第1章|精神症状・精神医学総論

対応過去問 11問/難易度 ★★★☆☆
📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:精神医学でいちばん出るのは「精神症状の用語」です。幻覚・妄想・思路の障害・自我障害は、STが失語症のジャルゴンや高次脳機能障害の症状と「これは言語の障害か、精神症状か」を鑑別するときの共通言語になります。まず症状の定義を正確に覚え、次にどの疾患で出るかをつなげるのがこの科目の攻略法です。

1-1 精神医学総論(診断分類・検査の考え方)

精神疾患は原因による古典的分類と、症状のパターンで決める現代の操作的診断基準の2つの見方があります。国試ではICDとDSMの位置づけが問われます。

古典的分類(原因別)意味代表疾患
外因性脳・身体の器質的/物質的な原因認知症・せん妄・症状性精神病・物質関連障害
内因性体質・遺伝など内的要因(原因不明)統合失調症・気分障害(うつ病/双極性)
心因性心理的ストレスが引き金神経症・ストレス関連障害・適応障害
診断基準の整理:ICDはWHOの国際疾病分類で、日本の「疾病、傷害及び死因の統計分類」もICDに基づくDSMはアメリカ精神医学会の診断基準で、原因を問わず症状の有無・数・期間で機械的に診断する操作的診断基準。操作的診断基準は客観性・再現性が高く国際比較に適する(「客観性に乏しい」「原因に基づく」「国ごとに基準を定める」はいずれも誤り)。

検査の優先順位のひっかけ:けいれん(痙攣)を認めた患者では、まず身体・器質的な原因の除外が最優先。頭部CT・脳波・血液検査・内服薬の確認を先に行い、心理検査は最も優先順位が低い。精神症状でも「まず身体をみる(外因の除外)」が精神科の鉄則。

1-2 知覚の障害(錯覚・幻覚)

知覚の障害は「対象があるか・ないか」で錯覚と幻覚を分けます。ここは定義そのものが問われます。

用語定義
錯覚実際に存在する対象を誤って知覚する(例:カーテンが人に見える)
幻覚対象が存在しないのに知覚する。幻聴(統合失調症に多い)・幻視(せん妄・レビー小体型に多い)など
錯覚 vs 幻覚:ポイントは「元になる刺激(対象)があるか」錯覚は対象あり・幻覚は対象なし。「実際に存在する対象を誤って知覚する=錯覚」がそのまま定義文として出題される。

1-3 思考の障害①:思考過程(思路)の障害

思路(思考の流れ)の障害は、まとまり・スピード・方向のどこが崩れるかで分類します。統合失調症・躁・うつ・器質性でパターンが違います。

用語特徴多い疾患
連合弛緩考えのつながりが緩み、まとまらない(重度で滅裂思考・言葉のサラダ)統合失調症
思考途絶話が突然途切れて止まる統合失調症
観念奔逸次々と考えが浮かび、話が飛んで止まらない躁状態
思考制止(思考抑制)考えが進まず遅い・重いうつ状態
迂遠細部にこだわり回りくどく、なかなか主題に達しないてんかん・器質性・知的障害
保続同じ考え・言葉を繰り返し切り替えられない器質性(前頭葉)
統合失調症に特徴的な思路:連合弛緩・思考途絶が代表。迂遠・保続・思考制止は統合失調症の典型ではない(迂遠=てんかん/器質、制止=うつ)。組合せで問われるので「疾患とセット」で覚える。

迂遠のひっかけ:「細部にこだわって説明し、なかなか主題にたどり着かない」=迂遠。連合弛緩(つながりが緩む)・観念奔逸(飛んで速い)・思考制止(遅い)と混同しないこと。

1-4 思考の障害②:思考内容(妄想)の障害

妄想は「誤った確信で、訂正できず、強い感情を伴う」のが定義。発生の仕方で種類が分かれます。

妄想の定義:妄想は物事を誤って意味づける不合理でも訂正できない(訂正不能)。「不合理だと自覚している(=それは強迫観念)」「強い感情を伴わない」「実際にないものが見える(=幻覚)」はいずれも誤り。妄想は強い確信で訂正できず、本人に病識がないのが本質。
種類特徴
妄想気分何か重大なことが起こりそうな、怪しく緊迫した雰囲気にとらわれる(統合失調症の初期)
妄想知覚実際の知覚に特別な意味づけをする(例:信号が赤=自分への合図)
妄想着想突然、根拠なく確信が浮かぶ

妄想気分のひっかけ:「今にも何か重大な出来事が起こるような怪しげで緊迫した雰囲気にとらわれる」=妄想気分。妄想知覚(知覚への意味づけ)・妄想着想(突然の確信)・強迫観念(不合理と自覚)と区別する。

1-5 自我意識の障害・その他の症状

自我障害は「自分の考え・意志が自分のものでない」という体験で、統合失調症に特徴的です。

用語定義
考想伝播(思考伝播)自分の考えが周囲に伝わり、皆に知られていると感じる(自我の境界の障害
思考奪取自分の考えが抜き取られると感じる
させられ体験(作為体験)考えや行動が他者に操られていると感じる
離人症(離人感)自己や外界に対して生き生きとした現実感が感じられなくなる
自我の境界性の異常=考想伝播:「自分と外界の境界」が崩れる症状。考想伝播・思考奪取・させられ体験が代表で統合失調症に多い。罪責妄想(うつ)・観念奔逸(躁)・常同行為・支配観念は自我の境界障害ではない
離人症:「自己や外界に対して生き生きとした現実感が感じられなくなる」=離人症。妄想気分・思考奪取・昏迷と混同しない。抑うつ・解離性障害・統合失調症などで幅広くみられる。

1-6 症状と疾患の対応(横断整理)

国試では「症状と疾患の組合せ」がよく問われます。代表症状=どの疾患かを1対1で押さえておきます。

疾患代表症状(キーワード)
統合失調症幻聴・考想伝播・連合弛緩・妄想知覚
パニック症予期不安・動悸・死の恐怖
強迫症強迫観念・強迫行為(確認)
PTSDフラッシュバック(再体験)
うつ病抑うつ気分・思考制止・微小妄想(罪業/貧困/心気)

組合せのひっかけ:「うつ病 ― 考想伝播」は誤り考想伝播は統合失調症の症状。うつ病でみられる妄想は罪業妄想・貧困妄想・心気妄想(微小妄想)。「症状 ― 疾患」の1対1対応は毎回のように狙われる。

次章へ:症状の用語を押さえたら、次は原因のはっきりした精神障害へ。第2章 依存・器質性精神障害で、アルコール・覚醒剤などの依存と、せん妄・コルサコフ症候群といった脳・身体が原因の障害を整理します。せん妄と認知症の鑑別は高次脳機能障害の臨床にも直結します。