第2章|言語症状

失語症 第2章

2-1 錯語・新造語・発話異常

錯語の分類

種類内容
音韻性錯語(形式性錯語)目標語と音韻的に類似「桜」→「さこら」、「うきわ」→「うしわ」
意味性錯語(語性錯語)意味的に関連した語「魚」→「ねこ」
無関連錯語目標語と無関連「うきわ」→「うちわ」(音も意味も無関連…注意)
新造語意味不明の語「時計」→「せもは」
再帰性発話常に同じ発話常に「とのとの」

形式性錯語の例:「太鼓」→「たこ」(音韻的類似)、「うきわ」→「うしわ」。意味性錯語の例:「先生」→「がっこう」。「犬」→「ドッグ」は意味は同じで別言語 → これは迂言ではなく語性錯語(語彙間の置換)。

その他の発話異常

症状内容
反響言語(エコラリア)相手の発話をそのまま繰り返す
語間代語の一部を繰り返す保続(「そうですですです」)
迂言回りくどい表現(「えーと、あれ」)
補完現象文の末尾を自動的に補う
ジャルゴン意味不明な流暢な発話(意味性・新造語性)
保続前の反応が持続する
語漏意図せず語が漏れる(流暢性失語)

「語間代は語漏の一種」は誤り → 語間代は保続の一種。「発語失行 → 語漏」の組み合わせは誤り → 語漏は流暢性失語でみられる。「心像性 → 具象語」は正しい組み合わせ(心像性が高い = 具象的な語)。

2-2 発話の流暢性

流暢性の評価指標

流暢性の主要指標:

  • 発話の長さ(1発話の語数)
  • 文法的複雑さ
  • プロソディ(韻律)
  • 努力性の有無

「保続は流暢性の評価指標」は誤り → 保続は流暢性の指標ではない。「1/10ぐらいの頻度で発せられる最も長い発話」は流暢性の重要な指標。「標準失語症検査のプロフィールから流暢性を診断できる」は正しい。「伝導失語は非流暢性失語の一つ」は誤り → 伝導失語は流暢性失語。

ボストン失語症診断検査の流暢性尺度

流暢性尺度に含まれるもの:

  • 句の長さ・努力性・文法的形態・錯語
「喚語」は流暢性尺度に含まれない

2-3 発語失行

発語失行の特徴

✅ 発語失行にみられる:

  • 構音運動の探索(探求)
  • イントネーションの平板化
  • 努力性の発話
  • 発話速度の低下
  • 音の歪み・音の置換
  • 一貫しない音の誤り

❌ 発語失行にみられない:

  • 気息性嗄声(声質の異常)→ 痙性構音障害などでみられる
  • 声質の異常

「気息性嗄声は発語失行の特徴」は誤り → 発語失行に声質異常はない。「一貫した音の誤りは発語失行の特徴」は誤り → 発語失行は非一貫性が特徴。一貫した誤りは痙性構音障害。

発語失行 vs 痙性構音障害

特徴発語失行痙性構音障害
口唇音→舌音置換✅(あり)✅(あり)
音の歪み
鼻音への置換❌(なし)
一貫した誤り❌(非一貫性)
音の省略

「発語失行にあって痙性構音障害にないのは口唇音の舌音への置換」は誤り → 口唇音の舌音置換は発語失行の特徴だが痙性にもある。正しくは「鼻音への置換は痙性にあって発語失行にない」。

音韻性錯語 vs 発語失行の鑑別

仮名書字(書取)が鑑別に有用
  • 発語失行:書字は保たれる可能性がある
  • 音韻性錯語:書字にも音韻性の誤りが出る

2-4 読み書きの障害

錯読の分類

錯読の種類特徴出現する障害
音韻性錯読音韻的に類似した語への置換音韻失読・伝導失語
意味性錯読意味的に関連した語への置換(「犬」→「猫」)深層失読
語彙化錯読非語を語に変換(「竹藪」→「たやけぶ」など)表層性失読
視覚性錯読視覚的に類似した語への置換
類音性錯読同音・類音語への置換語義失語・超皮質性感覚失語
規則化錯読不規則語を規則的に読む表層性失読(仮名音読に適用)
逐字読み1文字ずつ読む純粋失読

