第5章|障害者福祉と相談援助・リハビリテーション

対応過去問 17問/難易度 ★★★★☆
この章のねらい:社会福祉のなかでSTの臨床にもっとも直結する章です。身体障害者手帳の「音声・言語・そしゃく機能障害」や失語症の等級はST必修の頻出論点。障害者総合支援法の給付・補装具(人工内耳/補聴器)・自立支援医療・発達障害者支援法・合理的配慮は、STが関わる患者・利用者のサービスそのものです。さらに相談援助(バイステック・スーパービジョン)・ICF・リハビリテーションの4領域は、チーム医療でSTが立つ土台になります。制度の全体像は言語聴覚障害総論ノートと重なるので、ここでは社会福祉として問われる論点に絞ります。障害等級・給付・法改正は年次で変わるため、要監修ポイントを本文に明記します。

5-1 身体障害者福祉法と身体障害者手帳

身体障害者福祉法は、18歳以上の身体障害者の自立と社会参加を支援する法律です(18歳未満は児童福祉法)。

項目内容
対象身体に障害のある18歳以上の者で、身体障害者手帳の交付を受けた者
手帳の交付都道府県知事(指定都市・中核市の市長)が交付
等級1級(最重度)〜6級(7級は単独では手帳非交付)
障害の種類視覚・聴覚・平衡機能・音声・言語・そしゃく機能・肢体不自由・心臓・じん臓・呼吸器・ぼうこう/直腸・小腸・免疫・肝臓
ST最重要:身体障害者障害程度等級表に「音声機能・言語機能又はそしゃく機能の障害」がある。音声・言語・そしゃく機能障害は最重度でも3級(1・2級はない)。喉頭摘出などによる音声機能の喪失は3級失語症は「言語機能の障害」として認定され得る。ここはST国試で狙われる。(等級区分は年次改定に注意=要監修)

「身体障害者福祉法の対象年齢」→18歳以上。手帳の交付者は都道府県知事(市町村長ではない、厚労大臣でもない)。「更生」に関わる専門機関は身体障害者更生相談所

5-2 障害者総合支援法のサービス体系

障害者総合支援法(旧・障害者自立支援法)は、障害種別(身体・知的・精神・難病等)を超えて共通の仕組みでサービスを提供します。給付は自立支援給付地域生活支援事業の2本立てです。

自立支援給付主な内容
介護給付居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・生活介護・短期入所・施設入所支援 など
訓練等給付自立訓練(機能訓練・生活訓練)・就労移行支援・就労継続支援(A型・B型)・共同生活援助(グループホーム)
自立支援医療更生医療・育成医療・精神通院医療
補装具補装具費の支給

介護給付/訓練等給付の仕分け(頻出):
就労移行支援・就労継続支援・自立訓練・共同生活援助(GH)訓練等給付
生活介護・居宅介護・短期入所・施設入所支援介護給付
「訓練等給付でないのはどれか」→生活介護(=介護給付)が定番のひっかけ。

利用の流れ:市町村へ申請 → 障害支援区分の認定(区分1〜6)→ 支給決定 → 事業者と契約。利用者負担は応能負担が原則。(負担割合・区分の詳細は年次改定に注意=要監修)

5-3 補装具・日常生活用具・自立支援医療(STの関わり)

STが関わる補聴器・人工内耳などの支給根拠を押さえます。

区分内容・STとの関係
補装具身体機能を補完・代替する用具。補聴器は補装具費支給の対象。義肢・装具・車椅子など
自立支援医療更生医療・育成医療で人工内耳埋込術等の医療費を軽減し得る
日常生活用具地域生活支援事業。聴覚障害者用の情報・意思疎通支援用具など
各論ノートへ:補聴器・人工内耳の適合や小児難聴支援の実務は聴覚障害ノートで詳しく扱います。ここでは「どの制度・どの給付で支給されるか」という社会福祉としての枠組みを押さえます。

5-4 発達障害者支援法・障害者差別解消法

発達障害者支援法

  • 対象:自閉症・アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害・学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)など、通常低年齢で発現する脳機能の障害。
  • 早期発見・早期支援と、発達障害者支援センターによる相談・支援を規定。

障害者差別解消法(合理的配慮)

合理的配慮:障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思表明があった場合に、過重な負担でない範囲で行う配慮。障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止とセット。(行政・事業者の義務の範囲は法改正で拡大されている=要監修)
各論ノートへ:発達障害の言語・コミュニケーション支援そのものは言語発達障害学ノートで扱います。本章は「支援を支える法制度」の視点です。

5-5 言語聴覚士など国家資格の業務

社会福祉・関係法規では、国家資格の業務範囲・名称も問われます。

資格ポイント
言語聴覚士言語聴覚士法。名称独占(業務独占ではない)。診療の補助として嚥下訓練・人工内耳の調整等は医師の指示下
社会福祉士・精神保健福祉士相談援助の名称独占資格
介護福祉士介護・生活支援。一定条件下で喀痰吸引等が可能
介護支援専門員(ケアマネジャー)ケアプラン作成。国家資格ではなく都道府県の登録・公的資格

言語聴覚士は名称独占で、資格がなくても類似の訓練自体は禁止されない(名乗れないだけ)。「業務独占」と書いたら誤り。介護支援専門員を「国家資格」とするのもひっかけ。

5-6 相談援助(ソーシャルワーク)

バイステックの7原則

7原則
個別化・意図的な感情表出・統制された情緒的関与・受容・非審判的態度・自己決定・秘密保持
キーワード:援助関係の基本。とくに「自己決定の尊重」「受容」「非審判的態度」「秘密保持」が問われやすい。援助者が結論を押し付けないのが原則。

スーパービジョンの3機能

機能内容
管理的機能業務の質・量を適切に管理する
教育的機能知識・技術の向上を助ける
支持的機能心理的支え・バーンアウト予防

スーパービジョンの機能は管理的・教育的・支持的の3つ。「治療的機能」「評価的機能」などを混ぜるのがひっかけ。スーパーバイザー(指導)とスーパーバイジー(受ける側)の語も区別。

ソーシャルサポートネットワーク

フォーマルサポート(制度・専門職による公的支援)とインフォーマルサポート(家族・友人・近隣・ボランティア等の私的支援)を組み合わせて生活を支える考え方。ピアサポートはインフォーマル寄り。

5-7 ICFとリハビリテーション

ICF(国際生活機能分類)

構成要素内容
生活機能心身機能・身体構造/活動/参加
背景因子環境因子/個人因子
ICFの核心:ICIDH(機能障害→能力低下→社会的不利の一方向)を改め、各要素が相互に影響し合うモデルへ。環境因子を明示的に位置づけたのが特徴で、中立的・肯定的な用語(「活動」「参加」)を用いる。ST評価でも活動・参加レベルの目標設定に使う。

リハビリテーションの4領域

4領域内容
医学的リハ医療機関での機能回復(STはここが中心)
教育的リハ特別支援教育など
職業的リハ就労支援・職業訓練
社会的リハ社会参加・地域生活の支援

リハビリテーションの4領域は医学的・教育的・職業的・社会的。「心理的リハ」などを混ぜるのがひっかけ。リハの理念は「全人間的復権」(単なる機能回復訓練ではない)。

まとめ:本章は社会福祉ノートの締めくくりであると同時に、言語聴覚障害総論ノートのICF・リハ理念、そして失語症運動障害性構音障害高次脳機能障害聴覚障害など各論ノートの制度的土台です。「どの障害を・どの制度と給付で支えるか」を1枚にまとめれば、社会福祉60問と臨床各論がつながります。