第3章|障害と訓練法の対応マップ(各論横断ハブ)

対応過去問 15問/難易度 ★★★★☆
この章は総論の核(約29問相当の中心):総論で最も多いのが「障害名 ― 中心症状 ― 代表的訓練法」の組合せ問題です。個々の障害の詳細は各論ノートで扱うので、ここでは縦横につながる一枚の地図としてまとめます。表の右端から各障害ノートへ飛べます。

3-1 各障害領域の全体マップ(ノートへの入口)

まず全体像を1枚で。各行が1つの障害領域、右端がその領域の詳しいノートです。

領域代表的な障害/疾患中心症状代表的アプローチ詳しく
失語症脳血管障害後の失語喚語障害・錯語・理解障害刺激法(刺激促通法)・MIT・機能再編成法失語症ノート
高次脳機能障害記憶/注意/遂行/半側空間無視/失行/失認認知機能の低下認知リハ・代償手段・環境調整高次脳機能障害ノート
言語発達障害言語発達遅滞・知的障害・ASD・LD言語理解/表出の遅れS-S法・インリアル・マンド-モデル・TEACCH言語発達障害学ノート
音声障害声帯麻痺・機能性発声障害・過緊張嗄声・声門閉鎖不全・ピッチ異常声の衛生・プッシング・アクセント法音声障害ノート
運動障害性構音障害麻痺性/失調性/運動低下性など発話明瞭度の低下・共鳴/プロソディ異常ペーシングボード・LSVT・プロソディ訓練運動障害性構音障害ノート
機能性構音障害器質的原因のない構音の誤り音の置換/省略/歪み聴覚刺激法・漸次接近法機能性構音障害ノート
器質性構音障害口蓋裂など開鼻声・共鳴異常鼻咽腔閉鎖機能訓練・ブローイング器質性構音障害ノート
吃音発達性吃音・神経原性吃音非流暢性(繰り返し・引き伸ばし・ブロック)流暢性形成法・吃音緩和法・環境調整法吃音ノート
摂食嚥下障害脳卒中/廃用/加齢による嚥下障害誤嚥・咽頭残留メンデルゾーン手技・頭部挙上訓練・バルーン法嚥下障害ノート
聴覚障害伝音/感音難聴・小児/成人聞こえの低下・語音明瞭度低下聴覚口話法・キュードスピーチ・補聴/人工内耳聴覚障害ノート
基礎とつながる:解剖/生理は神経系聴覚系、音の物理と発話の仕組みは音響学音声学、ことばと発達の理論は言語学言語発達学、検査と統計は心理測定法で扱っています。

3-2 障害と中心症状の対応

「その障害の一番の特徴は何か」を1対1で押さえます。組合せ問題の縦軸です。

障害中心症状(キーワード)
失語症喚語(語想起)障害。最多原因は脳血管障害
伝導失語復唱の障害・音韻性錯語+接近行為(自己修正)
超皮質性(混合型)失語復唱が保たれる・反響言語(エコラリア)
運動低下性構音障害錐体外路(パーキンソン)=単調・小声・加速・声の減衰
失調性構音障害断綴性発話・アクセント/ピッチの調節困難(爆発性)
弛緩性構音障害鼻咽腔閉鎖不全による開鼻声
痙性(偽性球麻痺)努力性・粗糙性の発話+嚥下障害
感音難聴(内耳性)補充現象(リクルートメント)・音の歪み・語音明瞭度低下
音声障害嗄声・ピッチ/大きさの異常(発声の質の障害)
口蓋裂共鳴の異常(開鼻声)・構音の誤り
発達性ディスレクシア知的障害を伴わない読み書きの特異的困難
観念運動性失行自動運動と意図的運動の解離
注意障害抹消(キャンセレーション)課題の成績低下
アルツハイマー型認知症近時記憶障害が中核

「失語症の最多原因は頭部外傷」→誤り脳血管障害)。
「感音難聴の特徴は伝音のみの閾値上昇で補充現象はない」→誤り補充現象あり)。
「発達性ディスレクシアは全般的知的障害を伴う」→誤り読み書きに特異的)。
「復唱が保たれるのは伝導失語」→誤り(保たれるのは超皮質性。伝導失語は復唱障害)。

