第1章|先天異常・染色体異常・症候群

対応過去問 21問/難易度 ★★★★☆
📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:小児科でいちばん出るのが「症候群の名前と特徴」です。STにとって症候群は他人事ではありません——ダウン症候群・口唇口蓋裂・プラダー・ウィリー症候群はそのまま言語発達障害学器質性構音障害原因疾患であり、先天感染症(TORCH)や染色体異常小児聴覚障害の背景です。「症候群名 = 特徴(染色体・顔貌・言語/難聴・合併症)」を1対1で覚えるのがこの章の攻略法です。

1-1 染色体異常症(ダウン症候群・ターナー・トリソミー)

染色体の数や構造の異常で起こる症候群です。国試の主役はダウン症候群(21トリソミー)。「どの症候群でどんな言語・知的発達か」がよく問われます。

症候群染色体特徴(キーワード)
ダウン症候群21トリソミー筋緊張低下・巨舌・特徴的顔貌・先天性心疾患・中耳炎を反復し伝音難聴・知的障害・初語が遅れる
18トリソミー(エドワーズ)18トリソミー重度の発達遅滞・予後不良
13トリソミー(パトウ)13トリソミー重症・有意味語の表出に至らないことが多い
ターナー症候群45,X(女性)低身長・性腺機能低下(知的発達は保たれやすい)
ダウン症候群の要点:21トリソミーが原因で、母体年齢が高いほど発生頻度が上がる。特徴は筋緊張低下・巨舌・特徴的顔貌・先天性心疾患滲出性中耳炎を繰り返して伝音難聴をきたしやすく、巨舌と口腔の低緊張で構音が不明瞭になりやすい——STが構音・言語・きこえで関わる代表疾患。

ダウン症候群のひっかけ:特徴として正しいのは巨舌「大頭症」「高身長」「長い指」「腓腹筋の仮性肥大」は誤り——ダウン症は小頭傾向・低身長・短い指(第5指短小)で、腓腹筋仮性肥大はデュシェンヌ型筋ジストロフィーの特徴。

「有意味語が出にくい/出ない」症候群:重度の知的障害を伴う13トリソミー・18トリソミーでは有意味語の表出に至らないことが多い。一方ターナー症候群は知的発達が比較的保たれ、有意味語は獲得できるのが対比のポイント。「有意味語が獲得できない/表出がない疾患を選べ」は染色体異常の重症度を問う定番。

1-2 遺伝性の症候群(プラダー・ウィリー/ウィリアムズ/歌舞伎ほか)

微細欠失やインプリンティング異常などで起こる症候群です。顔貌・行動・難聴の有無がキーワードで問われます。

症候群特徴(キーワード)
プラダー・ウィリー症候群乳児期の筋緊張低下(哺乳不良)→幼児期以降の過食・肥満・低身長・外性器低形成(性腺機能低下)・知的障害
ウィリアムズ症候群7番染色体微細欠失・大動脈弁上狭窄など心血管病変・視空間認知障害・社交的な人柄・相対的に良好な言語
歌舞伎(Kabuki)症候群特徴的顔貌・知的障害・難聴(反復性中耳炎)
ヌーナン症候群低身長・心疾患(肺動脈狭窄)・難聴を伴うことがある
トリーチャー・コリンズ症候群下顎顔面異骨症・外耳/中耳奇形による伝音難聴
プラダー・ウィリー症候群:特徴は過食・外性器低形成。経過が二相性で、乳児期は著明な筋緊張低下(フロッピー)と哺乳障害幼児期以降は過食による肥満に転じる。「吃音・高身長・筋緊張亢進」は誤りで、むしろ低身長・乳児期の筋緊張低下

ウィリアムズ症候群のひっかけ:誤りは「21番染色体異常」——ウィリアムズ症候群は7番染色体の微細欠失(21トリソミーはダウン症候群)。正しくは知的障害・心血管病変(弁上狭窄)・視空間認知障害で、言語やおしゃべりは比較的保たれる。

「知的障害+感音難聴を合併しやすい」症候群:Kabuki(歌舞伎)症候群などが該当。難聴を伴う症候群(Kabuki・ヌーナン・トリーチャー・コリンズ・CHARGE 等)は、小児聴覚障害のスクリーニング対象として重要。「難聴を合併する症候群かどうか」で正誤を作る問題が出る。

1-3 頭蓋顔面・口腔の先天異常(口唇口蓋裂・ピエール・ロバン)

