第5章 語彙・意味論

言語学 第5章

5-1 語の意味関係

上位語・下位語

  • 上位語:より一般的・広い意味を持つ語
  • 下位語:より特殊・狭い意味を持つ語

上位語と下位語の関係:は虫類(上位)─ 蛇(下位)

「ゆり─ひまわり」は同列(どちらも花の下位語)。「かたつむり─でんでんむし」は同義語(類義語)。「花─種」は部分・全体関係。

動詞「歩く」の上位語:動く(歩くは移動の一種)

  • 犬(歩く主体)・道(経路)・走る(同列の下位語)・ゆっくり(様態副詞)

同音異義語

言語学的に同音異義語群れる(むれる)─ 蒸れる(むれる)(発音が同じで意味・形態素が異なる)

「読む─詠む」「剥げる─禿げる」「取る─採る」「護る─守る」は同一形態素の異表記(類義の書き分け)または異形態であり、厳密には同音異義語でない。

類義の書き分けと同音異義語の区別

類義の書き分け(同一形態素の別表記):読む─詠む・取る─採る・変─替─代─換

同音異義語(別形態素):群れる─蒸れる

動詞「かえる」を表す形態素のうち類義の書き分けでないのはどれか:

「返」→「返す」は方向・元に戻すの意味で他と意味が異なる(類義ではない)

5-2 比喩・換喩・提喩

比喩の種類

比喩内容
換喩(メトニミー)隣接関係・関連性に基づく置き換え「有田(有田焼)」・「鍋(鍋料理)」
提喩(シネクドキ)部分で全体、全体で部分を表す「ご飯(食事全般)」・「花(桜)」
隠喩(メタファー)類似性に基づく置き換え「人生は旅だ」

換喩の例:

  • 「この茶わんは有田だ」→ 産地で製品を表す(換喩)
  • 「今日の晩御飯は鍋だ」→ 食器で料理を表す(換喩)

比喩でない例(通常の述語文):

  • 「1時間目の授業は数学だ」→ 直接の同定
  • 「うちの犬はブルドッグだ」→ 直接の同定
  • 「これは鉄製の鍋だ」→ 素材の記述

換喩・提喩を用いていない例:

  • 「このご飯はよく炊けている」・「これは鉄製の鍋だ」→ 文字通りの意味

5-3 コロケーション(連語)・慣用句

コロケーション的意味

語が連語(組み合わせ)として使われるときに生じる意味。

コロケーション的意味の例:

  • 「社長は鈴木に目をかけている」→ 「目をかける」は連語(目可愛がる・引き立てる)
  • 「山田は休憩室で油を売っている」→ 慣用句(さぼっている)
  • 「あれは真っ赤な嘘だった」→ 「真っ赤な」は強調の連語

5-4 直示表現(ダイクシス)

直示表現とは

発話の時・場所・人物などを文脈や状況に依存して指示する表現

直示表現の例:

  • 人称:私・あなた・彼
  • 場所:ここ・そこ・あそこ・あの
  • 時間:今日・昨日・今・来年
  • 移動動詞:行く・来る(視点による違い)

直示表現でない好き─嫌い(心的状態を表す語で、状況に依存しない)

直示表現を含まない文の例

  • 「青春、それははかなく短い」→ 「それ」は直示ではなく「青春」を受ける照応