植(学童期・永久歯萌出に合わせて)→顎矯正手術(成長終了後・思春期以降)。片側完全唇顎口蓋裂で最も早期に行うのは口唇形成術。
口腔・鼻咽腔の補綴装置
| 装置 | 適応・目的 |
| ホッツ(Hotz)床 | 乳児の口唇口蓋裂。裂を覆い哺乳(吸啜)を助け、顎発育を誘導 |
| スピーチエイド(バルブ型) | 短軟口蓋・鼻咽腔閉鎖不全の発音補助床。バルブで鼻咽腔を補う |
| 舌接触補助床(PAP) | 舌運動機能低下時。口蓋側を厚く盛り上げて舌接触を補い構音・嚥下を改善 |
| 軟口蓋挙上装置(PLP)/パラタルリフト | 軟口蓋麻痺を挙上して鼻咽腔閉鎖を補助 |
| 口蓋閉鎖床 | 口蓋の裂・穿孔の閉鎖(上顎骨欠損には顎義歯・栓塞子) |
装置の組合せのひっかけ:「哺乳障害=バイトプレート」は誤り(正しくは哺乳床=ホッツ床)。「口蓋閉鎖床=上顎欠損」も誤り(口蓋閉鎖床は口蓋裂・穿孔の閉鎖用、上顎欠損は顎義歯)。装置と適応病態を1対1で対応づける。
構音評価(エレクトロパラトグラフィ)
エレクトロパラトグラフィ(EPG):人工口蓋に並べた電極で舌と口蓋の接触パターン(=声道の閉鎖)を可視化する装置。構音時の舌‐口蓋の接触の評価・訓練に用いる。鼻咽腔の閉鎖・声門の閉鎖・食道入口部の閉鎖は評価できない(EPGが見るのは「声道の閉鎖」)。
経過観察項目
口蓋裂児で観察すべき/必要性が低い項目:重要なのは聴覚(滲出性中耳炎→伝音難聴)・摂食嚥下(哺乳障害)・言語発達・構音(鼻咽腔閉鎖)。一方嗅覚は口蓋裂と直接関係が薄く、経過観察の優先度は低い。「必要性が低いのはどれか」で嗅覚を選ばせる。
次章へ:口蓋裂で扱った
皮弁・補綴の考え方は、成人の
頭頸部がん切除後の再建にそのままつながります。
第2章 頭頸部再建・皮弁では、舌がん・口腔がん切除後の皮弁と植皮、そして
舌切除後の構音を補うPAPを整理します。これは
器質性構音障害(舌切除後の構音障害)と
嚥下障害の医学的背景です。