第3章|信頼性・妥当性・標準化

対応過去問 約11問/難易度 ★★★★☆
なぜSTが学ぶのか:SLTA・WAB・新版K式・WISC・ITPA・PVT など、STが日常的に使う検査は「標準化検査」です。信頼性(測るたびに結果が安定するか)妥当性(測りたいものを測れているか)、そしてT得点・偏差値・パーセンタイルの意味を知らなければ、検査結果を正しく解釈できません。この章はST検査を読むための必修回路です。

3-1 信頼性(再検査・折半法・α係数・内的整合性)

信頼性=同じものを測ったときに同様の結果が再現される(一貫している)程度。「測定の精度・安定性」の側面。

信頼性の種類調べ方意味
再検査信頼性同一対象に時間をおいて再検査時間的な安定性
平行検査信頼性等質な2つの検査を実施し相関検査の等価性・等質性
折半法項目を半分に分けて2得点の相関内的一貫性(内的整合性)
クロンバックのα係数全項目の内的整合性を推定複数項目が同一の特性を測っている程度=信頼性係数の一種
評定者間信頼性複数の評定者の一致度採点者による評価の一致
内的整合性(内的一貫性)=検査に含まれる複数の項目が同一の特性を測定している程度。折半法・α係数で調べる。

信頼性の概念に含まれるもの:結果の再現性・内的整合性・平行検査との等価性・検査の等質性。
「理論的予測との一致性」は信頼性ではなく妥当性(=構成概念妥当性)。
信頼性と関係ないもの=上下法(=閾値の測定法。第4章)。再検査・α係数・項目得点相関・上位下位分析(項目分析)は信頼性に関係。
折半法で検討されるのは内的一貫性(内的整合性)(内容的妥当性・構成概念妥当性・弁別的妥当性・安定性ではない)。
アルファ係数(クロンバックのα)は信頼性係数の一種で、信頼性の程度を推定する指標。

3-2 妥当性(内容・基準関連・構成概念)

妥当性=その検査が測るべき概念を正しく測れている程度(=意図した内容を測定できている程度)。

妥当性の種類意味
内容的妥当性項目が測定対象の内容を偏りなく代表しているか(専門家の判断)
基準関連妥当性外的な基準(別の確立した指標)との相関。予測的妥当性・併存的妥当性を含む
構成概念妥当性測定結果が理論から導かれる事実と矛盾しないことで、理論上の構成概念を測れているかを裏づける。弁別的妥当性・収束的妥当性を含む
信頼性と妥当性の関係(最頻出):信頼性は妥当性の必要条件だが十分条件ではない。信頼性が高くても妥当性が低い場合はある(安定して測れていても、測りたいものと違うものを測っていることがある)。逆に妥当性が高ければ信頼性は必ず高い。

「測定結果が理論から導かれる事実と矛盾しないことを示す」=構成概念妥当性(内的妥当性・外的妥当性・内容妥当性・基準関連妥当性ではない)。
よくある入れ替えトラップ:「妥当性=反復して同様の結果が得られる程度」は誤り(それは信頼性)「信頼性=意図した内容を測定できている程度」は誤り(それは妥当性)
「内的一貫性は妥当性にかかわる概念」→誤り(内的一貫性は信頼性)。

用語の混同注意:ここでの「妥当性」は検査の妥当性。研究デザインの内的妥当性/外的妥当性(第5章)は別概念(因果の確からしさ/一般化可能性)。

3-3 標準化と標準得点(T得点・偏差値・パーセンタイル)

標準化=多数の対象に検査を実施して基準(規準集団の分布)を作り、個人の素点を集団内での相対的な位置として解釈できるようにすること。標準化されていない検査でも臨床上の情報にはなるが、他者との比較には基準が必要。

標準得点平均標準偏差意味・使われ方
z得点01(素点−平均)÷標準偏差。最も基本の標準化得点
偏差値(T得点)501050+10z。学力・心理検査で頻用。偏差値60=平均より1SD上(上位約16%)
偏差IQ・知能偏差値100(IQ)15(IQ)WISC等の知能指数。偏差知能指数と知能偏差値は平均・SDが違うので数値は一致しない
パーセンタイル順位下から何%の位置か。順序尺度的で分布の裾で目盛が詰まる
偏差値のポイント:偏差値は素点を平均50・標準偏差10に変換した標準得点で、単なる偏差(得点−平均)とは別物。標準偏差と偏差値も別物(第1章)。同じ人でも尺度(IQ/偏差値)が違えば数値は異なる。

「標準化されていない臨床検査は用いるべきでない」→誤り(標準化されていなくても有用な情報は得られる)。
「偏差知能指数と知能偏差値の数値は一致する」→誤り(平均・SDが異なる)。
「平均値は代表値の一種」→正しい(第1章)。

代表的な標準化検査と測定機能(他科目の応用)

標準化検査は「何を測るか(妥当性)」で使い分けます。ST・神経心理領域の例:

検査主に測る機能
仮名拾いテスト注意(選択性・持続性注意)
MMSE認知機能全般(認知症スクリーニング)
ベントン視覚記銘検査視覚記銘・視覚性記憶
レイ複雑図形検査(ROCF)記憶(+構成・視空間)
トークンテスト言語理解

組合せトラップ:「レイ複雑図形検査 ― 記憶」が正しい。「MMSE ― 行為」「トークンテスト ― 注意」「仮名拾い ― 言語」などは誤った対応。

3-4 テスト理論(項目反応理論)

  • 古典的テスト理論:観測得点=真の得点+誤差。総得点や下位尺度得点を扱い、信頼性・妥当性を評価する。
  • 項目反応理論(IRT):各項目への反応から、能力のような潜在的特性(θ)を推論する。項目ごとの難易度・識別力をモデル化し、大規模テストや適応型テスト(CAT)に用いる。

項目反応理論について正しいのは「項目への反応に基づき能力のような潜在的特性を推論する」
「小規模テストに適用」「ランダムに選んだ項目に適用」「総得点や下位尺度得点に適用(=古典的テスト理論)」「項目間構造を確率ネットワークで推定」はいずれも誤り