第4章|舌・口腔・咽頭の構音器官

対応過去問 8問/難易度 ★★★★☆
📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:音源(喉頭)でできた声をことばに削り出す舞台が舌・口腔・軟口蓋・咽頭です。ここは運動障害性構音障害(麻痺で舌・軟口蓋が動かない)と機能性構音障害の解剖学的土台。軟口蓋・咽頭は鼻咽腔閉鎖=器質性構音障害(口蓋裂)と直結し、喉頭蓋谷・梨状陥凹は嚥下障害の通り道です。「どの筋がどの音・どの動きを作るか」で覚えると得点源になります。

4-1 舌の筋(内舌筋と外舌筋)

舌筋は「形を変える内舌筋」と「位置を変える外舌筋」の2群。神経支配は口蓋舌筋を除き舌下神経(XII)です。

働き
内舌筋
(骨に付着せず
舌のを変える)
上縦舌筋舌尖を挙上・舌を短縮
下縦舌筋舌尖を下制
横舌筋舌を細く狭める(尖らせる)
垂直舌筋舌を平たく広げる
外舌筋
(骨に付着し
舌の位置を変える)
オトガイ舌筋舌を前方へ突出
舌骨舌筋舌を後下方へ引く
茎突舌筋側頭骨(茎状突起)から起こり舌を後上方へ引く
口蓋舌筋舌を後上方へ挙上(軟口蓋を下げる)
舌の動きと筋(頻出):舌尖の挙上=上縦舌筋舌の前突=オトガイ舌筋舌を後方へ引く=茎突舌筋(後上方)・舌骨舌筋(後下方)。内舌筋(上縦・下縦・横・垂直)は骨に付着しない——「下縦舌筋が下顎骨に付着」「垂直舌筋が舌骨に付着」は誤り。茎突舌筋が側頭骨に付着は正しい。

4-2 咀嚼筋と開口・閉口

下顎の上げ下げは「閉口=咀嚼筋」「開口=舌骨上筋群」で対にします。咀嚼筋は三叉神経(V3)支配。

動き働く筋
閉口(下顎挙上)咬筋・側頭筋・内側翼突筋(=咀嚼筋)
開口(下顎下制)舌骨上筋群(顎二腹筋・オトガイ舌骨筋・顎舌骨筋)+外側翼突筋
開口・閉口の要:開口筋は顎二腹筋・オトガイ舌骨筋など舌骨上筋群(舌骨を固定して下顎を引き下げる)。内側翼突筋・側頭筋・咬筋はすべて閉口筋。「側頭筋=下顎挙上」「咬筋=下顎挙上」は正しい。

筋の働きのひっかけ:「口蓋咽頭筋=軟口蓋の挙上」は誤り——軟口蓋を挙上するのは口蓋帆挙筋(口蓋咽頭筋はむしろ咽頭を挙上し軟口蓋を下げる方向)。「口輪筋=口角の挙上」も誤りで、口輪筋は口唇を閉じる筋(口角挙上は大頬骨筋)。「オトガイ舌筋=舌の後退」も誤り(前突が正しい)。

4-3 軟口蓋・口蓋弓・咽頭の筋

鼻咽腔閉鎖と共鳴の主役が軟口蓋。口蓋弓は「弓の名前=そのまま筋の名前」で覚えると速いです。

前口蓋弓(口蓋舌弓) … 中身は 口蓋舌筋 後口蓋弓(口蓋咽頭弓)… 中身は 口蓋咽頭筋  → この2つの弓の「間」にあるのが口蓋扁桃 軟口蓋の挙上(鼻咽腔閉鎖)… 口蓋帆挙筋 口腔底(口腔の床)… 顎舌骨筋 食道入口部の括約 … 輪状咽頭筋
部位と筋の正しい対応:口腔底=顎舌骨筋(正)。誤りの定番は「前口蓋弓=口蓋咽頭筋(→口蓋舌筋が正)」「後口蓋弓=口蓋舌筋(→口蓋咽頭筋が正)」と弓と筋を入れ替えるパターン。声帯膜様部の本体は声帯筋(甲状披裂筋内側部)で外側輪状披裂筋ではない。食道入口部の括約は輪状咽頭筋で甲状咽頭筋ではない。
臨床メモ:軟口蓋挙上(口蓋帆挙筋)による鼻咽腔閉鎖が弱いと、開鼻声・鼻漏出が生じる。これは口蓋裂運動障害性構音障害の中核所見で、第5章の鼻咽腔閉鎖機能検査(鼻息鏡・ナゾメータ)につながります。

4-4 口腔・咽頭の解剖と嚥下の通り道

開口したときに見える構造と、咽頭を通る食塊のルートを押さえます。ここは嚥下障害の基礎です。

開口正面像で見えるもの:中央に垂れる口蓋垂、その両側の前口蓋弓・後口蓋弓、弓の間の口蓋扁桃、奥の中咽頭後壁、下方に舌背。下顎前歯の下方・正中のひだは下唇小帯——これを「舌小帯」と呼ぶのは誤り(舌小帯は舌の下面と口腔底をつなぐ別のひだ)。
正常嚥下で食塊が通るルート  口腔 → 喉頭蓋谷 → (左右の)梨状陥凹 → 食道入口部 → 食道  ※ 喉頭前庭・声門に入る=喉頭侵入・誤嚥(正常では通らない)  ※ 上咽頭(鼻咽腔)は鼻咽腔閉鎖で食塊が入らない
嚥下の通り道(頻出):正常嚥下で食物が通過するのは喉頭蓋谷(喉頭蓋の前のくぼみ)と梨状陥凹(喉頭口の左右外側の下咽頭の陥凹)梨状陥凹は食物残留の好発部位で、左右差の評価には下咽頭・喉頭内視鏡像が最も有用(第5章)。喉頭前庭・声門を食塊が通れば誤嚥、上咽頭は鼻咽腔閉鎖で通らない。
次章へ:ここまでで声を作る仕組み(呼吸→喉頭→構音器官)がそろいました。最後の第5章 喉頭・咽頭の観察と音声検査で、それらをどう見て・どう測るか(内視鏡・ストロボスコピー・空気力学検査)と、声の異常・関連疾患(嗄声・喘鳴・閉鼻声・喉頭摘出後の音声)をまとめます。音声障害の評価そのものです。