📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:ここは呼吸系のヤマ場です。
「なぜ声帯が振動するのか(筋弾性空気力学説)」「声の高さ・強さは何で決まるか」を理解すると、
音声学の音源、
音声障害の気息性嗄声・声門閉鎖不全・声帯麻痺が一本の線でつながります。神経支配(反回神経・上喉頭神経)は
運動障害性構音障害と直結。神経の基礎は
神経系ノートで補ってください。
3-1 喉頭の神経支配と発声のしくみ(筋弾性空気力学説)
喉頭の運動・感覚はすべて迷走神経(X)の枝が担います。国試ではこの2枝の役割分担が問われます。
| 神経(迷走神経の枝) | 担当 |
| 上喉頭神経(外枝) | 運動:輪状甲状筋のみ(声帯の緊張=高音化) |
| 上喉頭神経(内枝) | 感覚:声門より上の喉頭粘膜の知覚(咳・むせの求心路) |
| 反回神経(下喉頭神経) | 運動:輪状甲状筋以外のすべての内喉頭筋(後輪状披裂筋を含む)+声門下の感覚 |
神経支配の要:輪状甲状筋=上喉頭神経(外枝)、それ以外の内喉頭筋=反回神経。だから反回神経麻痺では唯一の外転筋(後輪状披裂筋)を含む多くの筋が動かず声帯麻痺・嗄声・声門閉鎖不全を生じる。左反回神経は大動脈弓を回り込むため長く、麻痺をきたしやすい。
筋弾性空気力学説(声帯はなぜ振動するか)
声帯振動は筋の力だけでも空気の力だけでもなく、両者の相互作用で起こります。これが筋弾性空気力学説です。
① 声門下圧が高まる → 声帯を押し開く(声門が開く)
② 呼気が声門を通過 → 流速が増し圧が下がる(ベルヌーイ効果)
③ 声帯の弾性(戻る力)+ ②の吸い寄せ → 声門が閉じる
④ ①〜③の反復 = 粘膜波動(規則的な声帯振動)
粘膜波動の生成に関わる=ベルヌーイ効果。声門通過時に流速が増して圧が低下し、声帯が内方へ吸い寄せられる。ハース効果(先行音)・ドップラー効果・プライミング効果・カクテルパーティー効果はいずれも発声の粘膜波動とは無関係。
発声中の圧:母音/a/の持続発声中、最も内腔圧が高いのは声門下——呼気が声門で堰き止められるため。声門より上(声門上・咽頭・口腔・鼻腔)は圧が下がる。声門下圧 > 声門上圧。
3-2 声門下圧・呼気流と発声の空気力学
発声の空気力学は「圧・流量・抵抗」の3つの関係で押さえます。声門閉鎖の良し悪しがここに表れます。
声門抵抗 = 呼気圧 ÷ 平均呼気流率 (圧 ÷ 流率)
※「呼気圧 × 平均呼気流率」ではない(積は誤り)
声門閉鎖不全(声帯麻痺など)→ 空気が漏れる → 呼気流率↑
気流阻止法:一瞬気流を遮断 → 口腔内圧 ≒ 声門下圧(呼気圧)
声の強さと高さ:声門下圧が高くなると声の強さ(音圧)が増す。裏声の声門開放率は地声より高い。1秒あたりの声帯振動数=基本周波数。呼気流の減少は主に声の強さを下げるのであって、基本周波数を高くはしない。
呼気流率のひっかけ:呼気流率(発声時1秒間に消費される呼気量)は声の高さ・大きさによって変化する——「高さや大きさによらずほぼ一定」は誤り。声門閉鎖不全例では呼気流率が増加する(漏れるため)。
空気力学の正誤(頻出):正しいのは「MPTは複数回測定し最大値を採用」「口唇の突出は声道長を延長する」。誤りは「声門抵抗=呼気圧×平均呼気流率(→÷が正)」「両唇破裂音の破裂直前の口腔内圧は大気圧より低い(→閉鎖で高い)」「持続母音発声時の声門上圧=声門下圧(→下>上)」。
3-3 基本周波数・声の高さと音源の特性
声の「高さ・音色・有声/無声」は、声帯音源と声道の働きで作られます。組合せ・正誤で頻出です。
| 要素 | 決まり方 |
| 声の高さ(基本周波数) | 声帯の長さ・張力・質量で決まる。周期が短い=周波数が高い=ピッチ上昇。高音化は輪状甲状筋(伸展・緊張) |
| 声の強さ | 声門下圧・声門閉鎖の強さ |
| 声質(張り) | 声門開放率が減少(閉鎖相が長い)→ 高次倍音が増え張りのある声 |
| 破裂音源 | 口腔内圧の急激な解放 |
| 摩擦音源 | 声道の狭めを呼気が通過して生じる乱流(気流雑音) |
声帯音源スペクトル:声帯(声門)音源の振幅スペクトルは高域に向かって減衰し、1オクターブ上昇ごとに約12dB「減少」する。「12dB増加する」は方向が逆で誤り。
無声音のひっかけ(最重要):無声音は声門を開いて気流を通すので、呼気流量はむしろ多い。「無声音では声門閉鎖と呼気流量の減少が認められる」は誤り。破裂/破擦/摩擦は声道内で呼気流を変調して気流雑音を作り、母音/半母音/鼻音は付属管腔(声道・鼻腔)を音響管として共鳴を調節する、は正しい。
発声時の喉頭・呼吸の動き:正しいのは「吸気発声時には仮声帯が外転する」。誤りは「裏声で声帯の厚みが増す(→薄く伸展)」「高音発声で声帯が短縮(→伸展・延長)」「地声で甲状披裂筋が弛緩(→収縮)」「持続発声で横隔膜が徐々に下降(→呼気なので上昇)」。
3-4 正常な発声の条件と最長発声持続時間(MPT)
正常な声には「柔軟に波打つ声帯」と「効率のよい声門閉鎖」が要ります。MPTはこの2つ+呼気量を映す指標です。
正常な声の条件:声帯の層構造・粘膜の湿潤・粘膜波動・左右対称性が必要。逆に声帯粘膜の硬化(瘢痕など)は適切でない——波動を妨げ嗄声の原因になる。
最長発声持続時間(MPT)= 呼気量(肺)× 声門閉鎖の効率(喉頭)
使えるのは「吐ける量=肺活量」側
残気量は吐き出せない → MPTに直接寄与しない
MPTに寄与する呼吸機能:肺活量に関わる最大吸気量(深吸気量)・予備呼気量など。残気量は吐き出せないため直接寄与しない。1秒量・1秒率・1回換気量はMPTの主因ではない。
MPTが短縮しないもの:粘膜下口蓋裂——鼻咽腔閉鎖不全で開鼻声をきたすが、呼気量・声門閉鎖は保たれるためMPTは直接短縮しない。一方、肺葉切除・間質性肺炎・横隔神経麻痺(呼気量↓)、声帯溝症(声門閉鎖不全→漏れ)はいずれもMPTを短縮させる。鼻咽腔(口蓋)の問題は共鳴・構音に効くが、MPTは下げにくいと整理する。