第2章|オペラント条件づけ

対応過去問 7問/難易度 ★★★★☆
この章のねらい:オペラント条件づけはSTの訓練設計そのものの原理です。「正しく言えたらほめる(強化)」でことばの反応を増やし、「段階的に近づける(シェイピング)」で発話や構音を形づくり、「日常場面へ広げる(般化)」で訓練効果を定着させる——これらはすべてオペラント条件づけの応用です。言語発達障害応用行動分析(ABA)吃音の行動療法、運動障害性構音障害機能性構音障害の段階的訓練は、この章の理解が前提です。試験では「正/負の強化・罰の区別」「強化スケジュール4型」が最頻出です。

2-1 試行錯誤学習と効果の法則 ― ソーンダイクとスキナー

オペラント条件づけ(道具的条件づけ)は、自発した行動の結果によって、その行動の起こりやすさが変わる学習です。ルーツは2人の研究者です。

研究者実験要点
ソーンダイクネコの問題箱からの脱出試行錯誤学習。満足をもたらす反応は結びつきが強まる=効果の法則
スキナースキナー箱(レバー押しで餌)行動をオペラントと呼び、強化・罰・強化スケジュールを体系化
オペラント条件づけに関係する概念:罰訓練・部分強化効果・強化スケジュール・脳内自己刺激(正の強化子として働く)はいずれもオペラント条件づけの概念。一方、ブロッキング(阻止)古典的条件づけの現象で、オペラント条件づけとは関係が薄い。

組合せの整理:「ソーンダイクの問題箱=試行錯誤学習」が正しい対応。問題箱を「弁別学習」とするのは誤り(弁別学習は刺激の違いを学ぶ別概念)。ソーンダイクの試行錯誤とケーラーの洞察学習(第4章)は対比して問われる。

2-2 強化と罰 ― 4つの随伴性

行動のあとに何が起こるか(好子=快/嫌子=不快の出現・消失)で、行動が増えるか減るかが決まります。ここが最頻出です。

手続き操作行動は
正の強化好ましい事態を与える増える
負の強化好ましくない事態を取り除く増える
正の罰好ましくない事態を与える減る
負の罰好ましい事態を取り除く減る
負の強化とは:「行動の結果、好ましくない事態が取り除かれることで、その行動の頻度が増大する」もの(例:頭痛時に薬を飲むと痛みが消え、以後薬を飲む行動が増える)。「好ましくない事態が生じて頻度が減る」のは正の罰、「好ましい事態が取り除かれて頻度が減る」のは負の罰キーワードは「増やす=強化/減らす=罰」「与える=正/取り除く=負」の2軸。

組合せの整理:「負の強化―回避学習」は正しい対応(嫌子を避ける行動が増える)。代理強化―観察学習認知地図―潜在学習知覚-運動協応―技能学習も正しい。一方「両側性転移―弁別学習」は誤り(両側性転移は片手で覚えた技能が反対の手に移る=転移の一種で、弁別学習ではない)。

2-3 強化スケジュール ― 4つの型と部分強化効果

強化を「どんなタイミングで与えるか」の規則が強化スケジュールです。連続強化(毎回)に対し、時々だけ強化する部分(間欠)強化には4つの基本型があります。

 比率(回数基準)間隔(時間基準)
固定固定比率(n回ごとに強化)固定間隔(一定時間後の最初の反応を強化)
変動変動比率(平均n回ごと・最も反応が持続)変動間隔(平均一定時間後の反応を強化)
頻出ポイント:部分(間欠)強化は連続強化より消去抵抗が高い(=部分強化効果。時々しか強化されない行動ほど消えにくい)。②固定間隔スケジュールでは、一定時間が経過した後の最初の反応に強化を与える。③段階的に目標行動を条件づけていく手続きはシェイピング(第2-4節)。④困難な分化条件づけで生じる行動の混乱が実験神経症

誤りやすい記述:罰の強さを徐々に上げていくと、より大きな行動抑制効果が得られる」は誤り。弱い罰から徐々に強めると、生体が慣れて(馴化して)強い罰でも抑制されにくくなる。罰は最初から十分な強度で・即時に与えないと効果が乏しい。

2-4 反応形成 ― シェイピング・チェイニング・プレマックの原理

まだ生じていない新しい行動を、少しずつ作り上げていく技法です。ST訓練で日常的に使われます。

技法内容
シェイピング(反応形成)目標行動に近い反応から順に強化し、段階的に目標へ近づける(例:発声→母音→単音節→単語)
チェイニング(連鎖化)複数の行動を順につないで一連の行動系列を形成する
プレマックの原理生起頻度の高い行動を、頻度の低い行動の強化子として使う(「宿題をしたら遊べる」)
分化強化特定の反応だけを強化し、他を強化しないことで反応を絞る
つながる知識:シェイピングは構音訓練・発話訓練の基本手技。目標音をいきなり求めず、出せる音から段階的に近づけます。トークンエコノミー(トークン=二次的強化子を集めて交換)やプロンプト・フェイディングも、言語発達障害のABAで使う応用技法です。

2-5 オペラント条件づけの臨床応用 ― 行動療法とABA

学習理論を臨床に応用したのが行動療法です。技法が「どの学習原理に基づくか」がよく問われます。

技法基づく原理
バイオフィードバックオペラント条件づけ(生体反応の情報を返し、望ましい方向を強化)
系統的脱感作・フラッディング・エクスポージャーおもに古典的条件づけ(逆制止・消去)
モデリング(模倣)療法社会的学習理論
嫌悪条件づけ古典的条件づけ(不快と結びつける)
整理:行動療法と関係する学習原理はモデリング理論・逆制止原理・嫌悪条件づけ・オペラント条件づけなど。分析心理学(ユング)は精神力動の理論で、行動療法の学習原理ではない。「オペラント条件づけの原理に基づく」技法を選ぶ問題ではバイオフィードバックが答えになりやすい。

行動療法の技法でないもの:オペラント法・系統的脱感作法・エクスポージャー法・バイオフィードバック法は行動療法の技法。一方、リフレーミング法は「出来事の意味づけを変える」認知的・家族療法系の技法で、行動療法の技法とは区別される(臨床心理学参照)。

次章へ:次章は記憶・忘却・学習の保持と転移。訓練で得た反応をどう保持し、別の場面へどう移す(転移する)かは、訓練効果の般化・維持を考えるうえで欠かせません。