📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:この章は
ST国試の耳鼻科でいちばんSTに直結する「きこえ」です。難聴を医学の側から扱うので、
聴覚障害・
聴覚系・
聴覚心理学のノートと表裏一体。要は
「伝音難聴か感音難聴か」の切り分けが軸で、伝音は外耳・中耳(滲出性中耳炎・小耳症)、感音は内耳・後迷路(先天性難聴・薬剤性・突発性)に対応します。この章では
①耳の解剖と両耳聴 ②伝音難聴・滲出性中耳炎 ③感音難聴・先天性難聴 ④小耳症 ⑤詐聴の検査を整理します。
2-1 耳の構造と聴覚・平衡覚の解剖
耳は外耳・中耳(伝音系)と内耳(感音系)+前庭(平衡覚)に分かれます。まず両耳で聞くことの利点と、内耳前庭の神経支配を押さえます。
両耳聴(両耳できくことの利点)
両耳聴の効果:左右の耳の入力は脳幹の上オリーブ核で合流する。両耳間時間差と両耳間音圧差(レベル差)が音源定位の手がかりで、低周波数音は時間差、高周波数音は音圧差が有効。両耳できくと雑音のなかから音声を取り出しやすく(スケルチ効果)、聴覚閾値は片耳より低下(=聞こえがよくなる/両耳加重)する。
誤り=「片耳聴に比べ聴覚閾値が上昇する」:両耳聴では閾値は低下(感度が上がる)。上昇(悪化)ではない。両耳聴の「利点」を問う設問で、唯一のマイナス表現がひっかけになる。
内耳前庭の解剖(前庭神経の支配)
| 神経 | 支配する前庭器官 |
| 上前庭神経 | 卵形嚢・前半規管・水平(外側)半規管 |
| 下前庭神経 | 球形嚢・後半規管 |
正しい組合せ=卵形嚢―上前庭神経/球形嚢―下前庭神経/水平半規管―上前庭神経:「上前庭神経=卵形嚢+前・水平半規管」「下前庭神経=球形嚢+後半規管」で覚える。後半規管―上前庭神経、前半規管―下前庭神経は誤り。前庭神経炎で上前庭神経が障害されやすい点とも関連する。
2-2 伝音難聴と滲出性中耳炎
滲出性中耳炎
小児の滲出性中耳炎:中耳腔に貯留液がたまる中耳炎で、小児の難聴(伝音難聴)の原因として最も多い。急性中耳炎と違い耳痛は乏しく、鼓膜穿孔や発熱を伴わないことが多い。貯留液で鼓膜の動きが悪くなり中耳インピーダンスは上昇(ティンパノグラムはB型=平坦)。鼻・副鼻腔炎の合併がみられ、難治例は鼓膜切開・鼓膜チューブ留置の適応。
ひっかけ:「耳痛が強い」「しばしば鼓膜穿孔を生じる」「発熱を伴う」「中耳インピーダンスが低下する」はいずれも誤り。正しくは耳痛・発熱・穿孔は乏しく、インピーダンスは上昇する。
滲出性中耳炎を起こしやすい病態(耳管機能不全)
滲出性中耳炎と関連する疾患:口蓋裂・ダウン症候群・CHARGE症候群・ピエール・ロバン症候群など、口蓋・頭蓋顔面の形態異常で耳管機能不全を起こすものは滲出性中耳炎を合併しやすい。
関連しない=ペンドレッド症候群:ペンドレッド症候群は内耳の感音難聴であって、耳管機能不全による伝音性の滲出性中耳炎とは病態が別。「滲出性中耳炎と関連しないもの」でペンドレッドを選ぶ。
耳管開放症と「音が響く」訴え
「音が響く/自分の声が響く」を訴える病態:耳管開放症(自声強聴)・突発性難聴・加齢性難聴・メニエール病などは、聴覚過敏・自声強聴・耳閉感として「音が響く」と訴えることがある。外耳道閉鎖症は伝音難聴で音は小さくこもって聞こえ、「響く」とは訴えない——「響くと訴えないもの」で外耳道閉鎖症を選ぶ。
2-3 感音難聴・進行性難聴と先天性難聴
進行性難聴かどうか
進行性の感音難聴:アッシャー症候群(網膜色素変性+難聴)・多発性硬化症・ミトコンドリア脳筋症・ストレプトマイシン(アミノ配糖体)による薬剤性難聴は、時間とともに進行しうる。
進行性を示さない=先天性風疹症候群:先天性風疹症候群の難聴は先天固定性で、基本的に非進行性。「進行性難聴を示さないもの」で先天性風疹症候群を選ぶ。
ペンドレッド症候群
ペンドレッド症候群:常染色体潜性(劣性)遺伝(SLC26A4遺伝子)で、甲状腺腫+先天性感音難聴を呈する。前庭水管拡大を伴い、軽微な頭部打撲で難聴が変動・進行することがある。関係するのは甲状腺腫・頭部打撲・遺伝子。腎疾患(アルポート症候群)・アミノ配糖体系抗菌薬(薬剤性難聴)は別の病態。
胎児(先天)感染症による難聴
胎内感染で難聴=TORCH:子宮内感染で難聴をきたす代表はサイトメガロウイルス(CMV)・風疹ウイルス(TORCH症候群のうち)。ムンプス(流行性耳下腺炎)は出生後の感染で難聴を起こすもので胎内感染の主因ではなく、水痘帯状疱疹・麻疹も難聴の主因ではない。
難聴を伴うめまい疾患の鑑別
難聴を「生じる/生じない」内耳疾患:メニエール病・聴神経腫瘍・遅発性内リンパ水腫は難聴を伴う(蝸牛症状あり)。一方良性発作性頭位めまい症(BPPV)・前庭神経炎は前庭だけの障害で難聴を伴わない——「難聴を生じないもの」でBPPVと前庭神経炎を選ぶ。めまい疾患は第4章でも扱う。
2-4 外耳・小耳症
外耳道閉鎖を伴う小耳症:耳介の発育不全(小耳症)に外耳道閉鎖を伴うと、外耳・中耳の伝音系の奇形による伝音難聴を生じる(内耳=感音は保たれることが多い)。治療では自家肋軟骨を移植して耳介を形成する耳介形成術が行われ、肋軟骨が十分育つ学童期前後に計画する。
ひっかけ:「多くは感音難聴を伴う」は誤り(伝音難聴)。「発生頻度は約500人に1人」も誤り(実際は数千〜1万人に1人程度とまれ)。片側性が多い点も押さえる。
2-5 詐聴(機能性難聴)の検査
詐聴・機能性難聴を見抜く検査:実際より聞こえないふりをする詐聴の検出には、ロンバール検査・ステンゲル検査・遅延側音検査(DAF/遅延再生言語検査)・自記オージオメトリ(Jerger V型)が用いられる。いずれも「本当は聞こえている」ことを間接的に暴く検査。
詐聴に用いない=SISI検査:SISI検査は補充現象(リクルートメント)をみる検査で、内耳性(感音)難聴の部位診断に使う。詐聴の検出には用いない——「詐聴の検査として用いられないもの」でSISI検査を選ぶ。
ST接続:難聴の型(伝音/感音)・程度・進行性・先天/後天は、
補聴器・人工内耳の適応や(小児では)言語発達支援を左右します。ここは
聴覚障害の中核で、聴力検査・オージオグラム・ティンパノメトリの解釈は
聴覚系・
聴覚心理学のノートへ続きます。「医学的原因(この章)→検査→(リ)ハビリテーション」の流れで押さえましょう。