第4章|問題解決・認知的学習

対応過去問 5問/難易度 ★★★★☆
この章のねらい:条件づけは「刺激と反応の結びつき」で学習を説明しますが、試行錯誤だけでは説明できない学習もあります。それが洞察学習・潜在学習・認知地図で、「頭の中に情報を蓄え、必要なときに使う」認知的な学習観を示します。STにとっては、言語発達障害の子どもが推論・概念形成・問題解決をどう発達させるか、高次脳機能障害遂行機能(問題解決・段取り)のリハをどう考えるかの土台です。試験では「学習↔提唱者」の組合せが頻出です。

4-1 問題解決の方略 ― アルゴリズムとヒューリスティック

問題を解く方法(方略)には、大きく2つのタイプがあります。

方略内容
アルゴリズム手順どおり行えば必ず正解に至る系統的な方法(時間はかかる)
ヒューリスティック経験に基づく直観的な近道。速いが必ずしも正解に至らない(バイアスも生む)
経験則に基づく直観的な問題解決法=ヒューリスティックス:「必ず解ける保証はないが、経験からすばやく答えに近づく」のがヒューリスティック。アルゴリズム(必ず解ける手続き)・フラッディング(暴露療法)・フォーカシング(体験過程に注意を向ける心理療法)・サッケード(衝動性眼球運動)と取り違えない。

4-2 洞察学習と認知的学習 ― ケーラー・トールマン

試行錯誤とは異なり、状況の関係を一気に把握して解決に至る学習や、報酬なしでも成立する学習があります。提唱者との組合せが最頻出です。

提唱者実験学習の型
ケーラー(Kohler)チンパンジーのバナナ取り(道具の使用)洞察学習(見通しによる解決)
トールマン(Tolman)ラットの迷路学習潜在学習・認知地図
ソーンダイク(Thorndike)ネコの問題箱試行錯誤学習
バンデューラ(Bandura)子どもの人形(ボボ人形)実験観察学習(第5章)
セリグマン(Seligman)イヌの電撃逃避学習性無力感(第5章)
認知地図と潜在学習(トールマン):認知地図=環境の空間的関係を頭の中に地図のように表象したもの。潜在学習=報酬がない間も学習は進んでおり、報酬が導入されると一気に成績に現れる(学習と遂行は別)。この2つはS-R連合では説明できない認知的な学習の代表例。

誤りやすい組合せ:「ケーラーのバナナ取り―洞察学習」「トールマンの迷路学習―潜在学習」「バンデューラの人形実験―観察学習」は正しい。誤りは「ソーンダイクの問題箱―弁別学習」(正しくは試行錯誤学習)「セリグマンの電撃逃避―試行錯誤学習」(正しくは学習性無力感)

4-3 概念形成と問題解決を妨げる要因

概念形成

概念形成は、複数の事例に共通する特徴(属性)を抽出してカテゴリーを作る学習です。

用語内容
概念達成ある概念を特徴づける属性を把握すること
等価反応異なる対象に同じ対象であるかのように反応すること(般化に近い)
全体方略/部分方略概念形成課題では、複数の属性を一度に検討する全体方略が有効なことが多い
逆転学習/非逆転学習弁別の基準を反転させる学習。幼児では非逆転学習より逆転学習が困難

誤りやすい記述:「幼児では逆転学習より非逆転学習が困難である」は誤り(逆=幼児は逆転学習の方が困難)。「概念形成課題で全体方略は部分方略より有効」「概念達成=属性の把握」「等価反応=異なる対象に同一視して反応」「機能の固着で問題解決が障害される」は正しい。

問題解決を妨げる要因

妨げる要因内容
機能的固着物の通常の用途にとらわれ、別の使い方に気づけない
習慣的構え(心的構え)過去に成功した解き方に固執し、より良い方法に切り替えられない
問題解決を阻害する要因:習慣的構え機能の固着は問題解決を妨げる。一方、類推による推論・情報の符号化・拡散的思考は、むしろ問題解決を助ける方向に働く(拡散的思考は多様なアイデアを生む創造的思考)。

4-4 学習を支える認知現象の整理

学習・記憶・注意には、名前の似た認知現象が多く、現象↔意味の組合せで問われます。まとめて整理します。

現象正しい意味
単純接触効果繰り返し接触するとその対象への好意的態度が高まる
プライミング効果先行刺激が後続の情報処理を促進する(潜在記憶の測定にも使う)
カクテルパーティ効果雑音の中で必要な音声だけを聞き取る選択的な聴取(注意)
新近効果最後に提示された項目の記憶成績が上昇する(系列位置効果の新近部)
ストループ効果文字の色と語の意味が干渉し反応が遅れる(注意の干渉)

誤りやすい組合せ:「単純接触効果―好意的態度の形成」「プライミング効果―情報処理の促進」「カクテルパーティ効果―選択的な聴取」「新近効果―記憶成績の上昇」は正しい。誤りは「ストループ効果―学習効果の消去」。ストループ効果は注意の干渉であって、学習効果の消去とは無関係。

次章へ:最後の第5章は社会的学習・動機づけ。他者を観察して学ぶ観察学習(モデリング)や、訓練継続を左右する動機づけは、指導・支援の設計に直結するSTの必須知識です。