📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:喉頭は
「こえ(発声)」の器官であり、同時に気道と食道の交差点です。ここはSTの
音声障害の医学的土台そのもの——声帯の動き(外転・内転)、喉頭癌の治療、喉頭全摘後の
食道発声・電気式人工喉頭によるコミュニケーション再獲得は、STの音声リハビリの中心テーマです。あわせて
頸部郭清・気管切開・声帯麻痺も扱い、
嚥下障害とも接続します。
①喉頭筋 ②喉頭・音声の検査 ③喉頭癌 ④喉頭全摘・術後 ⑤気道と声帯麻痺の順で整理します。
3-1 喉頭の解剖と喉頭筋
喉頭内筋は声門を「閉じる(内転)」筋と「開く(外転)」筋に大別されます。声門を開く筋は1つだけです。
| 喉頭内筋 | 作用 | 起始―停止 |
| 後輪状披裂筋(後筋) | 声門を開く(唯一の外転筋) | 輪状軟骨板―披裂軟骨筋突起 |
| 外側輪状披裂筋(側筋) | 声門を閉じる(内転) | 輪状軟骨弓―披裂軟骨筋突起 |
| 横披裂筋(横筋) | 声門後部を閉じる | 披裂軟骨筋突起―対側披裂軟骨筋突起 |
| 甲状披裂筋(内筋)/声帯筋 | 声帯の緊張・調整 | 甲状軟骨角―披裂軟骨声帯突起 |
| 輪状甲状筋(前筋) | 声帯を伸展し高音を出す(上喉頭神経支配) | 輪状軟骨弓―甲状軟骨板 |
「声門裂を開く筋」=後輪状披裂筋(輪状軟骨板―披裂軟骨筋突起):声門を開くのは後輪状披裂筋ただ1つ(唯一の外転筋)。起始は輪状軟骨板(後面)、停止は披裂軟骨の筋突起。反回神経(下喉頭神経)支配で、両側麻痺では声門が開かず気道狭窄をきたす(3-5参照)。
3-2 喉頭・音声の検査
内視鏡を用いる検査
喉頭ストロボスコピー:喉頭内視鏡にストロボ光(点滅光)を組み合わせ、速い声帯振動をスローモーションのように観察する検査。内視鏡を用いる検査=喉頭ストロボスコピー。GRBAS評価(聴覚心理的評価)・最長発声持続時間・発声時平均呼気流率・サウンドスペクトログラフィ(音響分析)は内視鏡を使わない。
最長発声持続時間(MPT)と呼気流率
気流率が増えてMPTが短くなる=反回神経麻痺:声帯が閉じきらない(声門閉鎖不全)と、発声中に呼気がむだに漏れて発声時平均呼気流率が増加し、その分最長発声持続時間(MPT)が短縮する。代表が反回神経麻痺(声帯麻痺)。拘束性肺疾患もMPTは短くなるが、これは肺活量低下によるもので気流率増加が主因ではない。
3-3 喉頭癌と喫煙
喫煙の関与が大きい病変:声門癌・ポリープ様声帯(ラインケ浮腫)は喫煙との関連が強い。喉頭乳頭腫はHPV、喉頭結核は結核菌、喉頭肉芽腫は胃酸逆流・音声濫用・挿管など、喫煙以外の要因による。
喉頭癌の治療(正しい記述):早期の喉頭癌には放射線治療か喉頭温存手術(喉頭部分切除・レーザー手術)が行われ、音声温存が図られる。進行癌でリンパ節転移があっても状況により根治的手術の適応はある。喉頭全摘術後は音声機能を失い、身体障害者福祉法上は音声・言語機能の喪失として3級相当とされる(2級ではない)。
3-4 喉頭全摘・頭頸部がん術後(音声・嚥下・構音)
喉頭全摘出術で起こる変化
喉頭全摘後に難しくなること:喉頭を全摘すると気管が永久気管孔として頸部前面に開き、鼻・口と気道が完全に分離される。その結果①鼻から吸気できず「においを嗅ぐ」ことが難しい ②声門を閉じていきめないため「排便時のいきみ」が難しい ③「そばをすする」ような陰圧動作が難しい。甘味を感じる・唾液を飲み込むことは可能(嚥下路は保たれる)。術後は永久気管孔で呼吸し、嗅覚障害を生じる(誤嚥はむしろ起こりにくくなる)。
喉頭全摘後の音声再獲得
代用音声:喉頭を失っても食道発声(食道に取り込んだ空気で下咽頭食道粘膜を振動)・電気式人工喉頭・気管食道シャント発声(ボイスプロテーゼ)で発声を再獲得できる。ボイスプロテーゼは肺の呼気を食道側へ導く一方向弁で、それ自体が音源ではない(音源は粘膜の振動)。第一選択の代用音声は症例・施設により異なる。
頸部郭清術の合併症と術後構音
頸部郭清術の合併症:乳び瘻(胸管損傷)・顔面(頸部)浮腫・肩挙上障害(副神経損傷→僧帽筋麻痺)・頭部回旋障害(胸鎖乳突筋の処理)など。「食道発声獲得不能」は頸部郭清術そのものの合併症ではない——合併症でないものとして問われる。
頭頸部がん術後の構音に影響する/しない:構音に影響するのは切除範囲・再建術式・放射線療法・頸部郭清術。上肢運動療法は構音に影響しない——「構音に影響しないもの」で上肢運動療法を選ぶ。
ST接続:喉頭全摘・舌/口腔がん切除後の
音声・構音・嚥下はSTの直接の臨床対象です。
食道発声・電気式人工喉頭の指導は
音声障害、
切除・再建後の構音は器質性構音障害、
嚥下訓練は
嚥下障害のノートへつながります。
3-5 気道確保と声帯麻痺
気管切開
気管切開の正しい理解:人工呼吸器に接続できる・喀痰吸引が目的の一つ・喉頭機能が正常ならスピーキングバルブ(一方向弁)を用いて発声できる。緊急時だけでなく長期人工呼吸管理・気道確保の予定手術としても行う(「緊急時のみ」は誤り)。カフはカニューレと気管壁の隙間を塞いで誤嚥・エア漏れを防ぐもので、カニューレを固定する目的ではない。
両側声帯麻痺による気道狭窄
両側声帯正中固定=気道狭窄への対応:両側の声帯が正中で固定して開かないと、気道が狭くなり呼吸困難となる。対応は声帯を外側へ移動する声帯外転術、緊急時は気管切開術。甲状軟骨形成術I型・II型や声帯内脂肪注入術は声門を閉じる(内方に寄せる)音声改善手術で、気道を広げる目的には用いない(むしろ逆効果)。