3-3 障害と訓練・アプローチ法の対応

組合せ問題の横軸。「この訓練は何の障害向けか」を対にします。

訓練・アプローチ法主な対象ねらい/原理
刺激法(刺激促通法/Schuell)失語症強力・反復の感覚刺激で言語機能を賦活
メロディックイントネーション療法(MIT)非流暢性失語抑揚・リズムを利用して発話を促す
機能再編成法失語・失行など残存する経路で機能を代行させる
流暢性形成法/吃音緩和法/環境調整法吃音流暢な発話の形成・楽な吃り方・周囲の調整
声の衛生/プッシング法/アクセント法音声障害声帯の適切な閉鎖・過緊張の軽減
ペーシングボード運動障害性構音障害発話速度を抑え1音ずつ区切る
リー・シルバーマン法(LSVT)パーキンソン病の音声大きな声を出す訓練で明瞭度改善
メンデルゾーン手技/頭部挙上訓練(シャキア法)/バルーン拡張法嚥下障害喉頭挙上・食道入口部開大の改善
聴覚刺激法/漸次接近法機能性構音障害正しい音の聴取と段階的な形成(シェイピング)
S-S法/インリアル/マンド-モデル法言語発達障害発達段階に沿った言語促進
TEACCHプログラム自閉スペクトラム症構造化による支援
聴覚口話法/キュードスピーチ聴覚障害口形+手指の合図で同口形語を区別
プリズム順応半側空間無視視空間のずれの再調整
訓練の背景理論:刺激促通法=反復感覚入力/認知神経心理学的アプローチ=情報処理モデルに基づく/行動療法的アプローチ=オペラント条件づけ/機能再編成法=残存経路の活用。AACは「発話明瞭度そのものを改善する訓練」ではなく代替手段である点に注意(→第5章)。

「ペーシングボードは発話速度を速める道具」→誤り速度を抑える)。
「流暢性形成法は運動障害性構音障害の訓練」→誤り吃音)。
「キュードスピーチは認知症のアプローチ」→誤り聴覚障害)。
「声の衛生指導は吃音の訓練」→誤り音声障害)。

3-4 人物・研究者と業績

人名と業績の組合せも定番。混同しやすいペアを中心に。

人物業績・キーワード
Wernicke/Lichtheim失語の図式(連合説・失語の古典分類)
Liepmann失行の分類(観念運動性・観念性・肢節運動性)
Darley運動障害性構音障害(ディサースリア)の分類
Ramigリー・シルバーマン法(LSVT)
Luria神経心理学・機能再編成法
Skinnerオペラント条件づけ(行動分析)
Baddeleyワーキングメモリ(中央実行系・音韻ループ・視空間スケッチパッド)
Shaker(シャキア)頭部挙上訓練
Van Riper吃音の進展段階・吃音緩和法
Békésy(ベケシー)自記オージオメトリー

「Liepmannはワーキングメモリのモデルを提唱した」→誤り失行の研究。WMはBaddeley)。
「頭部挙上訓練はBaddeleyが考案」→誤りShaker)。
「Darleyは失語の連合図式を作った」→誤りディサースリアの分類)。

3-5 難聴を伴う症候群・随伴所見

症候群と随伴所見(とくに難聴・眼所見・顔貌)の対応は聴覚領域の頻出です。

症候群主な所見(難聴タイプ・随伴)
アッシャー症候群感音難聴+網膜色素変性(進行性の視覚障害)
Waardenburg症候群感音難聴+虹彩異色・白い前髪・内眼角の外方偏位
Treacher Collins症候群下顎顔面異骨症+外耳/中耳奇形=伝音難聴
先天性風疹症候群感音難聴・白内障・心疾患(三主徴)
自閉スペクトラム症難聴ではなく聴覚過敏など感覚の偏り
各論へ:難聴のタイプ別鑑別・オージオグラム・補聴器/人工内耳は聴覚障害ノート、聴覚器の解剖生理は聴覚系ノートで詳しく扱います。

「アッシャー症候群は伝音難聴と心疾患が主徴」→誤り感音難聴+網膜色素変性)。
「先天性風疹症候群は伝音難聴を来す」→誤り感音難聴)。
「Treacher Collins症候群は感音難聴」→誤り(外耳/中耳奇形による伝音難聴)。