第3章|気分障害(うつ病・双極性障害)

対応過去問 10問/難易度 ★★★☆☆
📝 このノートはAI編集部が過去問から作成した学習用まとめです。基礎医学領域は専門監修前のため、診断基準・数値・薬剤などの細部は必ず成書・最新ガイドラインで確認してください。
この章のねらい:気分障害(うつ病・双極性障害)は内因性精神障害の代表で、国試では症状・病前性格・対応が繰り返し出ます。STにとっては、失語症高次脳機能障害の患者に高頻度で合併する脳卒中後うつ(post-stroke depression)が実務直結——意欲低下がリハの停滞なのか、うつなのかを見分け、「励まさない」対応を知っていることが訓練導入の質を左右します。

3-1 気分障害の分類とうつ病の症状

気分障害は「気分(感情)」が病的に沈む・高ぶる病態。うつ病の症状は精神症状+身体症状で覚えます。

領域うつ病の代表症状
気分・感情抑うつ気分興味/喜びの減退(アンヘドニア)・不安焦燥
思考思考制止・集中力/決断力の低下・微小妄想(罪業/貧困/心気)・希死念慮(自殺念慮)
身体(自律神経)睡眠障害(早朝覚醒)・食欲/体重減少・易疲労・性欲低下
DSMのうつ病の核症状:「疲労感/気力減退」「不眠または過眠」「精神運動興奮または制止」「思考力/集中力の減退」「抑うつ気分」「興味喜びの減退」など。「躁または軽躁エピソード」はうつ病の症状ではない(それがあれば双極性障害)。誇大妄想もうつ病の症状ではない(うつは微小妄想)。

うつの症状のひっかけ:うつ病でみられる妄想は微小妄想(罪業・貧困・心気)誇大妄想は躁状態の症状なので、「うつ病の症状=誇大妄想」は誤り。抑うつ気分・睡眠障害・食欲減退・自殺念慮は正しい。

抑うつ障害の基礎:思考力・集中力の減退、食欲/性欲低下・易疲労を伴う。軽症では適度な運動が症状軽減に役立つ。初発は20歳代前半と40〜50歳代の二峰性とされる。

3-2 うつ病の疫学・病前性格・経過

うつ病は頻度が高く、性差・病前性格・日内変動が問われます。

項目ポイント
好発年齢青年期以降(幼児期には稀)。中高年にもピーク
性差生涯有病率は女性が男性より高い(一方、自殺完遂は男性に多い)
病前性格メランコリー親和型・執着気質=几帳面・秩序を好む・勤勉・責任感が強い・環境変化に弱い
日内変動朝方に調子が悪く、夕方にかけて軽くなる
合併不安症の合併は多い。身体疾患を持つ患者で有病率が高い

病前性格のひっかけ:うつ病の病前性格は「秩序を好む・勤勉・責任感が強い・環境変化に弱い」「人付き合いが悪い(非社交的)」はうつ病の病前性格ではない——メランコリー親和型はむしろ他者配慮的で対人関係を保とうとする。

疫学のひっかけ:「女性より男性で生涯有病率が高い」は誤り有病率は女性が高い)。「不安症との合併はまれ」も誤り(合併は多い)。正しいのは自殺は男性に多い・身体疾患合併で有病率高い・朝方に調子が悪い

3-3 躁状態・双極性障害

躁状態はうつの「裏返し」。気分・思考・活動がすべて高まります。双極性障害はうつと躁を繰り返します。

領域躁状態の症状
気分気分高揚・爽快感・易怒性(怒りっぽい)
思考観念奔逸・自尊心の肥大(自己評価が高い・自信過剰)・誇大妄想
行動・身体多弁(大きな声でよくしゃべる)・行為心迫・睡眠欲求の減少(短時間睡眠でも元気)・浪費(高価な買い物)・性欲亢進・抑制欠如

躁状態のひっかけ①:躁病では集中力はむしろ低下・散漫になる(次々に気が移る)。「集中力が持続する」は誤り。短時間睡眠でも元気・自己評価が高い・多弁・浪費は正しい。

躁状態のひっかけ②:躁症状は睡眠欲求の減少が典型で、「睡眠時間の延長」は躁では非典型(むしろうつ寄り)。抑制欠如・自信過剰・易怒性・性欲亢進は躁の典型。

3-4 うつ病への対応・治療・自殺予防

対応の原則は「休養・薬物・励まさない・自殺予防」。治療的接し方が国試でよく問われます。

うつ病への基本対応:十分な休息と休養叱咤激励しない(励まさない)/環境調整/自殺をしないことの約束(自殺念慮の確認)/禁酒・薬物療法(抗うつ薬)。急性期に「性格の問題を自覚させる」「課長として頑張れと励ます」は禁忌

「励まし」は禁忌:うつ病患者への叱咤激励は誤り——「もっと頑張れ」は自責感を強め、自殺リスクを高める。まず病気であることを伝え、休養(必要なら休職)を勧めるのが正しい対応。几帳面な人が突然「自分には能力がない」と辞表を出すのは典型的なうつのサイン。

ST臨床とのつながり:脳卒中後の失語症・構音障害の患者は抑うつを高率に合併します。訓練が進まないとき、それを「意欲がない」と叱咤するのは逆効果。うつのサイン(早朝覚醒・食欲低下・希死念慮)に気づき、休養と多職種連携につなぐ視点を持ってください。
次章へ:内因性を押さえたら、次は心理的ストレスが引き金になる心因性の障害へ。第4章 神経症・不安障害・ストレス関連で、パニック症・強迫症・PTSD・適応障害と、防衛機制を整理します。音声障害の心因性発声障害の背景にもつながります。