第2章|部位別の基本軸・移動軸

関節可動域測定 第2章

2-1 基本軸・移動軸① 肩甲帯・肩・肘・前腕

運動基本軸移動軸肢位・注意
肩甲帯 屈曲・伸展両側の肩峰を結ぶ線頭頂と肩峰を結ぶ線背臥位。頭頂から見る
肩甲帯 挙上・引き下げ両側の肩峰を結ぶ線肩峰と胸骨上縁を結ぶ線背面から測定
肩 屈曲・伸展肩峰を通る床への垂直線上腕骨前腕は中間位。体幹が動かないよう固定
肩 外転・内転肩峰を通る床への垂直線上腕骨体幹側屈を防ぐ。90°以上は前腕を回外
肩 外旋・内旋肘を通る前額面への垂直線尺骨上腕を体側につけ肘90°屈曲、前腕中間位
肩 水平屈曲・水平伸展肩峰を通る矢状面への垂直線上腕骨座位・肩90°外転位
肘 屈曲・伸展上腕骨橈骨前腕回外位
前腕 回内・回外上腕骨手指を伸展した手掌面肘90°屈曲・前腕中間位から。肩の回旋を入れない
肩甲帯の基本軸は屈伸も挙上・引き下げも両側の肩峰を結ぶ線。「肩峰と胸骨上縁を結ぶ線」は挙上・引き下げの移動軸であって基本軸ではない。
前腕回内・回外の基本軸は上腕骨。橈骨・尺骨とするのは誤り。移動軸は手掌面(手指を伸展した手の面)で、手掌面が水平になる肢位を基本肢位とするのも誤り(基本肢位は前腕中間位=母指が上)。

基本軸または移動軸に橈骨を使うのは、肘屈曲・伸展(移動軸=橈骨)と手屈曲・伸展(橈骨と第2中手骨の組合せ)の2つ。肩の運動は体幹・肩峰と上腕骨の組合せなので橈骨は出てこない。

肩外転測定の要点。基本軸は肩峰を通る床への垂直線で、「体幹」そのものではない/90°以上では大結節と肩峰の衝突を避けるため前腕を回外させる/肩甲上腕リズムに伴う肩甲骨の動きは許容し肩甲骨は固定しない/亜脱臼があっても牽引は加えない/肘は伸展位が基本。

肩水平屈曲は参考可動域135°・座位・肩90°外転位で、代償の肩甲骨の前方突出(外転)に注意する。基本軸は肩峰であって烏口突起ではない。水平伸展は30°。

2-2 基本軸・移動軸② 手・手指・母指

運動基本軸移動軸肢位・注意
手 屈曲(掌屈)・伸展(背屈)橈骨第2中手骨前腕回内位
手 橈屈・尺屈前腕の中央線第3中手骨前腕回内位
母指 橈側外転・尺側内転示指(橈骨の延長上)母指手掌面と同一平面で母指を開く
母指 掌側外転・掌側内転示指(橈骨の延長上)母指手掌面に直角な面で母指を立てる
母指 MCP/IP第1中手骨/第1基節骨第1基節骨/第1末節骨—
指 MCP・PIP・DIP 屈曲伸展第2〜5中手骨/基節骨/中節骨第2〜5基節骨/中節骨/末節骨側面から測定
指 外転・内転第3中手骨延長線第2・4・5指軸手背側から測定
母指 対立角度では表さず、母指先端と小指基部(または小指先端)との距離(cm)で表示
母指の外転は2方向の区別が必須。掌側外転=手掌面に直角(母指を天井へ立てる)/橈側外転=手掌面と同一平面で橈側へ開く。図で母指が手掌と同じ平面上を動いていれば橈側外転であり、これを掌側外転として示した図は誤り。

前腕回内・回外と肘屈伸の測定肢位

  • 前腕回内・回外:肩の回旋が入らないよう上腕を体幹に付け肘90°屈曲で測る。基本軸=上腕骨(旧基準では床への垂直線)、移動軸=手指を伸展した手掌面(参考可動域は回内・回外とも90°)。
  • 肘屈曲・伸展:基本軸=上腕骨、移動軸=橈骨で、前腕回外位で測る。軸が合っていても前腕が回外位でなければ誤り。
  • 手橈屈・尺屈:前腕回内位、基本軸=前腕の中央線、移動軸=第3中手骨(掌屈・背屈の移動軸は第2中手骨なので取り違えに注意)。

2-3 基本軸・移動軸③ 頸部・胸腰部

運動基本軸移動軸肢位・可動域
頸部 屈曲・伸展肩峰を通る床への垂直線外耳孔と頭頂を結ぶ線座位・頭部体幹の側面/60°・50°
頸部 回旋両側の肩峰を結ぶ線への垂直線鼻梁と後頭結節を結ぶ線腰かけ座位/左右各60°
頸部 側屈第7頸椎棘突起と第1仙椎棘突起を結ぶ線頭頂と第7頸椎棘突起を結ぶ線体幹の背面から/左右各50°
胸腰部 屈曲・伸展仙骨後面第1胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線立位・座位・側臥位。股関節の運動を入れない/45°・30°
胸腰部 回旋両側の上後腸骨棘(PSIS)を結ぶ線両側の肩峰を結ぶ線座位で骨盤を固定/左右各40°
胸腰部 側屈ヤコビー線の中点に立てた垂直線第1胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線座位または立位・体幹背面/左右各50°
胸腰部は運動方向ごとに基本軸が3通りに分かれる。屈伸=仙骨後面/回旋=両PSISを結ぶ線/側屈=ヤコビー線中点の垂直線。ヤコビー線は両腸骨稜上縁を結ぶ線(第4腰椎棘突起の高さの目安)。
胸腰部回旋の基本軸を「ヤコビー線中点の垂直線」「C7とS1の棘突起を結ぶ線」「仙骨後面」「肩峰を通る床への垂直線」とするのはいずれも誤り → 正しくは両側の上後腸骨棘を結ぶ線。

