第2章|ICF(国際生活機能分類)

リハビリテーション医学 第2章

2-1 WHO分類ファミリーとICFの位置づけ

ICFは2001年にWHOが採択した国際生活機能分類。疾病を分類するICDとは目的がまったく違う。略称の取り違えがそのまま失点になる。

略称名称何を分類するか
ICD国際疾病分類疾病・傷害・死因の統計分類。現行はICD-11
ICF国際生活機能分類生活機能・障害・健康状態
ICF-CYICF児童青少年版ICFの派生(小児)。疾病分類ではない
ICHI国際保健行為分類医療行為・介入
ICIDH国際障害分類(1980年)ICFの前身。障害の階層モデル

「国際疾病分類はどれか」と問われたらICD。ICF・ICF-CY・ICHI・ICIDHはいずれも疾病分類ではない。

2-2 ICFの構成要素は6つ

ICFの構成要素は生活機能3つ(心身機能・身体構造/活動/参加)背景因子2つ(環境因子/個人因子)

構成要素意味マイナス面の呼び方
心身機能・身体構造体の働きと器官(筋力・関節可動性・呼吸・嚥下・言語表出・認知)機能障害・構造障害
活動課題や行為の個人による遂行(歩行・移動・食事・セルフケア)活動制限
参加生活・人生場面への関わり(就労・地域活動・社会的役割)参加制約
環境因子外的な物的・人的・制度的環境阻害因子(促進因子はプラス面)
個人因子年齢・性別・価値観・生活習慣など内的背景

健康状態(変調または病気)と6要素は双方向の矢印で結ばれる。心身機能が同程度でも、環境因子や個人因子しだいで活動・参加は変わる、という読み方をする。参加=生活・人生場面への関わりという定義はそのまま出題される。

健康状態(変調または病気)は構成要素に数えない。図には描かれるが、それ自体はICDが分類する領域であり、ICFの構成要素は上の6つ。「健康状態は構成要素のひとつ」は誤り。またICFは「障害の分類」ではない。マイナス面だけを取り出す枠組みは旧ICIDHで、ICFは生活機能全体を中立に記述する。

ICFの三大性格=①相互作用モデル(各要素が双方向に影響)②すべての人が対象(障害のある人限定ではない)③中立的(マイナスだけでなくプラスも記述)。加えて使用に関する倫理的ガイドラインがある

2-3 ICIDHからICFへの転換

ICIDH(旧)ICF(現)
機能障害(impairment)心身機能・身体構造
能力低下(能力障害)活動
社会的不利参加
マイナス面を一方向の流れで記述中立的用語+双方向の相互作用
背景因子なし環境因子・個人因子を追加

ICFとICIDHは相互補完ではなく後継(改定)関係。「能力低下」「社会的不利」はICIDHの用語なので、ICFの構成要素を問う設問では誤り。ICFは社会モデル一辺倒でもなく、医学モデルと社会モデルを統合した生物心理社会モデルに依拠する。

2-4 心身機能/活動/参加の振り分け

  • 心身機能…嚥下、呼吸機能、関節の可動性、言語表出、認知機能。動詞でも生理機能なら心身機能
  • 活動…歩行、屋外の移動、外出時の交通手段の利用、セルフケア能力。個人レベルの行為。
  • 参加…就労・職業適性、友人とのお茶会、地域行事。社会的役割への関与。

「活動と参加」は同じ章立てで扱われ、領域は学習と知識の応用/一般的な課題と要求/コミュニケーション/運動・移動/セルフケア/家庭生活/対人関係/主要な生活領域/コミュニティライフ・社会生活・市民生活。

紛れやすい語。対人関係・家庭生活・コミュニティライフは「活動と参加」だが、態度・支援と関係は環境因子行動様式は個人因子的要素で活動と参加の領域ではない。

評価情報をどこに置くか

情報分類
外出時の交通手段活動(移動という生活行為)
職業適性参加(就労という社会的役割)
認知機能心身機能・身体構造
住環境・家族関係・インフォーマルサービスの有無環境因子
教育歴個人因子(過去の経歴)

2-5 環境因子の5領域

  1. 生産品と用具(福祉用具・住宅設備)
  2. 自然環境と人間がもたらした環境変化
  3. 支援と関係(家族・友人・専門職の援助)
  4. 態度(周囲の人々の価値観・信念)
  5. サービス・制度・政策(制度、保健サービス、訪問リハビリテーションの利用)

環境因子の代表例=制度、利用可能な保健サービス、訪問リハの利用、住環境、家族関係、インフォーマルサービスの有無、家屋内の段差。いずれも本人の外側にあるもの。環境因子だけは、生活機能を後押しする促進因子と、妨げる阻害因子の両面で記述する。

