第4章|評価・診断・検査法の総論

対応過去問 18問/難易度 ★★★☆☆
この章のねらい:「測定・評価・診断」という言葉の使い分け、検査の種類(スクリーニングと掘り下げ)、面接・観察の技法、そしてどの検査が何を測るかのカタログを整理します。ここは各論の検査問題を解く土台でもあります。信頼性・妥当性の理論的詳細は心理測定法ノートと対で読むと理解が深まります。

4-1 評価・診断の概念と対象

用語意味
測定ある特性を一定の規則で数量化する(数値・カテゴリーを得る)
評価(アセスメント)測定値を基準と照合し、意味づけ・価値判断を行う
診断評価を統合して障害像・原因・機序を明らかにする
診断的治療診断が確定しないとき、訓練を行いながら反応から特徴を明らかにする

良い検査の条件(詳細は心理測定法へ)

  • 妥当性:測りたいものを測れているか。内容的妥当性・基準関連妥当性(既存検査など外的基準との相関=併存的/予測的)・構成概念妥当性。
  • 信頼性:測定の安定性・一貫性(再検査・検査者間・内的整合性)。

評価対象の考え方

発声発語器官(口唇・舌・軟口蓋など)の評価は「話す側」の障害で重要度が高い。一方、中途失聴のように「聞く側」中心の障害では、発声発語器官の詳細評価の必要性は相対的に低い。

「評価とは特性を数量化することで、測定は価値判断を加えること」→誤り(説明が逆。測定=数量化/評価=価値判断)。
「外的基準との相関で確かめるのは内容的妥当性」→誤り基準関連妥当性)。

つながる知識:信頼性係数・妥当性の種類・標準化得点(偏差値・パーセンタイル)は心理測定法ノートで詳しく扱っています。

4-2 検査の種類(スクリーニング・掘り下げ・総合・選別)

種類目的特徴
スクリーニング(選別)検査対象者を広くふるい分け、要精査者を拾う簡便・短時間。見逃し(偽陰性)を避けるため高感度。場所や機器の有無で定義されないMMSE・HDS-R、RSST・改訂水飲みテスト、新生児のOAE/自動ABR
掘り下げ(精密)検査特定の機能を深く分析時間をかけ機序を詳しく評価トークンテスト、失語症語彙検査、WCST
総合的検査領域全体を網羅的に評価複数側面を体系的に測るSLTA(失語症の総合検査)
スクリーニングの本質:「初期段階で・簡便に・広く」拾う検査。ベッドサイドで行うか/機器を使うかで定義されるのではない。見逃しを減らしたいので感度を高く設定する(結果として偽陽性は増えやすい)。

「スクリーニング検査とは機器を用いない検査のことである」→誤り(目的で定義。機器使用の有無は無関係)。
「トークンテストはスクリーニング検査」→不適切(聴覚的理解の掘り下げ検査)。
「スクリーニングは見逃しより取りすぎを避けるため特異度を最優先する」→誤り感度を優先)。

4-3 観察法・面接法

面接法

特徴
構造化面接質問項目・順序を固定(比較・再現性が高い)
半構造化面接大枠を決めつつ柔軟に掘り下げる
非構造化面接自由な会話の中で情報を得る
インテーク面接初回の受理面接(主訴・経過・背景の把握)

観察法と記録法

  • 自然観察法(条件を操作せず観察)/実験観察法(条件を意図的に操作)/参加観察法。
  • タイム・サンプリング(時間見本法):一定の時間区切りごとに行動の生起の有無を記録(持続時間そのものは測らない)。
  • 場面見本法・事象(イベント)見本法・持続時間記録などがある。
  • 質問紙法(日常の実態を反映しやすい)/テスト法(客観性・標準化)/評定法(寛大効果などのバイアスに注意)。

「タイム・サンプリング法は行動の持続時間を測る方法」→誤り(区切りごとの生起の有無)。
「実験観察法は条件を一切操作しない観察」→誤り条件を操作するのが実験観察)。
「構造化面接は質問の順序を自由に変える」→誤り(順序・項目を固定)。

4-4 主要検査カタログと評価対象

「検査名 ― 何を測るか」の対応。各論で頻出のものを総覧します。

検査評価対象備考
SLTA(標準失語症検査)失語症(聴く・話す・読む・書く・計算)各項目6段階評価の総合検査
WAB失語症検査失語症(描画・行為なども含む)失語指数(AQ)を算出
トークンテスト聴覚的理解掘り下げ検査
失語症語彙検査(TLPA)語彙・意味カテゴリー名詞の意味処理を分析
PVT-R(絵画語い発達検査)理解(受容)語彙選択式(クローズドセット)
ITPA言語学習能力多次元の評価
ブローイング検査/鼻息鏡鼻咽腔閉鎖機能器質性構音の評価
ナゾメータ開鼻声(鼻音化の程度)音響的に定量
GRBAS嗄声の聴覚心理的評価順序尺度(0〜3の段階)
RSST(反復唾液嚥下テスト)嚥下(30秒間の空嚥下回数)嚥下のスクリーニング
BOA/COR乳幼児の聴力(行動反応/条件詮索反応)他覚/自覚の月齢別法
OAE(耳音響放射)蝸牛(外有毛細胞)の機能新生児聴覚スクリーニング
WISC/WAIS知能(児童/成人)WAISの下位「類似」は自由回答(オープンセット)
WMS-R/三宅式記銘力検査記憶(近時記憶など)三宅式は対語による記銘
MMPI成人の人格(質問紙)幼児には用いない
新版K式/KABC-II/DN-CAS発達・認知KABC-II=ルリア理論、DN-CAS=PASS理論
回答様式:オープンセット=自由に答える(例:WAISの「類似」)/クローズドセット=選択肢から選ぶ(例:PVT-Rの絵の選択)。同じ「語彙」を測る検査でも様式が異なる。

「RSSTは呼吸機能の検査である」→誤り嚥下のスクリーニング)。
「MMPIは幼児の知能検査」→誤り成人の人格検査)。
「KABC-IIはPASS理論に基づく」→誤りルリア理論。PASS理論はDN-CAS)。
「GRBASは比率尺度で平均を比較できる」→誤り順序尺度)。

各論へ:失語症検査(SLTA/WAB/SALA)は失語症ノート、嚥下の評価(VF/VE/RSST)は嚥下障害ノート、聴力検査(純音/語音/ABR/OAE)は聴覚障害ノートで詳しく扱います。