2-4 基本軸・移動軸④ 股・膝・足関節・足部

運動基本軸移動軸肢位・注意
股 屈曲・伸展体幹と平行な線大腿骨(大転子と大腿骨外顆の中心を結ぶ線)屈曲=背臥位・膝屈曲位/伸展=腹臥位・膝伸展位。骨盤を固定
股 外転・内転両側の上前腸骨棘(ASIS)を結ぶ線への垂直線大腿中央線(上前腸骨棘と膝蓋骨中心を結ぶ線)背臥位・股関節伸展位(中間位)。下肢を外旋させない。内転は反対側下肢を挙上しその下を通す
股 外旋・内旋膝蓋骨より下ろした垂直線下腿中央線(膝蓋骨中心と足関節内外果中央を結ぶ線)股・膝とも90°屈曲位
膝 屈曲・伸展大腿骨腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線)屈曲は股関節屈曲位で行う
足関節 背屈・底屈腓骨への垂直線第5中足骨膝屈曲位
足部 内がえし・外がえし下腿軸への垂直線足底面膝屈曲位・足関節0度
足部 外転・内転第1中足骨と第2中足骨の間の中央線(基本軸・移動軸とも)足底から見る・足関節0度
内転・外転の基本軸は「両ASISを結ぶ線への垂直線」。「両ASISを結ぶ線そのもの」とする選択肢は頻出のひっかけ。移動軸も大腿中央線であって下腿中央線でも「ASISと第2中足骨を結ぶ線」でもない。

【設問の欠陥/膝屈曲の移動軸】「運動方向と移動軸の組合せで正しいのはどれか(1つ選べ)」の型は、正答が一意にならないことがある。58回の出題では「股屈曲・伸展 ── 大腿骨」(公式正答)と「膝屈曲・伸展 ── 腓骨」の2肢が同時に成立している。上の表のとおり膝屈曲・伸展の移動軸は腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線)で、これは日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の基準そのままの記載であり誤りではない。57回でも同じ形(公式正答「股外転 ── 大腿中央線」に対し「膝屈曲 ── 腓骨」が併存)が出ている。試験では公式正答(58回=股屈曲・伸展 ── 大腿骨)を採る。

本番での手順:
① まず軸の名前が別の運動のものにすり替わっている肢を全部消す(大腿骨↔大腿中央線↔下腿中央線、第1中足骨↔第5中足骨、第2・第3中足骨間↔第1・第2中足骨間)。ここまでで大半は1つに絞れる。
② それでも2肢残ったら股関節の肢を採る。この型の主題は股関節の3方向(屈曲伸展/外転内転/外旋内旋)の軸の区別で、膝の肢は消去用に置かれているだけで正答にはされない。
③ 膝の肢は「基本軸か移動軸か」を読み直す。基本軸を問う問題なら「膝屈曲 ── 大腿骨」が正答(50回で実際に正答)、移動軸なら腓骨。どちらも事実として正しいので、設問がどちらを聞いているかだけが分かれ目。
④ 2つ成立すると気づいても悩まない。これは出題側の不備で知識不足ではない。想定解にマークして次へ進む。

股関節は運動方向ごとに基本軸が3通りに分かれる。屈曲・伸展=体幹と平行な線/外転・内転=両ASISを結ぶ線への垂直線/外旋・内旋=膝蓋骨より下ろした垂直線。図で運動方向を示す設問では先に運動方向を確定してから軸を選ぶ。背臥位で股・膝を90°屈曲させ下腿を左右に振っていれば外旋・内旋で、このとき「基本軸は体幹との平行線」は誤り → それは屈曲・伸展の基本軸。「移動軸は腓骨」も誤り → 腓骨は膝屈曲・伸展の移動軸で、股外旋・内旋の移動軸は下腿中央線。参考可動域は外旋・内旋とも45°なので「60度」も誤り。

足の3つの軸は取り違えが最頻出。「第5中足骨」が出たら背屈・底屈/「足底面」が出たら内がえし・外がえし/「第1・第2中足骨間の中央線」が出たら足部外転・内転。第2中足骨単独・第2と第3の間・第1中足骨単独はいずれも誤り。

足部の用語ルール

  • 足関節は背屈(伸展)・底屈(屈曲)と呼ぶ。「足底への動き=伸展」は誤り → 正しくは底屈
  • 内がえし=回外+内転+底屈の複合/外がえし=回内+外転+背屈の複合
  • 外反・内反は変形を意味する用語なので可動域測定には使わない(測定用語は外がえし・内がえし)
  • 足指の測定では背側に角度計を当てる(底側ではない)
  • 足部の外がえしは膝関節屈曲位で行う(伸展位ではない)