顔面・口腔・頭蓋の形態異常です。口唇口蓋裂・ピエール・ロバンはSTの構音・摂食に直結します。

疾患特徴
口唇裂・口蓋裂顔面の癒合不全。口蓋裂は鼻咽腔閉鎖不全→開鼻声・構音障害・哺乳障害・滲出性中耳炎
ピエール・ロバン症候群小顎症・舌根沈下・気道閉塞(狭窄)・口蓋裂の連合。哺乳・呼吸の管理が必要
頭蓋縫合早期癒合症縫合の早期癒合で頭蓋変形。矢状縫合の早期癒合→舟状頭(長頭)

ピエール・ロバン症候群のひっかけ:通常みられないのは顔面神経麻痺。三徴は小顎症・舌根沈下・気道閉塞で、しばしば口蓋裂を伴う。顔面神経麻痺は連合の構成要素ではない。器質性構音障害・摂食嚥下の観点でSTが関わる。

頭蓋縫合早期癒合と頭の形:矢状縫合の早期癒合では前後に長い舟状頭(長頭)になる。ほかに冠状縫合=短頭、全縫合=尖頭など。「縫合と頭蓋形状の組合せ」で問われる。

1-4 先天代謝異常症・母斑症・先天性神経筋疾患

代謝・皮膚・神経筋の先天異常です。マススクリーニング乳児期の筋緊張低下(フロッピーインファント)が頻出です。

新生児マススクリーニング:早期発見・早期治療で障害を防ぐため、先天代謝異常症・内分泌疾患を新生児期に一律検査する。対象はフェニルケトン尿症・メープルシロップ尿症・ガラクトース血症・先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)・先天性副腎過形成など。放置で知的障害をきたす疾患を「症状が出る前」に拾うのが目的。
結節性硬化症(母斑症の一つ):点頭てんかん(ウエスト症候群)・葉状白斑・顔面の血管線維腫・脳室周囲の石灰化などをきたす神経皮膚症候群。「カフェオレ斑」は神経線維腫症(レックリングハウゼン病)の特徴で、結節性硬化症の症状として挙げると誤り。

フロッピーインファント(乳児期の筋緊張低下):原因は中枢性(脳性麻痺・ダウン症候群・プラダー・ウィリー)末梢性(脊髄性筋萎縮症=ウェルドニッヒ・ホフマン病・先天性筋ジストロフィー・先天性ミオパチー)に大別。「乳児期に筋緊張低下をきたさない疾患を選べ」という形で、痙性(筋緊張亢進)をきたす病態との対比が問われる。

ウエスト症候群(点頭てんかん):乳児期に発症するてんかん性脳症シリーズ形成する点頭発作(スパズム)・脳波でヒプスアリスミア・精神運動発達の停滞や退行が三徴。全身強直間代発作ではなく短い点頭様の発作が特徴で、発達予後に注意(詳細は第4章)。

1-5 先天感染症(TORCH)と難聴

妊娠中の母体感染が胎児に移り、難聴・知的障害・視覚障害などを起こします。ST的には先天難聴の重要原因です。

TORCH病原体胎児への主な影響
Tトキソプラズマ水頭症・脈絡網膜炎・脳内石灰化
O(others)梅毒 ほか先天梅毒(骨・歯・神経症状・難聴)
R風疹(ウイルス)先天性風疹症候群=難聴・白内障・心疾患(視覚聴覚二重障害)
Cサイトメガロウイルス先天感染で最多。難聴(進行性)・小頭症・知的障害
H単純ヘルペスウイルス新生児ヘルペス(脳炎など)
先天難聴を起こす感染症:サイトメガロウイルス・風疹・トキソプラズマ・梅毒はいずれも胎児に感音難聴をきたしうる。とくに先天性風疹症候群は難聴・白内障・心疾患で、難聴と視覚障害を併せもつ先天性の視覚聴覚二重障害の原因になる。

「母体感染で児に知的障害/二重障害」のひっかけ:先天感染で難聴・知的障害を起こすのはTORCH(風疹・CMV・トキソプラズマ・梅毒)インフルエンザ・マイコプラズマ・水痘などは典型的な母子感染による重度知的障害の代表ではない。「妊婦が感染すると児に……」の設問はTORCHを問うている。

次章へ:症候群と先天異常を押さえたら、次は正常発達のものさしです。第2章 発達評価・発達マイルストーンで、定頚・座位・歩行・喃語・指さしといったマイルストーンと、原始反射・乳幼児健診・発達検査を整理します。これは言語発達学言語発達障害学の評価の基準線そのものです。