第2章|頭頸部再建・皮弁

対応過去問 10問/難易度 ★★★☆☆
📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:頭頸部がん(舌がん・口腔がん)を切除すると大きな組織欠損ができ、皮弁や植皮で再建します。ここはSTにとって「切除後にどう話す・食べるを取り戻すか」の医学的前提——舌亜全摘後の構音を舌接触補助床(PAP)で補うのはST領域そのものです。この章では①皮弁の種類 ②舌・口腔がん切除後の再建と口腔がん ③植皮 ④瘢痕拘縮の再建を整理します。皮弁名は器質性構音障害嚥下障害の背景として押さえましょう。

2-1 皮弁の基礎と種類(有茎皮弁・遊離皮弁)

皮弁は血流を保ったまま組織を移す再建法です。有茎皮弁(茎をつないだまま移動)遊離皮弁(血管を切り離しマイクロサージャリーで吻合)に大別され、欠損の部位・大きさ・必要組織(皮膚・筋・骨)で選びます。

皮弁主な用途
大胸筋皮弁有茎組織量が多く頭頸部再建の代表。血流が安定
腹直筋皮弁遊離組織量が多く、舌・口腔の大欠損再建
前腕皮弁遊離薄く血管柄が確実。口腔の軟部再建に多用
前外側大腿皮弁遊離採取しやすく汎用性が高い
広背筋皮弁有茎/遊離大きな欠損の再建
腓骨皮弁遊離骨を含み下顎再建に用いる
頭頸部再建でよく用いる皮弁:大胸筋皮弁(有茎)・広背筋皮弁・腹直筋皮弁が代表。組織量の多い皮弁が大欠損に選ばれる。薄筋皮弁は顔面神経麻痺の機能再建、大殿筋皮弁は仙骨部(褥瘡)の再建が主で、頭頸部再建の標準ではない。
「進行口腔がん切除後の再建に用いるもの」:正答は前腕皮弁・大胸筋皮弁・腹直筋皮弁咽頭弁は鼻咽腔閉鎖不全の手術(再建皮弁ではない)、側頭筋弁は適応が限られる、というひっかけに注意。

2-2 舌・口腔がん切除後の再建と口腔がん

舌がん・口腔がんは頭頸部で頻度が高く、切除範囲に応じて再建材料を選びます。「軟部か管腔か」「有茎か遊離か」が判断軸です。

切除後の再建材料

舌の再建:舌半側〜広範囲切除後の再建には前腕皮弁・大胸筋皮弁・腹直筋皮弁・前外側大腿皮弁など軟部組織皮弁を用いる。とくに広範囲切除では組織量の多い腹直筋皮弁を遊離(マイクロサージャリー)移植するのが代表。
舌再建に「用いない」もの=遊離空腸:遊離空腸は管状の臓器で、咽頭・頚部食道の再建に用いる。舌・口腔は軟部組織皮弁、管腔(咽頭・頚部食道)は遊離空腸、と対応づける(空腸=管腔再建が判断の鍵)。

口腔がんの特徴

項目内容
頻度全がんの数%程度(「約15%」は過大=誤り)
性差喫煙・飲酒を背景に男性に多い
好発部位舌(舌縁部)が最多
組織型扁平上皮癌が大半
転移頸部リンパ節に転移しやすい

舌切除後の構音を補う装置(PAP)

舌接触補助床(PAP):舌亜全摘後は舌の容積・可動域が失われ、舌と口蓋・歯槽の接触が困難になり構音が崩れる。これに対し口蓋側を厚く盛り上げて舌が届きやすくするPAPを用い、残存する舌運動で接触を成立させる。スピーチエイド・PLPは軟口蓋(鼻咽腔閉鎖)を補う装置で目的が異なる
ST接続:舌切除後の構音障害・摂食嚥下障害はSTの直接の臨床対象です。PAPで舌‐口蓋接触を補い、構音訓練・嚥下訓練を行います。詳しくは器質性構音障害(舌切除後の構音)と嚥下障害のノートへ。再建外科と補綴とSTのリハビリが一連の流れになっている点を押さえましょう。

2-3 植皮(分層・全層・メッシュ)

植皮は皮膚を完全に切り離して移植し、移植床から血行の再開を待って生着させる方法です(茎をつなぐ有茎皮弁とは異なる)。採取する厚さで性質が変わります。

項目分層植皮全層植皮
厚さ薄い(表皮+真皮の一部)厚い(表皮+真皮全層)
生着率高い低い(厚く血行再開に不利)
術後収縮大きい小さい
色素沈着起きやすい軽度
整容性劣る良い(顔面・関節部に)
採皮部自然に上皮化して治癒縫合閉鎖が必要
厚いほど質感はよいが生着しにくい:全層植皮は生着しにくいが収縮・色素沈着が少なく整容的に優れるメッシュ植皮は切れ目を入れて網状に広げ、広い面積を覆い滲出液の排出も促す。広範囲熱傷では生着率が高い分層・メッシュ植皮、整容を要する顔面では全層植皮が選ばれる。
植皮のひっかけ:「移植片の一部が生体とつながっている」は有茎皮弁の説明で誤り(遊離植皮は完全に切り離す)。「分層植皮は収縮をきたさない」も誤り(分層は二次収縮をきたしやすい)。「全層は分層より生着率が高い」も誤り(全層のほうが生着率は低い)。

2-4 瘢痕拘縮・組織欠損の再建(局所皮弁・Z形成)

瘢痕によるひきつれ(瘢痕拘縮)は関節などの運動制限を生じ、局所皮弁・植皮による再建の対象になります。

瘢痕拘縮の治療:ひきつれた瘢痕はZ形成術などの局所皮弁や植皮で解除・再建する。Z形成は瘢痕の方向を変えて張力を分散し、拘縮を伸ばす代表的手技。瘢痕はひきつれによって運動制限の原因となるため、機能再建として重要。
肥厚性瘢痕とケロイドの再建上の違い:肥厚性瘢痕は創部内にとどまり時間とともに軽快する傾向。ケロイドは創部を越えて拡大し再発しやすいため単純切除だけでは不十分。瘢痕・ケロイドの病態そのものは第4章で詳しく扱う。
次章へ:第1章のピエール・ロバン、この章で触れた顔面の再建の背景には先天異常症候群があります。第3章 先天異常・症候群で、トリーチャー・コリンズ・第1第2鰓弓症候群・頭蓋縫合早期癒合症(アペール/クルーゾン)などを整理します。これらは外耳奇形・伝音難聴・小下顎を伴い、聴覚障害小児科学と重なります。