「意味性錯読は純粋失読の特徴」は誤り → 純粋失読の特徴は逐字読み・語長効果。「音韻性錯読は表層性失読の特徴」は誤り → 音韻性失読の特徴。「規則化錯読は漢字単語の音読でみられる」は誤り → 規則化錯読は仮名単語(不規則読みを規則化)でみられる。「語彙化錯読は仮名単語の音読でみられる」は正しい(仮名非語を語に変換)。

純粋失読の特徴

  • 逐字読み
  • 語長効果(語が長いほど成績が低下)
  • 運動覚促通(指でなぞると読める)
  • 右同名性半盲を伴う
  • 古典型病巣:後頭葉+脳梁膨大部
  • 非古典型病巣:左縁上回(左角回ではない)
  • 類音性錯読はみられない(純粋失読の特徴ではない)

「純粋失読に類音性錯読がみられる」は誤り。「非古典型純粋失読の病巣は左角回」も誤り → 左縁上回。

書字障害の分類

症状内容
過剰書字右半球損傷で出現
左角回損傷仮名優位の書字障害(漢字優位ではない)
失行性失書他の失行とは独立して出現することがある
前頭葉性失書文字の選択・配列の障害
脳梁損傷左一側の書字障害

錯書の分類

錯書の種類
形態性錯書「侍」→「待」(形が類似)
類音性錯書「親友」→「新タ」(音が類似)
音韻性錯書音韻的置換

「貝」→「め」の呼称は形式性錯語(音韻的類似)であり形態性錯書ではない。

書き取りと書称の関係

  • 書き取り可能でも書称が困難:喚語障害(語想起障害)が原因
  • 書称が困難でも書き取りができる:意味的想起の問題

「書き取りができれば書称はできる」は誤り → 書称は語想起が必要。「漢字が書ければ平仮名は書ける」も誤り → 漢字と仮名は独立した経路。

2-5 純粋語聾

  • 語音認知の障害(音声言語の了解ができない)
  • 書き取り(書取)で成績低下(語音認知が必要)
  • 純音聴力は保たれる(閾値上昇なし)
  • ABR(聴性脳幹反応)は正常(末梢聴覚は正常)
  • 一側性脳病変でも生じうる(両側性が多いが一側でも)
  • 失音楽を伴う(環境音の理解障害も伴いうる)
  • 語音弁別能は低下する(正常ではない)
  • 皮質聾とは同義ではない

「純粋語聾は一側性脳病変では生じない」は誤り。「ABRにて異常を示す」は誤り。「純音聴力検査で大幅な閾値上昇」は誤り。「語音弁別能は正常」は誤り。「純粋語聾と皮質聾は同義」は誤り。「環境音の理解障害を伴う」は誤りとされることがあるが失音楽は伴う。

2-6 語音認知と言語性短期記憶

語音認知障害が困難にする課題

語音認知障害があると困難になる課題(聴覚入力を要する):

  • 非語復唱
  • 仮名1文字の書取
  • モーラ抽出
  • 語音弁別

語音認知障害があっても可能な課題:

  • 呼称・読解・非語音読(聴覚入力不要)

「語音認知障害 → 呼称が困難」は誤り → 呼称は視覚入力。「語音認知障害 → 非語音読が困難」も誤り → 非語音読は視覚入力。

復唱障害の要因

復唱成績を低下させる要因:

  • 音韻処理障害
  • 語音認知の障害
  • 発話運動の障害(発語失行)
  • 聴覚的把持力の障害
  • 音韻性錯語
語の意味理解障害・文字-音韻変換障害は復唱障害の要因ではない(復唱に意味理解は不要)

2-7 意味システムと認知神経心理学的モデル

意味システムの障害

意味システムが損傷されても可能なもの:

  • 復唱(意味を介さないルートを使用)

意味システムの障害で低下するもの:

  • 聴覚的理解・読解・呼称・書称(すべて意味処理が必要)

意味システムが障害されても成績が低下しない課題

  • 非語を復唱する(意味不要)
  • 仮名単語を音読する(意味不要の経路あり)
  • 仮名1文字の指さし

意味システム障害で低下する課題:

  • 線画の呼称・仮名単語の意味理解・漢字単語の意味理解