第4章|児童期・青年期

対応過去問 16問/難易度 ★★★☆☆
この章のねらい:児童期・青年期は各理論の発達段階が集中して問われる範囲です。「児童期=ピアジェ具体的操作期・エリクソン勤勉性・フロイト潜伏期」という三点セットと、青年期のアイデンティティ(マーシャの4地位)が二大テーマ。STにとっては、学齢期の言語・学習支援(読み書き・語用論)や、思春期・青年期の障害受容・自己意識への配慮につながります。仲間関係(ギャング/チャム/ピア)の順序も頻出です。

4-1 児童期(学童期)の発達 ― 具体的操作・勤勉性・潜伏期

児童期(およそ6〜11歳)は各理論で次のように位置づきます。この三点セットが土台です。

理論児童期の位置づけ
ピアジェ具体的操作期(保存・可逆的思考・具体物の論理的思考)
エリクソン勤勉性 対 劣等感
フロイト潜伏期(性的関心が潜伏)

児童期に初めて現れるもの

  • メタ認知(自分の思考を客観視する力)が発達。
  • 二次的ことば(文脈に依存しない書きことば的な言語)が発達。
  • 二次的心の理論(「AはBがCと思っていると考える」という入れ子の心的状態の推論)が可能に。
  • ギャング集団(ギャングエイジ)=同性・同年代で結束する閉鎖的仲間集団が児童期後半に出現。
  • コンピテンス(有能感)の低下=自己評価が現実的になることで生じやすくなる。
  • 多面的な自己認知をするようになる。

児童期の特徴でないもの:並行遊び(幼児期前半。児童期はルールを共有する協同遊び)/二項関係コミュニケーション(乳児期前半)/前操作期(幼児期。児童期は具体的操作期)/向社会的行動(幼児期からみられ、児童期に初めて現れるものではない)/役割実験(青年期)。
「ギャング集団 ― 児童期」は正しい組合せ(チャム集団は前思春期・親密性は成人前期・早期完了と停滞は別段階)。

遊びと仲間集団の発達順序

遊びの発達(パーテン)仲間集団の発達
一人遊び→傍観→並行遊び(幼児期前半)→連合遊び→協同遊び(児童期)ギャング集団(児童期・同一行動で結束)→チャム集団(前思春期・同質性の確認)→ピア集団(青年期・異質性を認め合う)

4-2 青年期の発達 ― 形式的操作・アイデンティティ・心理的離乳

青年期は各理論で次のように位置づきます。第二次性徴という身体的急変とともに、心理面が大きく動く時期です。

理論・概念青年期の位置づけ
ピアジェ形式的操作期(抽象的・仮説演繹的思考・メタ認知)
エリクソン同一性(アイデンティティ)の確立 対 同一性拡散
フロイト性器期(潜伏期は児童期)
ホリングワース心理的離乳(親からの精神的自立)

青年期の心理的特徴

  • 第二次性徴による急激な身体変化。
  • 心理的離乳(第二の個体化=親からの心理的自立)が進む。
  • 仲間からの同調圧力への感受性が高まる(親より仲間の影響が強くなる)。
  • 権威・社会的規範に批判的になる。
  • 自己意識(自意識)がむしろ高まる(低くなるは誤り)。
  • 自我の確立過程で孤独感を抱きやすい。スチューデントアパシー(学業からの撤退・無気力)もみられる。
  • 現実的な時間的展望をもつようになる。モラトリアムのなかで役割実験をする。

青年期の特徴でないもの:自律性の獲得(幼児期前期)/ギャングエイジ(児童期)/脱中心化(幼児期・前操作期からの移行)/世代継承性(生殖性)(成人中期)/感覚運動期(乳児期)/潜伏期(児童期)/自己中心性(幼児期・前操作期)/エキスパート化(熟達)(成人期以降)。
「思春期は自己意識が低くなる」→誤り(自意識はむしろ高まる)。

4-3 マーシャの自我同一性地位 ― 危機と傾倒の2軸

マーシャ(Marcia, J.E.)は、エリクソンの同一性概念を「危機(crisis=探索)」「傾倒(commitment=積極的関与)」の2軸の有無で操作的に整理し、4つの同一性地位に分類しました。

地位危機(探索)傾倒(関与)
同一性達成経験したあり
モラトリアム最中模索中
早期完了(フォークロージャー)なしあり
同一性拡散問わず/経験の有無で下位分類なし
頻出:「小さいときに周囲に示された将来の目標を、疑問を持たずに受け入れている」→早期完了(危機なし・傾倒あり)。傾倒(積極的関与)を示すのは同一性達成と早期完了の2つ。一見安定した早期完了は、自分で選び取っていない点が同一性達成と異なる。

マーシャの4地位は達成・モラトリアム・早期完了・拡散「アイデンティティ再体制化」は4地位に含まれない(地位の名称ではない)。
「青年期にアイデンティティが再体制化される」→青年期は同一性の確立(形成)が課題で、再体制化はその後の成人期以降の課題。青年期の記述としては適切でない。

つながる知識:青年期の「自意識の高まり」「孤独感」は、STが思春期・青年期の吃音・音声・高次脳機能障害の患者に関わるときの心理的配慮の背景になります。同一性の視点は、第5章の成人期(アイデンティティ再体制化)・老年期(統合)へと続きます。