第4章|注意・思考・問題解決・意思決定

対応過去問 10問/難易度 ★★★★☆
この章のねらい:注意・思考・問題解決は「高次の認知」です。注意(選択的注意・分割的注意)は、高次脳機能障害の注意障害・半側空間無視の理解に直結し、雑音下での聞き取り(カクテルパーティ効果)は聴覚活用の課題そのもの。国試では用語の定義の取り違え——とくに「問題解決を助けるもの(洞察・アルゴリズム)」と「妨げるもの(機能的固着・構え)」、「演繹と帰納」、「ヒューリスティックスとアルゴリズム」の区別——が繰り返し問われます。

4-1 注意のはたらき

注意は、多くの情報から必要なものを選び、処理資源を配分する働きです。

種類内容
選択的注意多くの情報から特定のものを選んで処理する
分割的注意複数の対象に注意を同時に配分する
カクテルパーティ効果:騒がしい場所でも、受容した刺激情報の中から必要な音声を選択的に聞き取れる現象(チェリー)。これは選択的注意のはたらき。新近効果(記憶)・同時対比(知覚)・暗順応(感覚)・サッケード(眼球運動)とは別。フィルタ説(ブロードベント)や減衰説(トリーズマン)で説明される。

4-2 概念とカテゴリー化・知識の枠組み

概念(カテゴリー)の理論

私たちは対象をカテゴリー(概念)にまとめて理解します。「何が概念のまとまりを決めるか」を説明する理論があります。

理論要点
定義的特徴理論(古典説)概念は必要十分な特徴(定義)で決まる
プロトタイプ理論概念は典型例(プロトタイプ)との類似で決まる
事例(用例)モデル過去に出会った個々の事例との照合で決まる
理論ベース理論素朴な知識・理論に基づいて概念を作る

ひっかけ:カテゴリー的概念を説明する理論に含まれ「ない」のはスキーマ理論(スキーマは知識の枠組みで、概念の成り立ちの理論とは区別する)。定義的特徴・プロトタイプ・事例モデル・理論ベース理論は概念の理論。

知識の枠組み(状況理解のための知識)

状況を素早く理解するため、私たちはまとまった知識の枠組みを使います。

枠組み内容
スキーマ対象・出来事についての構造化された一般的知識
スクリプト「レストランでの一連の行動」のような出来事の系列の知識
フレーム典型的な状況の枠組み(空欄を埋めて理解する)

状況理解に用いる知識で「ない」もの:チャンク(記憶の容量単位)とヒューリスティックス(思考の方略)。スクリプト・スキーマ・フレームは状況理解の知識枠組み。

4-3 推論 ― 演繹と帰納

推論方向・特徴
演繹的推論一般的な前提から個別の結論を導く。前提が正しければ結論も必ず正しい。4枚カード問題(ウェイソン選択課題)で調べる
帰納的推論個別の事例から一般的な法則・原理を導く(結論は蓋然的)
類推(アナロジー)既知の類似した問題の解法を当てはめる
発見的推論経験則を使って見当をつける
演繹で解決するのは4枚カード問題:心的回転・誤信念課題・3つ山問題・語彙判断課題は演繹的推論の課題ではない。

誤った組合せの定番:帰納法―事象の類似性に基づく推論」は誤り(それは類推。帰納法は個別事例から一般法則を導く)。「習慣的な構え―既知の解決法の型通りの適用」「洞察―問題状況の再編成」「アルゴリズム―必ず解に達する推論手続き」「確証バイアス―仮説を支持する証拠の優先的収集」は正しい。また「試行錯誤―機能の固着」も誤り(試行錯誤は解決の方略、機能的固着は解決を妨げる要因で別物)。

4-4 問題解決

方略・要因内容
アルゴリズム手順どおり行えば必ず解に達する手続き(時間はかかる)
ヒューリスティックス経験則・発見的方略。速いが必ず解に達するとは限らない
洞察問題状況を再編成して急に解決に至る(ケーラー)
試行錯誤いろいろ試して失敗を繰り返しながら解に近づく(ソーンダイク)
手段―目的分析現状と目標の差を縮める下位目標を立てる
機能的固着物の通常の用途に固執し、別の使い方に気づけず問題解決を妨げる

問題解決を「妨げる」のは機能的固着:洞察・試行錯誤・アルゴリズム・手段―目的分析は問題解決を助ける方略。機能的固着(と「構え/アインシュテルング効果」)は既有の枠にとらわれて解決を妨げる。「群化―形の知覚」「符号化―記憶」「洞察―問題解決」「命題による表現―文の理解」は正しい組合せだが、「感覚遮断―弁別学習」は誤り。

4-5 判断と意思決定 ― ヒューリスティックスとバイアス

人は限られた情報・時間の中で、近道(ヒューリスティックス)を使って判断します。速い反面、系統的なバイアス(偏り)を生みます(トヴェルスキーとカーネマン)。

ヒューリスティック内容
利用可能性ヒューリスティック思い出しやすさで頻度・確率を判断する
代表性ヒューリスティック典型例との類似で確率を判断する
係留と調整最初の値(アンカー)に引きずられて判断する
典型例:「航空機事故は自動車事故より確率が高く見積もられやすい」=利用可能性ヒューリスティック(衝撃的で思い出しやすいため)。ピークエンド効果・類似性/代表性ヒューリスティック・光背効果とは異なる。ヒューリスティックスとは「必ず成功するとは限らないが、経験則や思いつきを適用する方法」。
つながる知識:選択的注意・分割的注意・カクテルパーティ効果は、高次脳機能障害の注意障害の分類(持続性・選択性・転換性・分割性注意)と対応します。次章は社会的認知・感情・言語処理。対人認知や情動の理論は、患者・家族支援の理解にもつながります。