第2章|医療保険と年金保険

対応過去問 8問/難易度 ★★★☆☆
この章のねらい:社会保険5種のうち、STが最も身近に関わるのが医療保険です。回復期リハ病棟でのST訓練は医療保険の給付のもとで行われ、患者の窓口負担や高額療養費の理解は家族支援に直結します。国試では「どの保険が誰を対象にするか(職域か地域か)」「現金給付か・労災か」「年金の1階と2階」の組合せ・仲間はずれが繰り返し出ます。制度の細部を丸暗記せず、「被用者か・自営業か・75歳以上か」で加入先が決まるという軸で押さえます。自己負担割合などの数値は改定されるため、本文では「◯年時点」と明記します。

2-1 医療保険の全体像 ― 職域保険と地域保険

公的医療保険は、加入が義務で医療給付を行う仕組みです。大きく職域保険(被用者保険)地域保険(国民健康保険)に分かれ、75歳以上は後期高齢者医療制度に移ります。

区分対象
職域保険
(被用者保険)
会社員・公務員などの被用者組合健保・協会けんぽ・共済組合・船員保険・日雇
地域保険自営業者・無職・退職者など被用者でない人国民健康保険
後期高齢者医療75歳以上(一定の障害がある65歳以上を含む)後期高齢者医療制度

職域か地域かの取り違え(頻出):
自営業者は職域保険ではなく国民健康保険(地域保険)
地方公務員・国家公務員・私立学校教職員共済組合(職域保険)。「地域保険」とするのは誤り。
日雇労働者・船員も被用者保険(職域保険)。
「職域保険の被保険者に該当しないのはどれか」→自営業者

2-2 被用者保険の種類 ― 誰が入るか

被用者保険は「職業(職域)」で加入先が決まります。組合せ問題で頻出です。

保険対象(被保険者)
組合管掌健康保険(組合健保)主に大企業の従業員(健康保険組合が運営)
協会けんぽ(全国健康保険協会・旧政府管掌)主に中小企業の従業員
共済組合公務員・私立学校教職員
船員保険船員
頻出の正しい組合せ:「組合管掌健康保険 ― 大企業の従事者」。国民健康保険=自営業・無職(中小企業の従業員は協会けんぽ)、共済組合=公務員等、船員保険=船員。公務員を「組合健保」とするのは誤り(=共済組合)。

2-3 医療保険の給付 ― 現物給付と現金給付

医療保険の給付には、医療サービスそのものを受ける現物給付と、お金が支給される現金給付があります。「現金給付に含まれないのはどれか」で問われます。

健康保険の現金給付(○)労災保険の給付(×=ひっかけ)
傷病手当金(療養のための休業補償)遺族補償一時金・療養補償給付・休業補償給付など
(=業務上・通勤上の傷病に対する労災保険の給付)
出産手当金・出産育児一時金
埋葬料(被保険者死亡時)
移送費
(療養の給付は現物給付)

労災との境界(頻出):
・名称に「補償」が付く給付(療養補償・遺族補償一時金など)は労災保険の給付。医療保険の現金給付ではない。
通勤上(通勤災害)・業務上の傷病労災保険の対象で、医療保険ではない。
・生活保護の医療扶助は現物給付(現金給付ではない)。

2-4 公的医療保険と民間保険の区別

「公的医療保険はどれか」では、公的(強制加入・医療給付)と民間(任意)の区別が問われます。

公的医療保険(○)民間の任意保険(×)
国民健康保険・健康保険・共済組合・船員保険火災保険・生命保険・自動車保険
判別の鍵:公的医療保険は加入が義務で医療給付を行う。損害(火災)・死亡(生命)などを対象とする任意の民間保険は、公的医療保険には含まれない。

2-5 指定難病と公費負担医療

指定難病の患者には、医療費の自己負担を軽減する公費負担医療(医療費助成)があります。根拠は難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)です。

  • 特定医療(助成)の対象疾患(指定難病)が定められている。
  • 自己負担上限額は所得に応じて定まる〔◯年時点。基準は改定される〕。
  • 申請時に指定医の診断書(臨床調査個人票)が必要。
  • 難病相談支援センターなどによる就労支援も含まれる。

頻出のひっかけ:「難病患者に指定されると身体障害者手帳が交付される」→誤り。難病の医療費助成の認定と、身体障害者手帳の交付は別制度・別の基準。難病認定=手帳交付ではない。

2-6 公的年金の2階建て構造

日本の公的年金は2階建てです。「国民(基礎)年金でないのはどれか」で問われます。

階層年金給付
1階国民(基礎)年金(全国民共通)老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金
2階厚生年金(被用者の上乗せ)老齢厚生年金など(旧共済年金は2015年に厚生年金へ統合)
核心:老齢・障害・遺族の各「基礎年金」は国民年金(1階)。厚生年金・(旧)共済年金は被用者向けの2階部分で、国民(基礎)年金ではない。「国民(基礎)年金でないのはどれか」→共済年金・厚生年金
つながる知識:医療・年金と並ぶ社会保険が介護保険です。第3章では、STが訪問リハ・通所リハで関わる介護保険と地域包括ケアを扱います。医療保険(第2章)と介護保険(第3章)の保険者・被保険者・自己負担を対比して覚えると、数字のひっかけに強くなります。