第5章|喉頭・咽頭の観察と音声検査

対応過去問 14問/難易度 ★★★☆☆
📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:ここは音声障害の評価そのもの。喉頭内視鏡・ストロボスコピー・空気力学検査は臨床でST・耳鼻科が毎日使う道具です。「どの検査で何が見えるか(見えないか)」を対で覚えると、正誤・除外問題に強くなります。喘鳴・閉鼻声・喉頭摘出後の音声は音声障害と、鼻咽腔閉鎖の評価は器質性構音障害とつながります。

5-1 喉頭・咽頭の観察法

観察法は「経鼻の軟性内視鏡か/口から入れる硬性器具か」で発話中に使えるかが決まります。

観察法特徴
ファイバースコピー/電子内視鏡経鼻・軟性。口腔を占拠せず発話・嚥下中の動態を観察できる(VE)
間接喉頭鏡舌を引き出して鏡で映す。構音を妨げる
喉頭直達鏡(硬性)全身麻酔下・口から挿入。頚部の伸展を要する(伸展できない例には不向き)
構音動作を妨げない観察法:経鼻の電子内視鏡・ファイバースコピー。口腔から入れる直達鏡・間接喉頭鏡・側視鏡は舌や口腔を占拠するため発話中の観察に不向き。

咽頭・喉頭の検査の正誤:正しいのは「針筋電図(喉頭筋電図)は内喉頭筋の評価に有用」(反回神経麻痺など)。誤りは「直達鏡は頚部を伸展できない場合に有用(→硬性で伸展を要する)」「ストロボスコピーは発声困難な場合に有用(→安定した規則的振動が必要)」「空気力学的検査は声帯の隆起性病変の診断に有用(→隆起性病変は内視鏡で観察)」「パラトグラフィは嚥下時の喉頭閉鎖の評価(→構音時の舌と口蓋の接触を調べる)」。

下咽頭の観察:喉頭口の左右外側の下咽頭の陥凹が梨状陥凹(梨状窩)。その左右差(貯留・残留)の評価には下咽頭・喉頭内視鏡像が最も有用——側面像は左右が重なり、MRI正中矢状断は左右を同時に比較できない。

5-2 声帯振動の観察(ストロボスコピー・ハイスピードカメラ)

声帯は速く振動するので肉眼では止まって見えます。「見かけ上のスロー」か「実像そのもの」かが両者の違いです。

喉頭ストロボスコピー  振動に同期した断続光で「見かけ上のスロー映像」を合成  → 規則的で安定した声帯振動が必要(発声困難例は苦手)  観察項目:粘膜波動/声門閉鎖/振動の周期性/左右対称性/非振動部位 ハイスピードカメラ(高速度撮影)  各振動を高速連続撮影 → 声帯振動の「実像」をそのまま観察
ストロボスコピーの観察項目:粘膜波動・声門閉鎖・振動的周期性・左右対称性・非振動部位の有無観察項目でないのは「披裂部(披裂軟骨)の可動性」(通常の内視鏡で評価)と「声帯の毛細血管の不整」(拡大内視鏡・NBIが適する)
実像の観察:声帯振動の実像を肉眼的に観察できるのはハイスピードカメラ。ストロボスコープは同期光による合成で、実際の各振動を撮っているわけではない。間接喉頭鏡・電子内視鏡・ファイバースコープでは速い振動そのものは捉えられない。

5-3 音声機能検査(空気力学・鼻咽腔閉鎖)

声を「数値」で捉えるのが音声機能検査。機器で測る量と、耳や質問紙で評価する量を混同しないことがカギです。

発声機能検査装置で測るもの:声の基本周波数・声の強さ・発声時平均呼気流率(マイク音声と呼気流から算出)。GRBAS尺度(聴覚心理的な嗄声の評定)・VHI(Voice Handicap Index=自覚的影響の質問紙)は機器で測る値ではない
平均呼気流率(MFR)の測定:持続発声中の安定区間で評価するので、発声期間の中央の安定部について測定する。最大努力ではなく楽な(快適な)発声で行い、マウスピースは漏れを防いで適切に保持する。「最も大きな声で」「変動が顕著なら測定不能」は不適切。

鼻咽腔閉鎖機能の検査:適するのは鼻息鏡・鼻咽腔内視鏡・頭部エックス線規格写真(側面)・ナゾメータ適さないのはパラトグラフィ——これは舌と口蓋の接触様式を調べる構音の検査で、鼻咽腔閉鎖機能は評価しない。

5-4 声の異常と関連疾患

最後に、声の異常を「どこの・何の問題か」で結びつけます。狭窄部位・共鳴・原因の3視点で整理します。

異常ポイント
喘鳴と狭窄部位声門上=吸気性/声門部=二相性/声門下・気管=呼気性仮性クループ(急性声門下喉頭炎)は声門下狭窄で呼気性〜二相性喘鳴(小児・犬吠様咳嗽)
閉鼻声(鼻腔共鳴の低下)器質的=上咽頭癌・アデノイド増殖症/機能性=耳管開放症(鼻すすり・軟口蓋挙上の習慣化)。※開鼻声(鼻咽腔閉鎖不全)=偽性球麻痺・重症筋無力症
声帯疾患の原因ポリープ様声帯(ラインケ浮腫)=喫煙が深く関与(中高年・低音化)。声帯結節・声帯ポリープ=音声酷使
無喉頭音声食道発声=食道内の空気を逆流させ食道入口部粘膜を振動。器具不要・両手が自由だが習得が難しく声量が小さく雑音が多い・一息が短い。頚部に当てるのは電気式人工喉頭
頻出の対応:呼気時に喘鳴=仮性クループ機能性閉鼻声=耳管開放症喫煙が深く関与=ポリープ様声帯食道発声の特徴=雑音が大きい。この4つは単独で問われやすい。
まとめ:呼吸(原動力)→喉頭・声帯(音源)→構音器官(削り出し)→観察・検査(評価)と、呼吸系は声を作り・測る一連の流れでつながっています。ここで得た解剖生理は、そのまま音声障害運動障害性構音障害嚥下障害の臨床の土台になります。過去問で「どの仕組み・どの検査か」を確認して仕上げましょう。