第2章|依存・器質性精神障害

対応過去問 10問/難易度 ★★★☆☆
📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:ここは「脳・身体・物質が原因の精神障害(外因性)」です。とくにせん妄は、STが認知症・高次脳機能障害「急に注意・意識が揺れているのは何か」を鑑別するときの必須知識。原因疾患の背景は臨床神経学と、神経伝達物質(ドパミン)は神経系とつながります。「可逆か不可逆か」「意識障害か否か」を軸に読みましょう。

2-1 物質関連障害・依存症の基礎(依存・耐性・離脱)

依存症は3つのキーワード「依存・耐性・離脱」で理解します。定義のすり替えが定番のひっかけです。

用語意味
耐性同じ効果を得るのに量が増える(=効きにくくなる)。使い続けると耐性は上昇する
離脱症状使用を中断すると出る不快な症状。これを避けるため使用を続けてしまう
精神依存/身体依存渇望(精神依存)と、離脱症状で表れる身体依存

アルコール依存のひっかけ:「アルコール依存によってアルコールへの耐性が低下する」は誤り——耐性は上昇(増強)する。依存症者は離脱症状を軽減するために飲酒を続け、治療は完全な断酒が原則(節酒でなく断酒)。長期大量飲酒で慢性の精神障害(コルサコフ・認知症・幻覚)が生じる。

依存性を形成しやすい薬物:バルビタール(睡眠薬)・モルヒネ(麻薬)・アンフェタミン(覚醒剤)は依存性が高い。一方ストレプトマイシン(抗菌薬)・アセトアルデヒド(アルコール代謝産物)は依存を作らない。「薬理作用で気分が変わるもの」が依存性を持つ、と押さえる。

2-2 代表的な依存性物質(覚醒剤・麻薬・抗不安薬)

物質ごとに「作用する神経伝達物質」と「法律上の分類」が問われます。

物質ポイント
覚醒剤(メタンフェタミン・アンフェタミン)関連する神経伝達物質はドパミン。慢性使用で幻覚・妄想(覚醒剤精神病)
モルヒネ・ヘロイン麻薬及び向精神薬取締法で麻薬に規定。強い身体依存
マリファナ/アンフェタミン/トルエン/バルビタールそれぞれ大麻取締法・覚醒剤取締法・毒物劇物・向精神薬など「麻薬」ではない区分
ベンゾジアゼピン系抗不安薬副作用=耐性・依存性・健忘・呼吸抑制・眠気/ふらつき。長期使用で依存を形成

覚醒剤=ドパミンのひっかけ:覚醒剤関連精神障害に最も関連する神経伝達物質はドパミン(ノルアドレナリン・セロトニン・アセチルコリン・GABAではない)。統合失調症のドパミン仮説とも通じ、覚醒剤精神病は統合失調症様の幻覚・妄想を示す。

ベンゾジアゼピンの副作用:抗不安薬の副作用は耐性・健忘・依存性・呼吸抑制筋強剛(筋固縮)は含まれない——筋強剛は抗精神病薬による錐体外路症状(2-5)。抗不安薬は筋弛緩作用があり、むしろ緊張は下がる。

2-3 アルコールによる器質性精神障害(コルサコフ症候群)

長期の大量飲酒は脳を器質的に障害します。国試頻出はコルサコフ症候群です。

コルサコフ症候群:原因は慢性アルコール多飲によるビタミンB1(チアミン)欠乏。三徴は前向性健忘(記銘力障害)・見当識障害・作話。先行するウェルニッケ脳症(眼球運動障害・失調・意識障害)と連続する。

ビタミンのひっかけ:コルサコフ症候群に関連するのはビタミンB1(チアミン)欠乏であってビタミンB6欠乏ではない。「飲酒歴・健忘・見当識障害・作話」は関連するが、B6は無関係——この1点差し替えが狙われる。

2-4 せん妄(意識障害・器質性)

せん妄は「急性・可逆性の意識障害」。認知症(慢性・進行性)との対比が最重要です。

せん妄認知症
発症急激(数時間〜数日)緩徐(数か月〜年)
意識混濁(意識障害あり)・日内変動大清明(意識障害なし)
経過可逆的(原因除去で改善)不可逆・進行性
症状錯覚・幻視・興奮・見当識障害記憶障害中心

せん妄のひっかけ:「せん妄は病状が不可逆的に進行する」は誤り——せん妄は急に現れ、原因を除けば可逆的。急性発症・錯覚/幻覚・興奮・見当識障害は正しい。「可逆/不可逆」で認知症と分ける。

せん妄のリスク因子:高齢・認知症・アルコール多飲・全身麻酔の手術・薬物(依存)・入院環境など。「若年者」はリスク因子でない(むしろ高齢がリスク)。術後せん妄はST臨床でも遭遇しやすい。

2-5 薬剤性の錐体外路症状(抗精神病薬の副作用)

抗精神病薬はドパミンを遮断するため、パーキンソン様の錐体外路症状を起こします。薬剤性(外因性)の運動症状として整理します。

錐体外路症状特徴
薬剤性パーキンソニズム筋強剛(筋固縮)・振戦・動作緩慢
アカシジア(静座不能/着座不能)じっとしていられず動き回る
急性ジストニア眼球上転発作・舌突出・斜頸などの持続性筋収縮
遅発性ジスキネジア長期投与後の口・舌の不随意運動

錐体外路症状の主犯=抗精神病薬:錐体外路症状が最も出やすいのは抗精神病薬(ドパミン遮断による)。抗うつ薬・抗てんかん薬・抗不安薬・睡眠薬より圧倒的に多い。筋強剛・眼球上転発作・舌突出・着座不能(アカシジア)は錐体外路症状だが、「めまい」は錐体外路症状ではない

ST臨床とのつながり:抗精神病薬・抗パーキンソン薬による錐体外路症状(口・舌・咽頭の不随意運動、嚥下への影響)は、STがみる運動障害性構音障害や嚥下の評価で無視できません。「その症状は病気か薬か」を疑う視点を持ってください。
次章へ:外因性を押さえたら、次は内因性の代表気分障害へ。第3章 気分障害(うつ病・双極性障害)で、うつ病・躁状態の症状と対応(とくに「励まさない」)を整理します。脳卒中後うつなどSTのリハ意欲にも直結するテーマです。