2-6 環境因子と個人因子の線引き

個人因子(内的)環境因子(外的)
年齢・性別・教育歴・職業歴制度・サービス・政策
ライフスタイル・生活習慣・価値観住環境・段差・福祉用具
本人の高い意欲・性格・行動様式家族・友人・専門職の支援と関係
信仰する宗教周囲の人々の態度

ライフスタイルは環境因子ではなく個人因子。「本人の意欲」も個人因子。逆に「支援」「態度」という語は環境因子側に置かれている。

2-7 評価点(コーディング)

構成要素第一評価点第二評価点第三評価点
心身機能機能障害の程度・大きさ(0なし〜4完全)
身体構造構造障害の程度・大きさ変化の性質(欠損・部分欠損・付加・異常寸法)部位
活動と参加実行状況=している活動(現在の環境での困難度)能力=できる活動(標準的環境・支援なしの困難度)
環境因子+=促進因子/.(ピリオド)=阻害因子とその程度

数で覚える。機能=評価点1つ/構造=3つ(程度・性質・部位)/活動と参加=2つ(実行状況・能力)。第一評価点はどれも「程度・困難度」を示す。

頻出の取り違え。心身機能の第一評価点は「性質」ではなく程度。身体構造で部位を示すのは第二ではなく第三評価点。活動と参加の第二評価点は「支援あり」ではなく支援なし(標準的環境)の能力。環境因子の+は阻害ではなく促進因子。促進・阻害はあくまで環境因子の概念で、活動と参加の評価点ではない。

2-8 ICFコアセット

ICFのコードは約1,500に及び全部は使えない。そこで疾患・状況ごとに必要なカテゴリーを抜粋したものがコアセット。

  • 版は包括版(comprehensive)と短縮版(brief)。簡素な評価に用いるのは短縮版。「一般セットと包括セットの2種類」という整理は誤り。
  • 包括版でも全コードは評価しない。あくまで関連カテゴリーの抜粋。
  • 疾患別に多数開発済み。脳卒中・腰痛・関節リウマチ・うつなど。
  • 脳卒中Brief core setの活動領域には歩行が入る。痛みの感覚・運動耐容能・関節の可動性・レクリエーションとレジャーは中核項目に含まれない。
  • 目的はICDと異なる。ICDの代わりに使うものではない。

2-9 ICFで整理する臨床情報

理学療法評価でいう社会的情報は、ICFの環境因子・個人因子・参加にあたる情報。職業、趣味、配偶者の有無、家族構成、家屋内の段差、経済状況、キーパーソンなど。

体重・身長・血圧・関節可動域・筋力は社会的情報ではない。身体計測値は心身機能・身体構造の情報。「該当しないのはどれか」型では身体計測値が紛れていないか探す。

HAD(入院関連機能障害)=高齢者が入院に伴う安静・不動をきっかけにADL・移動能力を落とす現象。原疾患の悪化ではない点が鑑別の鍵で、対策は早期離床。AEは急性増悪(原疾患そのものの悪化)、ICU-AWは集中治療中に生じる四肢のびまん性筋力低下、PICSは集中治療後の身体・認知・精神の障害。ICU管理がなければICU-AW・PICSは該当しない。NYHA心機能分類Iは身体活動に制限がない状態。

2-10 理念・QOL尺度・研究用語

ノーマライゼーション

障害の有無にかかわらず誰もが地域で当たり前に暮らせる社会を目指す理念。中心は障害により受ける差別の解消と社会参加の保障

本人の心身機能や身体構造を「正常化」する概念ではない。変えるのは社会・環境の側。障害者の隔離や大規模施設(コロニー)への入所推進は、ノーマライゼーションが批判してきた対象で正反対。

SF-36

包括的な健康関連QOL尺度で8下位尺度=身体機能/日常役割機能(身体)/体の痛み/全体的健康観/活力社会生活機能/日常役割機能(精神)/心の健康。身体的サマリー(PCS)と精神的サマリー(MCS)に集約する。

栄養状態・睡眠の質・筋力・認知機能・環境因子はSF-36の下位尺度ではない。環境因子はICFの用語。

尺度と研究用語

  • 名義尺度=分類のみ(性別・血液型)/順序尺度=順位(Likert尺度・MMTの段階)/間隔尺度=等間隔で絶対零点なし(摂氏温度)/比率尺度=絶対零点あり(重さ・長さ・時間)
  • 母集団=対象全体、標本=実際に研究の対象となるもの
  • 交絡因子=2つの要因の関連をかく乱する第三の因子。無作為化・層別化・多変量解析で制御する。