この章のねらい:記憶は、STの臨床でもっとも認知心理学が直接効いてくる領域です。
ワーキングメモリ(作動記憶)と記憶の多重貯蔵モデルは、高次脳機能障害の記憶障害・注意障害のリハビリの中核理論そのもの。宣言的記憶(覚えていると言える)/手続き記憶(体で覚えている)の区別は、障害された記憶と保たれる記憶を見分け、残存機能を使った訓練を組み立てる土台になります。国試では
3つの記憶の階層・ワーキングメモリの下位系・長期記憶の分類が繰り返し問われます。
3-1 記憶の多重貯蔵モデル
アトキンソンとシフリンの多重貯蔵モデル(二重貯蔵庫説)は、記憶を感覚記憶→短期記憶→長期記憶の3つの貯蔵庫の流れで説明します。
| 貯蔵庫 | 保持時間・容量 | 特徴 |
| 感覚記憶 | ごく短時間(1秒前後) | アイコニック記憶(視覚)・エコイック記憶(聴覚)。感覚情報をそのまま保持 |
| 短期記憶 | 数十秒・7±2チャンク | リハーサルで保持。ミラーの「マジカルナンバー7」。新近効果に対応 |
| 長期記憶 | ほぼ永続・ほぼ無制限 | 意味的に符号化。エピソード・意味・手続きなどに分かれる |
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この章の続きで扱う内容
- 3-2 ワーキングメモリ(バドリーのモデル)
- 3-3 長期記憶の分類
- 3-4 意味記憶のネットワーク ― 活性化拡散モデル
- 3-5 忘却
- 3-6 学習 ― 条件づけと運動学習