第2章|症状と言語症状

対応過去問 48問/難易度 ★★★★☆

2-1 錯語の種類

錯語とは意図した言葉とは異なる言葉が産生される症状

種類定義例(目標語:さくら)
音韻性錯語音の置換・省略・転置(同言語内)「さくら」→「さこら」「たくら」
意味性錯語(語性錯語)意味的に関連する別の語「さくら」→「うめ」「はな」
形式性錯語音韻的に類似した実在語「うきわ」→「うちわ」
新造語実在しない語音の羅列「さくら」→「せもは」
無関連錯語音・意味とも無関係な語「さくら」→「ねこ」
迂言目標語を別の表現で代替「さくら」→「春に咲くピンクの花」
⚠️ 形式性錯語 vs 音韻性錯語(頻出の引っかけ)
形式性錯語:必ず実在する語への置換(うきわ→うちわ)
音韻性錯語:実在しない語音でもよい(さこら)

ジャルゴン

錯語・新造語が連続して意味をなさない発話。ウェルニッケ失語に多い

  • 音韻性ジャルゴン:音韻性錯語が連続
  • 意味性ジャルゴン:意味性錯語が連続(内容語は実在するが意味が通じない)
  • 新造語ジャルゴン:新造語が連続

2-2 その他の発話症状

保続(perseveration)

直前に産生した語・音が、次の課題でも繰り返し出現する症状。

  • 語間代:同じ語を繰り返す(「そうですそうですそうです」)
  • 前頭葉損傷・重度失語に多い

反響言語(エコラリア)

相手の発話をそのまま繰り返す症状。超皮質性感覚失語・混合型超皮質性失語に特徴的。

再帰性発話(recurring utterance)

意図に関わらず常に同じ語・音節しか産生できない。全失語の重症例に多い。

例:何を聞いても「とのとの」としか言えない。

補完現象

系列語(数・曜日・歌など)の途中から言うと、後を続けられる現象。

超皮質性失語に特徴的。復唱が保たれていることと関連する。

接近行為

目標語に近づこうと何度も修正を繰り返す行動。伝導失語に特徴的。

例:「時計」→「とけ…とき…とけい」

2-3 流暢性の評価

流暢性は失語型の鑑別において最初に判断する重要な指標。

指標非流暢流暢
句の長さ1〜4語5語以上
発話速度遅い正常〜速い
努力性ありなし
プロソディ平板・異常正常
文法形態素少ない(失文法)保たれる
実質語相対的に多い機能語も多い
⚠️ 流暢性は1分間の発話語数だけで判断しない
句の長さ・努力性・プロソディを総合的に評価する

2-4 発語失行

構音運動のプログラミング(運動企画)の障害

筋力低下や麻痺による構音障害(運動障害性構音障害)とは異なる。

発語失行の特徴

  • 構音運動の探索・試行錯誤(音の探索行動)
  • 音の歪み(一貫しない
  • イントネーションの平板化
  • 発話速度の低下・努力性の発話
  • 語長効果(長いほど困難)
  • 音の置換(口唇音→舌音など)
  • 意図性と自動性の乖離(意図的には失敗するが自動的場面では成功)

発語失行 vs 痙性構音障害

特徴発語失行痙性構音障害
誤りの一貫性一貫しない(変動する)一貫している
音の探索行動ありなし
語長の影響あり(長いほど困難)少ない
意図性と自動性の乖離ありなし
鼻音への置換ありあり
⚠️ 「一貫した音の誤り」は痙性構音障害の特徴
発語失行は「一貫しない」が原則

ブローカ失語と発語失行の関係

ブローカ失語に発語失行が合併することは多いが、両者は独立した症状

  • 発語失行の重症度と失語症の重症度は必ずしも平行しない

2-5 復唱障害のメカニズム

聴覚入力 ↓ 語音認知(音を言語音として認識) ← ここが障害 → 復唱↓・書き取り↓ ↓ 音韻的短期記憶(把持) ← ここが障害 → 長文の復唱↓ ↓ 音韻出力バッファ ← ここが障害 → 音韻性錯語↑ ↓ 構音運動プログラム ← ここが障害 → 発語失行 ↓ 発話出力

復唱を低下させる要因

  • 語音認知の障害(書き取りも同時に低下する)
  • 聴覚的把持力の低下(文が長いほど困難)
  • 音韻性錯語の頻発
  • 発語失行
⚠️ 「文字→音韻変換の障害」は復唱障害の原因にならない
(音読には影響するが復唱には関係しない)

2-6 意図性と自動性の乖離

失語症の特徴的な現象のひとつ。

  • 意図的に産生しようとすると失敗するが、自動的な場面では正しく産生できる
  • 例:「1,2,3…」は言えるが、「3の次は何ですか?」には答えられない
  • 系列語・歌・挨拶言葉などで観察されやすい
💡 補完現象・反響言語も「自動性が保たれている」という共通点がある

確認問題

Q1. 「うきわ」を「うちわ」と呼称した。これは何錯語か。
Q2. 発語失行と痙性構音障害を鑑別する最も重要な特徴はどれか。
Q3. 復唱障害の要因として「語音認知の障害」がある場合、同時に低下する課題は何か。
Q4. 超皮質性感覚失語に特徴的な発話症状を2つ挙げよ。
Q5. 「一貫した音の誤り」は発語失行か痙性構音障害か。
Q6. 意図性と自動性の乖離が観察されやすい言語課題の例を挙げよ。
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