第1章|呼吸の生理・肺機能

対応過去問 14問/難易度 ★★★☆☆
📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:呼吸系の第一歩は「呼気=発声の原動力」を体で理解することです。声は肺から押し出す呼気が声帯を鳴らして生まれます。だから肺気量(吐ける量)・呼吸筋・声門下圧の知識は、そのまま音声障害最長発声持続時間(MPT)・呼気圧不足の声につながり、呼吸と嚥下の協調は嚥下障害呼吸−嚥下パターン・誤嚥の土台になります。この章(呼吸生理・肺機能)は医学寄りのため要監修ですが、「どの数字が声に使えるか」を意識して読んでください。

1-1 呼吸器の解剖(気道・肺・胸郭・胸膜・縦隔)

まず気道 → 肺 → 胸郭・胸膜 → 縦隔の位置関係を押さえます。国試では「数字(対の数)」と「左右差」「内面/外面」のすり替えが定番のひっかけです。

構造要点
胸膜肺側(臓側)胸膜=肺の表面を覆う壁側胸膜=胸郭の内面を覆う。両者の間が胸膜腔(陰圧の閉鎖腔)
肋骨・肋間神経肋骨は12対、肋間神経は肋骨の間で11対
左右の肺左肺は右肺より小さい(心臓が左に偏る/左2葉・右3葉)
主気管支右は太く・短く・垂直に近い/左は細く・長く・水平寄り。誤嚥物は右肺に入りやすい
気管軟骨C字(馬蹄形)で前・側壁を支える。後壁は膜性壁(軟骨を欠く)。肺胞には軟骨はない
縦隔左右の肺(胸膜腔)に挟まれた中央部。心臓・大血管・気管・食道・胸腺・胸管が入る。肺は縦隔の外側=縦隔に含まれない
胸膜の整理:臓側=肺の表面/壁側=胸壁の内面、その間が胸膜腔(陰圧)。「壁側胸膜が胸郭の外面を覆う」「肺実質と臓側胸膜の間が胸膜腔」はいずれも誤り。

右気管支のひっかけ(ST頻出):「左主気管支は右より短い」「左のほうが垂直」は右主気管支が太く・短く・垂直だからこそ、誤嚥性肺炎は右肺に多い——嚥下の臨床とつながる解剖学的理由。

縦隔のひっかけ:「縦隔にないのは」。心臓・気管・食道・胸腺は縦隔に含まれるが、肺は左右の胸腔を占め縦隔の外側にある。「左右の肺に挟まれた中身=縦隔」と捉える。

1-2 呼吸運動と呼吸筋(吸気筋・呼気筋・呼吸中枢)

呼吸筋は「吸気=広げる筋」「呼気=縮める筋」で二分します。ここが声(呼気の使い方)に直結します。

安静時努力時に加わる筋
吸気(胸郭を広げる)横隔膜(収縮=下降)+外肋間筋(能動的)胸鎖乳突筋・斜角筋などの補助(呼吸)筋
呼気(胸郭を縮める)受動的(肺・胸郭の弾性で戻る)腹筋群(腹直筋)・内肋間筋
安静吸気で起こること=横隔膜収縮(下降)+外肋間筋 → 胸郭拡大 → 肺気量増加(能動的)。このとき吸気なので声門は開大する。胸郭縮小・肺気量減少・腹筋収縮・声門閉鎖はいずれも安静吸気では起こらない。

呼気筋・吸気筋のひっかけ:腹直筋・内肋間筋は「呼気筋」。これらを「吸気筋」とするのは誤り。努力性吸気に関与しないのも腹直筋(腹圧を上げる努力性呼気筋)。胸鎖乳突筋・前斜角筋は努力性吸気の補助筋で正しい。

安静呼気位(機能的残気量位)=呼吸筋が弛緩し、肺・胸郭の弾性が釣り合う位置。これが安静時の基準位。「最大呼気位=肺の空気を全て呼出」は誤り(残気量は残る)。「深吸気で腹筋を積極利用」も誤り(吸気は横隔膜・外肋間筋)。

呼吸中枢は「延髄」:呼吸の基本リズムを生む呼吸中枢は延髄。橋は呼吸調節に関与するが基本リズムの中枢ではない。視床(感覚中継)・中脳・小脳は呼吸中枢ではない。延髄には呼吸・心臓血管・嚥下など生命維持中枢が集まる。

1-3 肺気量分画とスパイロメトリー

肺気量分画は「吐ける量=肺活量」「吐けない量=残気量」の区別が核心です。計算問題は下の関係式で解けます。

肺活量(VC)= 予備吸気量 + 1回換気量 + 予備呼気量 全肺気量(TLC)= 肺活量 + 残気量 機能的残気量(FRC)= 予備呼気量 + 残気量           (= 全肺気量 − 肺活量 でも算出可)
計算例:全肺気量5,000mL・残気量1,000mLなら肺活量=5,000−1,000=4,000mL。検算=1回換気量500+吸気予備量2,000+呼気予備量1,500=4,000mLで一致。残気量は肺活量に含まれないのがカギ。
スパイロメトリーで項目
測定できる肺活量・1回換気量・予備吸気量/予備呼気量・努力性肺活量・1秒量・1秒率
測定できない残気量・機能的残気量・全肺気量(吐き出せない空気を含む → ガス希釈法・体プレチスモグラフが必要)

スパイロメトリーのひっかけ:「残気量を測定できる」は誤り。最大呼出後も肺に残る量なので口元の気量変化を測るスパイロメーターでは求められない。1秒率・肺活量・1回換気量は測定できる

1-4 換気障害とフローボリューム曲線・呼吸リハビリテーション

換気障害は「拘束性=広がらない」「閉塞性=吐けない」の2型。指標と代表疾患を対にします。

指標代表疾患
拘束性(広がらない)%肺活量 < 80%間質性肺炎・肺線維症・胸郭変形・神経筋疾患
閉塞性(吐けない)1秒率 < 70%気管支喘息・COPD・びまん性汎細気管支炎・気管支炎
フローボリューム曲線:閉塞性障害(COPD・喘息)は呼気の下降脚が下に凸(scooping/coving)にへこむのが特徴。拘束性は全体に縮小、固定性の上気道狭窄は呼気・吸気とも平坦化(プラトー)する。

COPD呼吸リハのひっかけ:目標は「1秒率の低下」ではない——1秒率の低下は気流閉塞の悪化を意味する。正しい手段・目標は腹式呼吸・口すぼめ呼吸・スクイージング(排痰)・6分間歩行距離(6MD)の延長。「口すぼめ呼吸」は呼気時に気道内圧を保ち気道の虚脱を防ぐ。

次章へ:呼気という「原動力」が用意できたら、いよいよ音源へ。第2章 喉頭・声帯の解剖と喉頭筋で、声を生む喉頭・声帯の構造と、唯一の外転筋=後輪状披裂筋を軸にした喉頭筋の作用を押さえます。ここからがSTのど真ん中です。