第2章|心理療法② 認知行動・来談者中心・その他技法

対応過去問 25問/難易度 ★★★★☆
この章のねらい:臨床心理学で最も出題数が多いのが「心理療法」の組合せ問題です(精神分析以外で25問)。攻略の鍵は「療法↔提唱者↔技法↔背景理論」の一枚マップ。ここを作れば毎回2〜3問が確実に取れます。STの臨床でも、認知行動療法の考え方は吃音・音声障害・高次脳の行動変容に、来談者中心の傾聴は障害受容の面接にそのまま生きます。吃音高次脳機能障害のノートと合わせて、行動・認知アプローチの土台にしてください。

2-1 心理療法の全体像 ― 学派マップ

まず4大系統を、提唱者・中心技法・背景理論でざっくり掴みます。ここが組合せ問題の骨格です。

系統代表的療法(提唱者)中心技法・キーワード背景理論
精神分析系精神分析(Freud)・遊戯療法自由連想・転移分析・夢分析無意識・心的構造
行動・認知系行動療法(Skinnerら)・認知療法(Beck)・論理療法(Ellis系統的脱感作・自動思考の修正学習理論・認知理論
人間性心理学系来談者中心療法(Rogers)・ゲシュタルト療法(Perls共感・自己一致/「今ここ」の気づき自己実現・主体性
その他家族療法・森田療法・内観療法・自律訓練法(Schultzジョイニング/あるがまま/自己暗示システム論ほか
頻出の正しい組合せ:行動療法=Skinner(オペラント条件づけ)/認知療法=Beck/自律訓練法=Schultz/来談者中心療法=Rogers/精神分析=Freud/論理療法(REBT)=Ellis。人名を取り違えさせる問題が定番。

誤った組合せに注意:「遊戯療法―精神交互作用」は誤り(精神交互作用は森田療法の概念)。正しくは 認知療法―自動思考の修正/家族療法―リフレーミング/行動療法―古典的条件づけ/来談者中心療法―共感的理解。

2-2 行動療法 ― 学習理論に基づく

行動療法は、観察可能な行動・症状そのものを対象とし、刺激―反応(S-R)の図式で行動をとらえます。不適応行動は誤学習または未学習の結果と考え、無意識や遺伝・欲求不満には原因を求めません。

代表的な技法

技法内容
系統的脱感作リラックス状態で不安階層を低い方から段階的に提示(逆制止)
エクスポージャー(曝露)不安刺激に直面させ馴化を図る。一気に最大刺激=フラッディング
トークンエコノミー望ましい行動にトークン(代用貨幣)を与えて強化
シェイピング目標行動を段階的に形成(スモールステップ)
呼吸法・リラクセーション過緊張の低減に用いる

行動療法「でない」ものに注意:コラム法(思考記録)・認知再構成は認知療法の技法。自由連想・転移分析は精神分析。エンカウンター・グループは人間性心理学。行動療法の特徴=「観察可能な行動を対象」「S-R図式」「誤学習・未学習」。

2-3 認知療法・認知行動療法

認知療法(Beck)は、状況に対して瞬間的に浮かぶ自動思考に気づき、その妥当性を治療者と患者が協働で検証(共同経験主義/協同的実証主義)して修正します。

認知のゆがみ(推論の誤り)

  • 恣意的推論:根拠が乏しいのに否定的な結論を出す
  • 選択的注目:一部の否定的側面だけに注目する
  • 過度の一般化:一事例を全般に拡大する
  • 誇張と矮小化(拡大解釈と過小評価)
  • 個人化:無関係な出来事を自分のせいにする
  • 二分法的思考(全か無かの思考)

ゆがみ「でない」もの:非言語的思考は思考の「様式」であって認知のゆがみではない。投影は精神分析の防衛機制、集合的無意識はユングの概念で、いずれも認知のゆがみではない。認知療法の関連語=スキーマ・自動思考・推論の誤り

整理:認知療法の技法=コラム法(思考記録)・認知再構成。行動療法(曝露・トークン・シェイピング)と組み合わせたものが認知行動療法(CBT)。「認知=考え方」「行動=ふるまい」に焦点、と対で覚える。

2-4 来談者中心療法(クライエント中心療法)

ロジャーズ(Rogers)が提唱。人が本来もつ自己実現傾向を信頼し、解釈や指示を行わない非指示的療法です。自己概念と経験の不一致(自己認知のゆがみ)を不適応とみます。

セラピストの中核3条件(最頻出):
自己一致(純粋性)=関係の中で自分に正直であろうとする
無条件の肯定的関心(配慮・受容)=評価せず受け入れる
共感的理解=相手の世界を内側から理解する

積極的傾聴の技法として、感情の受容・感情の反射・感情の明確化・内容の繰り返しを用います。

来談者中心療法「でない」もの:転移/逆転移の分析・幼少期の親子関係の解明は精神分析の技法。認知の歪みの変容は認知療法。無意識への焦点づけも精神分析。論理的な反証(説得・否定)は傾聴の技法ではない(受容的傾聴と正反対)。外向性・実証性は3条件に含まれない。

2-5 その他の技法 ― ゲシュタルト・家族・森田・内観・療育

療法提唱者・出自キーワード
ゲシュタルト療法Perls/人間性心理学「今ここ」での気づき、体験の統合
家族療法システム論ジョイニング・多方面への肩入れ・リフレーミング
森田療法日本(森田正馬)あるがまま・目的本位、精神交互作用
内観療法日本(吉本伊信)「してもらったこと・して返したこと・迷惑をかけたこと」で自己を省察
自律訓練法Schultz自己暗示による心身の弛緩
箱庭療法ユング派の影響備え付けの玩具と砂箱を用いる
日本で確立された心理療法=森田療法・内観療法(+臨床動作法)。弁証法的行動療法(Linehan・米)、行動活性化療法(欧米)、能動的空想法(ユング・スイス)は海外発。

療育・支援の関連用語(ST頻出)

用語正しい内容
ワークシステムTEACCHの構造化の一手法(何を・どれだけ・終わりを視覚的に示す)
モデリング手本を示す観察学習
PECS絵カード交換式コミュニケーション
エクスパンション子どもの発話を文法的に拡張する
つながる知識:構造化・PECS・モデリングは言語発達障害学の療育アプローチと直結します。ここで用語の正しい定義を押さえておくと、発達領域の設問でも取りこぼしません。

2-6 遊戯療法(プレイセラピー)

言語表現が十分でない子どもに対し、遊びを表現・コミュニケーションの手段として用いる心理療法です。特定学派に限定されず、受容的・非指示的に行います。

アクスライン(Axline)の8原則の要点:温かい関係(ラポール)・あるがままの受容・許容的雰囲気・感情の察知と反射・子ども自身が変化の責任をもつ・非指示(子どもが導く)・治療を急がない・必要最小限の制限(リミットセッティング)。

遊戯療法の誤り選択肢の典型:「誤った認知の仕方を現実的な見方に修正する」=認知療法の説明で誤り。「具体的に指示をする」「否定的感情を表出させない」「精神分析に特化」も原則に反する誤り。否定的な感情も自由に表出させ受容する。