第3章|乳幼児期の発達

対応過去問 16問/難易度 ★★★★☆
この章のねらい:乳幼児期は知覚・社会性・心の理論・愛着が一気に育つ、国試最頻出の範囲です。「どの現象が何か月・どの段階で出現するか」の月齢ひっかけが繰り返し出ます。ここはSTにとって最重要で、共同注意・三項関係・社会的参照は前言語期コミュニケーションの中核心の理論は語用論・自閉スペクトラム支援視知覚・気質は評価の基礎です。正常な出現時期を体に入れておくことが、言語発達障害の早期発見に直結します。

3-1 新生児期の反応と運動発達 ― 「もうある」か「まだない」か

新生児期(生後4週まで)にすでにみられる反応と、生後9か月頃の「9か月革命」で出現する反応を区別できるかが問われます。

時期みられる反応
新生児期からある自発的微笑(新生児微笑)共鳴動作(原初的模倣)情動伝染(他児の泣きにつられて泣く)・原始反射
生後9か月頃から三項関係(自己・他者・対象)・社会的参照・共同注意・指さし

「新生児期にまだ現れない」→三項関係・社会的参照(自発的微笑・共鳴動作・情動伝染はすでにある)。
「新生児期からみられる」→情動伝染(パラシュート反応=6〜9か月/分離不安=8か月頃/内言=幼児期後期/三項関係=9か月頃で、いずれも新生児期より後)。

粗大運動の発達マイルストーン

月齢粗大運動微細運動
3〜4か月首すわり
5〜6か月寝返り
7〜9か月腹ばい(ずりばい)・お座り物の持ち替え
10〜12か月つかまり立ち・一人立ちピンサーグリップ(指先でつまむ)
12か月〜歩行なぐり書き・積み木
頻出:「生後7〜9か月で可能」→腹ばい。一人立ち(11〜12か月)・なぐり書き(1歳過ぎ)・積み木を積む(1歳以降)・指先でつまむ(10か月前後で完成)は時期が合わない。原始反射(モロー・手掌把握・ATNRなど)が消失することで随意運動・姿勢反応(パラシュート反応など)が出現する流れも押さえる。

3-2 乳児の知覚研究法 ― 話せない乳児をどう調べるか

乳児は言葉で答えられないため、見る時間・崖を渡るかなどの行動から知覚を推定します。研究法と「何を測るか」の対応が頻出です。

研究法何を測る備考
選好注視法視覚的弁別・知覚(ファンツ)どちらを長く見るかで調べる
馴化・脱馴化法乳児の知覚・弁別・記憶反復で反応が下がり、新刺激で回復するか
視覚的断崖奥行き知覚(ギブソンとウォーク)崖の手前で止まるか。社会的参照も検討できる

研究法↔対象の取り違え(最頻出):
乳児の視知覚研究=選好注視法・視覚的断崖(ストレンジ・シチュエーション法=愛着、絵画統覚検査/TAT=人格検査、ストループテスト=注意、はいずれも視知覚研究ではない)。
「三つ山問題」=視点取得(脱中心化)で対象の永続性ではない/「ストレンジ・シチュエーション法」=愛着/「サリーとアン課題」=誤信念(心の理論)/「馴化・脱馴化法」=乳児の知覚・弁別で友人関係ではない。
視覚的断崖で検討できるのは奥行き知覚・社会的参照(誤信念・自己中心性・延滞模倣ではない)。

3-3 社会性の発達 ― 月齢のマイルストーン

社会性は月齢で確認されます。数か月ずらした選択肢で作られるため、標準的な出現時期を正確に。

時期社会性の発達
生後1か月頃情動伝染(伝染泣き)
2〜3か月頃社会的微笑
9か月頃社会的参照・共同注意・三項関係・指さし(9か月革命)
18か月頃自己の鏡像理解(鏡映自己認知・マークテスト通過)・象徴機能
4〜5歳頃心の理論(誤信念の理解)

