第1章|社会保障制度の全体像

対応過去問 10問/難易度 ★★★☆☆
この章のねらい:社会福祉の土台は「社会保障とは何を・どんな仕組みで守るのか」という全体像です。国試ではこの章の4本柱(社会保険・公的扶助・社会福祉・公衆衛生)機能・理念が、「社会保障制度でないのはどれか」「構成するものとして誤っているのはどれか」という形で毎回のように問われます。STが臨床で関わる医療保険・介護保険・障害者福祉サービス・生活保護は、すべてこの4本柱のどこかに位置づく給付です。まず地図の骨格を押さえると、以降の章(医療・介護・扶助・障害)がその地図に貼りついていきます(制度の概要は言語聴覚障害総論ノートと重なります。総論は概要、本章は詳細という分担です)。

1-1 社会保障の理念 ― 生存権を土台に

日本の社会保障は、憲法第25条の生存権(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)第14条の法の下の平等を基盤にしています。国試では「社会保障制度の理念として誤っているのはどれか」という形で問われます。

理念(○)理念でない(×=ひっかけ)
生存権の保障(憲法25条)婚姻の制限(基本的人権の侵害。かつての優生思想に通じ、現在は明確に否定される)
法の下の平等(憲法14条)
ノーマライゼーション(障害の有無にかかわらず地域で普通に暮らす)
自己決定の実現
核心:理念かどうかは「人権を保障する方向と一致するか」で判断する。「婚姻の制限」のように権利を制限・侵害する語が混ざっていれば、それが誤り。

1-2 社会保障の4本柱(体系) ― まず地図の骨格

日本の社会保障制度は、次の4部門(4本柱)から構成されます。ここが全章の背骨で、「社会保障でないのはどれか」型の頻出問題はほぼこの4本柱を知っていれば解けます。

部門内容主な例・根拠法
社会保険保険料を主財源に、事前にリスクに備える(防貧)医療・年金・介護・雇用・労災の5種
公的扶助租税を財源に、困窮者に最低生活を保障(救貧・資力調査あり)生活保護(生活保護法)
社会福祉支援を要する人への対人サービス児童・障害者・高齢者福祉(福祉六法)
公衆衛生(および医療)感染症対策・健康増進・医療提供体制(予防)保健所・母子保健など

これに、現金を給付する社会手当(児童手当など)を加えて整理することもあります。

4本柱に「含まれない」ひっかけ(頻出):
教育=教育制度であって社会保障ではない。
相互扶助=家族・地域のインフォーマルな助け合い。理念的な語ではあるが、制度としての社会保障の構成部門ではない
損害保険・生命保険=民間の任意保険で、公的な社会保障ではない。
「社会保障を構成するもの/制度でないのはどれか」で、これらが混ざっていたらそれが答え。

1-3 社会保険の5種と根拠法

社会保険は医療・年金・介護・雇用・労災の5種です。それぞれの根拠法をセットで押さえます(詳細は第2章・第3章)。

社会保険主な根拠法
医療保険健康保険法・国民健康保険法・高齢者の医療の確保に関する法律(後期高齢者医療)
年金保険国民年金法・厚生年金保険法
介護保険介護保険法
雇用保険雇用保険法
労災保険労働者災害補償保険法

「社会保険制度の根拠法に含まれないのはどれか」→発達障害者支援法(社会福祉・支援施策の法律で、社会保険ではない)。同様に生活保護法・障害者総合支援法も社会保険ではない点に注意。

1-4 社会保障の機能

社会保障の主要な機能は、大きく次の4つです。「機能として誤っているのはどれか」で頻出します。

機能内容
生活安定・向上機能ナショナル・ミニマム(最低生活の保障)とセーフティ・ネット(生活リスクの安全網)
所得再分配機能所得の高い層から低い層へ再分配し、格差・不平等を是正(縮小)する
社会統合機能社会的な連帯・統合を支える
経済安定機能消費を下支えし景気変動を緩和(ビルトイン・スタビライザー)

機能で「誤り」になる定番:
所得格差の拡大→誤り。社会保障は再分配で格差を縮小する方向にはたらく(拡大はその逆)。
自由競争を促す機能→誤り。社会保障は連帯による支え合い・再分配で、市場の自由競争とは逆方向。
「所得格差・不平等を是正する機能」は正しい(=再分配機能)。「拡大」と混同させるひっかけに注意。

1-5 社会保障の歴史 ― ベヴァリッジ報告の「5つの巨人」

イギリスのベヴァリッジ報告(1942年)は、社会保障が克服すべき対象として「5つの巨人(5つの巨悪)」を挙げました。組合せ問題で問われます。

5つの巨人(克服すべき社会悪)
窮乏(欠乏)・疾病・無知・不潔・怠惰(無為)
覚え方:「お金がない(窮乏)・病気(疾病)・教育がない(無知)・衛生が悪い(不潔)・働けない(怠惰=無為)」。これらに社会保障(所得保障・医療・教育・住宅・雇用)を対応させたのがベヴァリッジ報告で、戦後の福祉国家の設計図になった。

1-6 福祉六法と社会福祉の法体系

社会福祉(対人サービス)の中心となる基本法が福祉六法です。「社会福祉関係の法規はどれか」「社会福祉事業に該当しないのはどれか」で問われます。

福祉六法対象
生活保護法生活困窮者(公的扶助)
児童福祉法児童(18歳未満)
身体障害者福祉法身体障害者(18歳以上)
知的障害者福祉法知的障害者
老人福祉法高齢者
母子及び父子並びに寡婦福祉法ひとり親家庭・寡婦

社会福祉/社会保険の取り違え(頻出):
・「社会福祉関係の法規はどれか」→生活保護法・障害者(自立支援/総合支援)法介護保険法=社会保険母体保護法・健康増進法=保健(公衆衛生)は社会福祉ではない。
・「社会福祉事業に該当しない(根拠法でない)のはどれか」→健康保険法(=医療保険・社会保険)。福祉六法とは区別する。

つながる知識:この4本柱の地図を土台に、第2章では社会保険のうち医療保険と年金第3章では介護保険と地域包括ケアを扱います。STが回復期リハや訪問リハで日々関わる制度は、いずれもこの「社会保険」の柱に位置づきます。