高次脳機能障害の評価バッテリー一覧
この記事の執筆者: 現役の言語聴覚士が、臨床経験と国家試験の出題傾向をもとに執筆・監修しています。
高次脳機能障害の評価は「どの機能(注意・記憶・遂行機能・半側空間無視など)を、どの検査で測るか」の対応を覚えることがすべてです。国家試験では「この検査で評価できるのは?」と一問一答で問われるため、機能ドメイン別に検査名を束ねて整理しましょう。
1. 全般的認知機能の評価
| 検査 | 特徴・構成 | カットオフ等 |
| MMSE | 見当識・記銘・注意計算・再生・言語・図形模写。世界的に普及 | 30点満点/23点以下で認知症疑い |
| HDS-R(改訂長谷川式) | 見当識・記銘・計算・数字逆唱・遅延再生・語想起。図形模写は含まない | 30点満点/20点以下で認知症疑い |
| MoCA-J | 軽度認知障害(MCI)の検出に感度が高い。遂行・抽象も含む | 30点満点/25点以下で疑い |
| COGNISTAT(標準高次脳機能検査) | 領域別にプロフィール表示。能力の凹凸を可視化 | 領域別評価 |
2. 注意の評価
| 検査 | 方法 | 主に測る機能 |
| TMT-A(Trail Making Test) | 数字を1→2→3…と順に結ぶ | 持続性・選択性注意、情報処理速度 |
| TMT-B | 数字とかなを「1→あ→2→い」と交互に結ぶ | 注意の転換・配分(前頭葉機能を強く反映) |
| CAT(標準注意検査法) | スパン・抹消・PASAT・SDMTなど複数下位検査 | 注意を多面的・定量的に評価 |
| かなひろいテスト | 文章中の特定のかなを拾いながら内容も把握 | 分配性注意 |
3. 記憶の評価
| 検査 | 内容 | 主に測る機能 |
| WMS-R(ウェクスラー記憶検査) | 言語性・視覚性・一般的記憶・注意集中・遅延再生の各指標 | 総合的な記憶機能 |
| RBMT(リバーミード行動記憶検査) | 姓名・約束・道順など日常場面を模した課題。展望記憶も評価 | 日常記憶・展望記憶 |
| 三宅式記銘力検査 | 有関係対語・無関係対語の対連合学習 | 聴覚言語性の記銘力 |
| ベントン視覚記銘検査(BVRT) | 図形を見て記憶し描画再生 | 視覚性記憶・視覚構成 |
4. 遂行(実行)機能の評価
| 検査 | 内容 | 主に測る機能 |
| BADS(遂行機能障害症候群の行動評価) | 規則変換・行動計画・鍵探しなど生活的な課題群 | 日常的な遂行機能 |
| WCST(ウィスコンシンカード分類検査) | 分類規則を推測し、規則変更に対応。保続の数を評価 | 概念形成・セットの転換(前頭葉機能) |
| FAB(前頭葉機能検査) | 概念化・流暢性・運動系列など6課題の簡易バッテリー | 前頭葉機能のスクリーニング |
5. 半側空間無視・失行・失認の評価
| 検査 | 対象 | 内容 |
| BIT(行動性無視検査) | 半側空間無視(USN) | 線分抹消・線分二等分・模写などの通常検査+日常場面の行動検査 |
| SPTA(標準高次動作性検査) | 失行 | 道具使用・象徴的動作などの動作を体系的に評価 |
| VPTA(標準高次視知覚検査) | 失認 | 物体・画像・色彩・相貌・地誌的見当識など視知覚を評価 |
ここで差がつく:機能と検査の取り違えに注意
TMTとWCSTはどちらも「数字」「カード」を使うため記憶検査と誤りやすいが、TMTは注意、WCSTは遂行機能(前頭葉)の検査。記憶はWMS-R/RBMT、半側空間無視はBITと、機能ごとに代表検査を1つずつ結びつけて覚える。
💡 臨床メモ: 高次脳機能障害は「見えにくい障害」と言われ、本人も気づきにくいことがあります。机上検査の点数だけでなく、RBMTやBADSのように生活場面に近い課題で「実際の生活でどう困るか」を評価することが、支援につながる重要なポイントです。
⚠️ よくある誤解
- 「MMSEとHDS-Rは同じ検査」→ 似ているが項目が異なる。HDS-Rに図形模写はなく語想起がある。MMSEには図形模写・3段階命令・読み書きが含まれる。
- 「TMT-Bは記憶の検査」→ 誤り。TMTは注意(特にBは転換・配分)の検査。
- 「WCSTは記憶の検査」→ 誤り。概念形成・セットの転換を測る遂行機能(前頭葉)の検査。
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関連ページ:高次脳機能障害の症状と分類(科目ガイド) / 認知症の言語評価 / 評価バッテリー完全整理
※ 本記事は現役の言語聴覚士が執筆・監修しています。
最終更新: 2026年6月