ペーシング音読
語や文の1拍ごとに●(またはマス)が付いた音読用紙です。●を1つずつ指で押さえながら、押さえた音を1つずつ読みます。速すぎる発話を落とす、リズムを整える練習に使います。
指で押さえて、速さを外から決める
発話の速さを落とすと明瞭度が上がる方は多いのに、「ゆっくり話して」と言うだけでは数語で元の速さに戻ってしまいます。ペーシングは、指で印を押さえる動きに声を合わせることで、速さを体の外から決める方法です。ペーシングボードと同じ考え方を、紙1枚でできるようにしました。
運動障害性構音障害(dysarthria)で速さが上がりすぎる方、特にパーキンソン病で発話が加速して聞き取れなくなる方によく使います。吃音の流暢性形成や、発語失行で1拍ずつ確実に言う段階にも使えます。
レベルは「語」から「長い文」へ
| レベル | 中身 | 1枚の数 |
| 1 | 2〜3拍の語(ひらがな) | 16語 |
| 2 | 4〜6拍の語(ひらがな) | 12語 |
| 3 | 短い文(〜12拍) | 8文 |
| 4 | 中くらいの文(13〜20拍) | 6文 |
| 5 | 長い文(21〜32拍) | 5文 |
文のレベルでは、区切りを「1拍ずつ」と「文節ずつ」から選べます。1拍ずつは、かな1字(拗音はまとめて1つ)に●が1つ。文節ずつは、「朝の」「散歩」のような文節のまとまりに●が1つで、漢字とふりがなで表示します。押さえる印は●(点)とマス(四角)から選べます。
使い方
- 最初はSTが一緒に押さえる… STが指で示しながら一緒に読み、速さの見本を見せます。慣れたら本人の指だけで。
- 1拍ずつ→文節ずつ… 1拍ずつは不自然に遅くなりますが、まず確実に速さを落とすための段階です。明瞭度が上がったら文節ずつに移し、自然な区切りに近づけます。
- 紙を外す… 最後は●のない文で、押さえるつもりで読む、机を指で軽く叩きながら話す、と段階的に外していきます。紙の上だけで速さが落ちても、会話に持ち込めなければ意味がありません。
観察のポイント
- 指と声がずれるか… 指だけ先に進む、声が指を追い越す。パーキンソン病では指の動きまで加速することがあります。そのときはSTが手を添えて速さを決めます。
- どのくらい落とすと明瞭になるか… 1拍ずつで明瞭なら、文節ずつでも明瞭か。明瞭度が保てる一番速い速さを探すのが目標です。
- 息つぎの位置… 長い文で、文節の切れ目でなく語の途中で息が切れるなら、呼気の練習も並行してください。
よくある質問
- 拍と音節はどう違いますか
- このプリントの●は拍(モーラ)の単位です。「ん」「っ」「ー」も1拍として●が付きます。「きゃ」のような拗音は2字で1拍です。日本語の話す速さの単位として、拍で区切るのが一般的です。
- メトロノームと併用できますか
- できます。メトロノームの1拍に●を1つ合わせると、速さを数字で記録できます。毎分60から始め、明瞭度を保てる範囲で上げていきます。
- 吃音の子どもにも使えますか
- 使えます。レベル1・2はひらがなの語なので、文字が読めれば年少の子にも使えます。ただし吃音の指導方針によっては、ゆっくり区切る話し方を勧めない場合もあります。担当STの方針に合わせてください。
このページで作った教材は、臨床・授業・家庭学習で自由に印刷して使えます。
内容は言語聴覚士が監修していますが、対象者への適用の可否は担当の専門職が判断してください。