「9か月ころ社会的参照が可能になり始める」→正しい
「3歳ころ社会的微笑」(実際は2〜3か月)・「9歳ころ心の理論」(実際は4〜5歳)・「12歳ころシンボル機能」(実際は1歳半〜2歳)は時期がずれた誤り
「生後3か月 ― 心の理論」は誤り(心の理論はおおむね4歳頃と段違いに遅い)。

社会的参照とは

社会的参照=乳児が不確実な状況で、養育者など信頼する他者の表情を手がかりに、その状況が安全かどうかを判断すること。三項関係の成立を背景に生後9か月頃から現れます。視覚的断崖の実験で、乳児が崖の手前で母親の表情を見て、笑顔なら渡り不安顔なら止まるのが代表例です。

社会的参照と紛らわしいもの:「共感して関わり感情を調整する」=情動調整、「無表情に不安になる」=スティルフェイス実験、「顔様図版を注視」=顔選好、「相互の視線が合う」=アイコンタクト。「他者の表情で状況の安全性を判断」だけが社会的参照

3-4 心の理論・気質・自己意識

心の理論と誤信念課題

心の理論=他者が自分とは異なる信念・知識・意図をもつことを推測する能力。測定するのが誤信念課題(サリーとアン課題・スマーティ課題)で、4〜5歳頃に通過します。

「心の理論」を測定する課題=誤信念課題(符号課題=処理速度、ジレンマ課題=道徳性、文配列課題、保存課題=具体的操作、ではない)。
心の理論が不可欠な行動=ごっこ遊び(役割を演じ他者視点をとる)・相手に分かるように話す(聞き手の知識状態を推測=語用論的能力)。あいさつ・親への反抗・甘えるは心の理論を要しない。

気質(テンペラメント)

  • 気質=生まれつきの行動傾向で、生物学的基盤が想定され、乳児期から観察される(知能とは別概念)。
  • トマス&チェスの3類型(扱いやすい子・扱いにくい子・出だしの遅い子)。「A・B・C・Dの4タイプ」は誤り
  • 気質と養育環境の適合の良さ(goodness of fit)が発達に影響する。

自己意識

鏡映自己認知(ルージュ/マークテスト)・所有の主張・照れ(羞恥)・嫉妬などは自己意識(自己概念)の成立を前提とします。一方、「2つの持ち物のほしいほうを尋ねられて応答する」ような好き嫌いの表出(選好応答)は、より早期から可能で自己意識を必要としません

幼児期(前操作期)の特徴の整理:他者の思考を推測し始める(心の理論の芽生え)・ことばで自分の行動を調整する・二次的感情(誇り・恥・罪悪感)の出現・性の区別への気づき、は幼児期の特徴。一方量(数)の保存は具体的操作期(学童期)で、幼児期の特徴ではない

3-5 愛着の発達段階 ― 人見知りはいつ出るか

ボウルビィは愛着の形成を4段階でとらえました。人見知り(見知らぬ人への不安)・分離不安が出現する時期が問われます。

段階時期の目安特徴
第1段階〜生後3か月頃人一般への定位と発信(相手を選ばない)
第2段階3〜6か月頃一人または数人の特定対象への定位と発信
第3段階6か月頃〜発信・移動による特定対象への接近の維持人見知り・分離不安が出現
第4段階3歳頃〜目標修正的な協調性・内的作業モデルの形成
頻出:「人見知りが出現する段階」→第3段階(発信及び移動による特定対象への接近の維持)。内的作業モデルは第4段階以降に関わる概念。
つながる知識:共同注意・三項関係・指さし・社会的参照(9か月)は、言語発達障害学ノートで扱う前言語期コミュニケーションそのものです。これらが育ってはじめて有意味語・語彙が伸びます。心の理論(4〜5歳)は、聞き手に合わせて話す語用論の土台。第4章では、これらが育った先の児童期・青年期を扱います。